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*今回は性的に際どい表現があるので、ご注意下さい。
この大密林の中にある鉱脈は、鉱石を採掘するだけでなく、僕らの研究の拠点としても使うことになった。
ここに居る人は誰もが指輪を嵌めているか脳改造を施されており、鉱脈内は完全に僕の支配下に置かれている。
外敵を考慮しなければ、安全な拠点だと言えよう。
とはいえ周りは岩だらけで埃っぽいし水の便も悪く、この状態ではとても住めたものでは無い。
国から生活に必要な物資を送って貰い、岩壁を奴隷に掘らせたり僕らの魔法で削ったりして、住みやすく且つ僕にとって都合の良い地形になるように整備を進めていった。
具体的には入口付近は一本道にして、侵入者のルートを絞り監視をし易くする。
そして道中には、職務室や私室、数十人の奴隷が生活する為の広い空間を作った。
職務室に入れば、フランコが一人頑張って鉱脈に関する報告を書類に纏めている。
筆跡を調べられる可能性があるので、時折僕がやる事もあるが、基本的に仕事はフランコに押し付けている。
今やフランコは僕に忠実な手駒なので、仕事を押し付けても喜んで受け入れてくれる。
「フランコ、採掘は順調かい?」
「はい、私も奴隷の皆さんも慣れてきて、一人でも捌けるようになりました。現在は計画通り、奴隷に迷宮を作らせています」
「そうか、その調子で進めてくれ」
フランコは軽く返事をして、再び職務に勤しむ。
やはりフランコは優秀だ。
脳改造を施しても知能は落ちないので、その優秀な頭脳を僕の為に存分に活かしてくれる。
フリスク公の性格も熟知しているので、彼の動きなんかも予想してくれる。
本当に有難い限りだ。
そして、奴隷を使って迷宮の作成を進めていると……。
迷宮。
鉱石を採掘する為に奥深くに向かってどんどん掘り進めて行くのだが、その際に敢えて色んな方向に分岐させて、迷路のような地形にする事にした。
侵入者が来て調べようとした際には、時間稼ぎとして使えるだろう。
迷宮には裏口も作らせて、突然襲撃されたりと緊急事態の際には密かに脱出出来るようにもしている。
出入口が一つだと、そこを封鎖されるだけで詰むからね。
うん、フランコは大丈夫そうだ。
部屋を出て、作りかけの迷宮に向かう。
迷宮では、奴隷が専門家の指示に従いつつ、ツルハシを片手に必死に鉱脈を掘り進めていた。
脳改造を施して忠誠心を植え付けたお陰で、奴隷なのにモチベーションは非常に高く、採掘のペースも早い。
多少鉱石をくすねても、疑われない程に。
奴隷は最初、割く資源を最小限に抑えて使い潰す予定だったのだが、戦力増強の為に予定を変更した。
現在は奴隷にも食事や睡眠を充分に与え、時折ドーピングの薬を飲ませてやる事で、身体を鍛えさせている。
自由時間には戦闘訓練をさせており、今後は一つの小さな軍隊のように使えるようにする予定だ。
奴隷の首輪の契約も解除出来るので、襲撃させる事だって出来るのだ。
こんな形でこれだけ多くの戦力が手に入ったのは嬉しい誤算である。
ただこれだけでは、戦力はまだまだ足りない。
国王に仕えて居た騎士相手では、今の奴隷が幾ら束になった所で勝てやしない。
次は、その対策を進めているツバキの所に向かおうか。
僕とリンが次に足を踏み入れたのは、迷宮の中に作った隠し部屋。
迷宮の中には、茶色に近い灰色をして周りの岩に扮している隠し扉がある。
扉を開けて細い道を進んでいけば、開けた空間に出た。
その空間は岩ではなく採掘で手に入れた金属で囲われており、銀色の光沢に覆われている。
床や壁、天井どれもが頑丈に補強されている。
ここは誰にも見せられない、秘密の研究室だ。
前世の子供の頃に憧れていた秘密基地のようで、この部屋に来る度に心が踊る。お気に入りの部屋だ。
「マークスとリンか、開発はまだまだ微妙だぞ」
「まぁ、それは得意分野じゃないし仕方ない」
今はその中でツバキが、小麦粉のような粉末と魔法を使って「ある物」を生み出そうとしている。
ただ結果は芳しくないようだ。
ツバキは手術や人体を弄る事に特化しており、魔法は僕ら程精通している訳では無いので仕方ないだろう。
ただこれからはフランコに仕事を押し付けたので、僕らも一日中研究に参加出来る。
生み出せる日もそう遠くは無いだろう。
その「ある物」を生み出せれば、更に戦力が増す。
戦力増強に関しては順調だ。
ただ一つ大きな問題が残っている。
僕らと白銀の乙女は鉱脈に隔離されているせいで、外部で動けるのがナダールしか居ないのだ。
ナダールは優秀なのだが、堂々と動ける訳では無いし、どうしても一人では限界がある。
外部で動ける人材が足りてないのだ。
そこでようやく、ホムンクルスの出番である。
「――という訳で、開発と同時並行でホムンクルスを作ろうと思うんだ」
フランコには、怪しまれない程度に何人かの奴隷を鉱毒や不慮の事故で亡くなった事にして、新たな奴隷を補充して貰っている。
死んだ事になっている奴隷が見つかると一大事だし、心臓を頂いて本当に殺しておこう。
「良い考えだと思います、ご主人様。ですが、ホムンクルスは受精卵から作ります、奴隷に作らせるのですか?」
ホムンクルスは受精卵から作る。
その受精卵を用意するには、当然ある行為が必要だ。
リンは、レナート教授がやっていた奴隷に命じさせて用意するやり方を提案している。
それも悪くないんだけど、前世にあった遺伝という概念が気になっているんだよな……。
「うーん……二人はさ、優秀な親の間には優秀な子が生まれやすい、っていう話は聞いた事あるかな?」
リンは首を横に振るが、ツバキは心当たりがあるようだ。
「うろ覚えだが、聞いた事はあるぞ。貴族同士でしか子供を作らないのは、その考えがあるからだった筈だ。貴族の屋敷で働いてる時に耳にした程度だから、確信は持てんがな」
そういえばツバキは士官学校に入学する前は、貴族の屋敷でメイドとして働いていたんだったか。
成程、貴族同士でしか子を産めないのは平民の血が穢れているという差別思考からでは無くて、少しでも優秀な後継ぎ生むために出来たルールなのかもしれない。
ツバキのお陰でこちらの世界にも、遺伝のような考え方がある事は分かった。
「それで、奴隷になる地点でそこまで優秀とは言えないじゃん? だから言い難いんだけど……」
「私達で作るという事ですね。問題ありませんよ」
リンが察して、言い難かった事を代弁してくれる。
リンの声は相変わらず淡々としているが、如何にも嬉しそうに目を輝かせている。
「リンだけで無く、ツバキとエルナとも作って、ホムンクルスの比較をしてみようか。どうせ作るなら、なるべく優秀なホムンクルスにしたいしね」
「はぁ……どうしてこんな流れになったんだ」
ツバキは呆れ返って、力無く横たわる。
彼氏と言う体面はあったから覚悟はしていただろうが、もっとロマンチックな流れを期待していたのかもしれない。
僕だって好きでやりたい訳では無い。これも人手確保と研究の為だ、ツバキには我慢してもらおう。
というか、これで生まれたホムンクルスは僕らの子供と言う事になるのだろうか?
なんだか複雑だなぁ……。




