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業の軌跡 〜悪魔は不老不死を渇望する〜 (未完結)  作者: 橘 涼
〜スミア王国編・前編〜
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 フランコを手駒にしてから数日後、鉱脈にパーチェ王国からの奴隷や専門家が送られてきた。

 専門家の指示を聞きながら奴隷を動かして、三人でこの鉱脈を管理すると。


 ただ鉱脈にはその三人に加えて、表向きは彼女という事になっているツバキも居る。


 ツバキを家に一人にするのは心配だとバイソン公に申し出れば、ツバキも連れて行って良いと言われた。

 ツバキも僕の仲間と見て、隔離したかったのだろう。


「よし、リンは入口付近で監視。僕とツバキは奥で全員に脳改造を施そうか」


「ぜ、全員にか」


 奴隷や専門家の中に、フリスク公の手の者が混じっている可能性がある。

 だが、全員纏めて脳改造を施してしまえばそんな物は関係無くなる。


 フランコは顔合わせの後に一旦フリスク公の元に帰った訳だが、異変があるとかで調査されているらしく、まだここには居ない。


 上司抜きの僕らだけで勝手に動くことは出来ないので、それ以外にやる事が無いのだ。

 今のうちにどんどん手駒を量産してしまおう。

 大変な作業なのでツバキが若干引いているが、こればっかりは仕方無い。頑張れ。


 そして、鉱脈の入口付近は一本道なので、そこに索敵出来るリンを置けば密偵が奥に行く心配も無くなる。

 密偵が来た際には、リンが優しく出迎えて、僕らが脳を弄って精一杯の歓迎をしてやろう。



「ご主人様、フランコが戻りました。密偵が一名同伴しているので、直ちに捕らえてきます」


「分かった、行ってらっしゃい」


 脳改造を始めて数日後、フランコが戻ってきた。


 また別の密偵を送って来るとは、フリスク公も懲りないものだ。

 まぁこっちにはリンと言う強力な手駒が居るから、密偵はさほど脅威では無いのだけれど。


「それでフランコ、どうだった?」


「はい。兄上にオーラの色が変わっていると騒がれましたが、マークスの予想通り何も見つかりませんでした。最終的には兄上の妄言として処理されています」


「まあそうなるよね」


 フリスク公が素質を通して、フランコの異変に気づく可能性は考慮していた。脳改造によって性格や考え方が変わるのだから、色が変わる可能性も十分にある。

 だが、フリスク公が異変には気づけても、脳改造までは辿り着けまいと考えていた。


 数年の研究によって練達された、ツバキの手術と僕らの医療魔法で、傷口は残らないように徹底してある。


 それにどんなに優秀な医師だろうと、生物学を専攻していない限りは脳を生きたまま切り開く事何て出来やしない。

 切り開けたとしても脳は複雑な構造をしているので、微々たる変化には気付けないだろう。


 現にこうして、国王直属の医師や魔法使いが調べても気付かれなかった。

 これならば脳を弄る瞬間さえ見られなければ、大事には至らないだろう。



 そしてフリスク公は素質によって脳改造を施した者を見抜き、距離を取ろうとしているが、流石に寝返ったとまでは思って居ないらしい。


 フリスク公が送ってきた密偵には、僕の事を問題無しと報告をして貰いつつ、フリスク公の情報をこちらに流して貰う逆スパイをやらせる事にした。


 公爵家ともなると『気配遮断』のような、密偵に向いた有名な素質は対策がされていて、ナダールでも伯爵家に侵入するのは厳しいと言っていた。


 ナダールを失うのを恐れて公爵家の情報は集めさせていなかったが、こんな形でフリスク公の情報が手に入るようになったのは嬉しい誤算だ。

 中には面白い経歴の密偵も居たし、これからも懲りずにどんどん密偵を送ってくれたまえ。



 その後、フランコには専門家や奴隷を動かして貰いつつ、裏で僕らが地道に脳改造を施していき、数週間掛けてようやく全員の脳改造を施し終えた。


