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 ――ダァァァン……


 鉱脈の奥部で、甲高い爆発音が鳴り響いた。


 そこでは一人の奴隷が、細長い鉄で出来た筒を、手と肩を使って固定して持ち構えている。


 音が鳴った瞬間筒の先から何か目に見えない物が飛んで行き、筒の向けた先にあった岩に小さな穴を開ける。

 そこから四方にも亀裂が走っていた。


「奴隷君、反動はある?」


「多少痺れる程度で、殆ど痛く無いです」


「ふむ、これ位が威力も出て身体への負担も少なくて、丁度良い具合かな。それじゃあ君は仕事に戻っていいよ」


「はい、分かりました」


 奴隷が採掘の仕事に戻ろうと、健気に駆けて行く。

 視界から消えると、隣に居た女性が話し掛けて来た。


「どうだ、完成したのか?」


「そうだねツバキ、これを完成形として見て良いだろう」


「やっとか……。あれだけ開発に苦労したんだから、その調子で存分に役立ててくれよ」


「勿論、任せておけ」



 前々からツバキとの研究で、作ろうとしていた「ある物」が漸く生み出せたのだ。


 それは、火薬。


 前世での火薬は、銃のような兵器を中心に戦争の歴史を変えるほどの脅威を与えてきた。


 更には汎用性が高い。

 銃だけでなく、手榴弾や地雷、大砲など、様々な兵器を生み出せる。


 だが、この世界は科学が発展していないせいで火薬は無いし、主成分の硫黄や硝酸カリウムは見つかってない……というかそもそもそんな概念がこの世界には無い。

 流石に僕も、前世は何の変哲もない高校生だったので、それらの作り方までは知らないのだ。


 そこで僕は、熱や衝撃を与えると爆発する、という火薬の性質を粉末に魔法で付与出来ないかと考えた。

 粉末の魔法具で火薬を作るのだ。


 この研究ならば誰かが様子を見に来ても、使っているのはただの粉なので難癖をつけられる心配も無い。

 実際フリスク公の密偵であろう人が来たが、深堀される事は無かった。


 小麦粉を使っていたのは、用意しやすく大量にあっても不自然では無く可燃性だったからで、特に深い意味は無い。


「まさか火薬からこんなものが作れるとは、前世に居た所は大層発展していたんだろうな」


「魔法が無かったからねぇ、その分科学は進んでいたよ」


 火薬や銃を生み出す際に、流石にツバキにその大量の知識は何処から来るのか疑問視された。

 リンも今まで聞いて来なかったが、内心では不思議に思っていたそうで、この際一度死んで生まれ変わった事を打ち明ける事にした。


 素直に受け入れられるかが問題だったのだが、思いの外二人ともあっさりと受け入れてくれた。

 どうしてここまで不老不死に拘っていたのかが、よーく分かったと。



 まぁそんなこんなで火薬が作れるようになったので、鉱脈から幾つか金属を頂いて、試しに専門家や奴隷に銃を作らせてみたのだ。


 思ったよりも簡単に作れてしまったので、迂闊に外に出さない方が良いだろう。

 鹵獲されて相手に使われると厄介だ。

 

「銃は誰でも使えるのが魅力という訳ですか?」


 リンは奴隷が銃を撃つ様子を見て、火薬で作った兵器の魅力に気付いたようだ。早いって。



 そう、銃は魔法があるこの世界では、前世程猛威を奮う事は無いだろう。

 それに銃だって万能じゃない。


 連射速度は弓に負けるし、銃口の向きと同じ方向に真っ直ぐにしか飛ばせないので腕利きの戦士には簡単に躱されるだろうし、貫通出来ない防壁を作られたら曲射が出来ないのでどうしようも無い。

 後は作成に多くの鉄が必要になる、コストもそれなりに大きい。


 問題点を挙げるとキリが無い。


 だが、それらを上回る魅力として、誰でも簡単に使えるという特徴がある。

 銃に限らず地雷や大砲なども、扱いにさえ気を付ければ同様だ。


「これならば奴隷や使い捨ての手駒でも直ぐに使える、素晴らしいだろう?」


「はい。素晴らしいです、ご主人様」


 奴隷達に銃はを使いこなせるように訓練をさせて、何処かの隠し部屋に人数分用意して置こう。

 これで更に戦力は増した。


 他にも火薬を使って、様々な兵器を作ってみようか。



――――――――――――――――――――



 様々な火薬兵器を作っている最中、ようやくホムンクルスが成人の身体まで成長した。

 早速出して奴隷から心臓を移植する。


 拒絶反応が起きる事を予想して予備も作っていたのだが、三人とも起こる事無く無事に移植する事が出来た。

 まだ上手く行くかも分からないのに、ホムンクルスを増やし過ぎると手に負えなくなる。予備は破棄しておこう。


 三人のホムンクルスが研究室に置いた布団に横たわっており、もう時期目覚める頃合だ。


 これからこの三人を鉱脈内で洗脳教育をして、手駒に加えて行くのだが……。


「これが私とご主人様の……」


 リンの様子が明らかにおかしい。

 頬を赤く染めて、蕩けた瞳でホムンクルスを見ていた。



 リンは基本無表情だが、感情が無い訳では無い。

 寧ろ僕に関する感情は、誰よりも大きいだろう。


 頭を撫でるだけで歓喜で身体を震わすし、僕が御褒美に血を与える際には、とても人には見せれない恍惚な表情を浮かべて飲んでくる。


 僕に対する想いの強さは分かっていたのだが、それがホムンクルス基子供にも行くとは。

 まぁそう育てたのは僕だし、文句は言えないんだけど。


「おいマークス、リンはあれでいいのか。駄目だろ」


 ツバキは、リンが僕の血を飲む様子を時々見せつけられて居たからか、ここぞとばかりに迷惑そうに抗議してくる。

 リンはホムンクルスの重要性を分かっている筈だから、下手な事なしないだろう。リンは賢いのだ。


「まぁ僕が定期的に御褒美と称して色々与えれば大丈夫でしょ……。リンは本来しっかり者なんだから」


「本当か?」


 うーん、今のリンの様子を見てると不安になってくる。

 後で忠告はしておくけど……大丈夫だよね?

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