 やはりフリスク公の手の者が混ざっていた。首輪が偽物になっており、僕が何かを企めばその証拠を掴んで逃げる手筈になっていた。

 数週間の間に密偵が何人か来たし、油断も隙もない。


 ……だが、やはり甘い。


 本気でなりふり構わずに僕を殺したいのならば、密偵を一人ずつ小出しにしたりせず、逃げ場の無い鉱脈に押し込めたのだから、密偵や武官を総動員させて殺せば良かった。


 それにフランコに捏造されて罪を擦り付けられる事を警戒して居たが、その予定は無かったそうだ。

 無意識に僕の事を恐れてくれているのだろう。自身の手では無く、国のような他人の力を借りて殺そうとしている。


 国王や他二つの公爵家は、わざわざ妄言を信じて自発的に動く必要性が無いので、僕の事はフリスク公やフランコに任せて静観を決め込んでいる。


 先にこっちが脳改造を施して、フリスク公の周りを手駒にして孤立させてやるとしよう。



――――――――――――――――――――



「うーん……どうやって動こうなぁ……」


 脳改造を施し終えて一ヶ月、ある程度は仕事に慣れる為にも真面目に働きつつ動く糸口を探っていたが、鉱脈に隔離されたせいで思ったよりも動けない。


 ずっと鉱脈に居る訳では無く、時折バイソン公に状況報告や書類の提出の為に会いに行くのだが、護衛が常に複数名付いている。

 その内の一名は見るだけでも強いと感じる程の猛者で、とても制圧出来そうには無い。


 制圧しようと襲っても、誰か一人に逃げられ情報が漏れるだけで、不味い事になる。


 現状フリスク公だけが怪しんでいるので他は静観してくれているが、バイソン公からも怪しいという情報が出れば本格的に国王やビーター公も動きかねない。


 フリスク公の密偵も半数以上は脳改造を施せて居るので、殺すように命じれば殺せるのだが、やはり同様の理由でそれも出来ない。


 フリスク公の謎の死により疑いの目が僕に向かい、ビーター公や国王が次の敵になるだけだ。



「なら上層部は一旦諦めて、平民に脳改造を施して動いて貰えば良いんじゃない?」


 ツバキが何とか案を捻り出してくれるが、これも良い案とは言えない。


 平民に脳改造を施す際に、現地でやるにしても誘拐するにしても、一度鉱脈から出て都市に向かう必要がある。

 報告も無しに僕らが都市を彷徨いて居れば、バイソン公に疑われてしまう。


 それに、平民には領主と接する機会は無いし、持っている情報や能力の優秀さもそこまで期待できない。


 またスミア王国では人手にも余裕が無いので、余り平民にも被害が多く出る様な事をすると、国が無茶苦茶になる。

 更に官吏も、素質のお陰で優秀な者もいるので全員纏めて脳改造を施して素質を消してしまうと、上層部が機能しなくなってしまう。


 土台を作る為に土台を壊してしまっては元も子も無い。

 理想は国王と領主の三人に脳改造を施す事だ。


 まぁ兎に角、ツバキの案は無しだ。


「それは余りにもリスクリターンが見合ってないね。それなら玉砕覚悟で制圧する方がマシだ」


「まぁそうなるよなぁ……」


 ツバキが天を仰いで嘆息する。


 最近は僕達が新たな仕事に慣れるので精一杯で、余り研究も進められていないので退屈なのだろう。


 あまり時間を浪費していると、フリスク公が次の手を打ってくる可能性がある。

 そろそろ方針を決めなくては。



「うーん、ここは一度スミア王国の方は保留にして、大人しく戦力増強に努めようかなぁ」


「この鉱脈内でやるには、無理があると思うんだが?」


「いや、外部からナダールが色々取り寄せられるから、研究は大体出来る。それに、鉱脈以外にも堂々と活動出来る所があるだろう?」


「それは……大密林か?」


「正解」


 用も無しに都市を彷徨く訳にはいかないが、大密林の更に奥側ならば人は居ない。

 一年足らずで鉱脈が見つかったのだ、もっと奥には色々ありそうな予感はする。


 奥に行けば行く程魔物も強くなっているので、上位ヴァンパイアのような知能のある魔物も現れるかもしれない。

 前回はリンに核を食べさせる為に殺したが、出来る事なら交渉したり脅したりして手駒にしたかった。


 スミア王国はフリスク公さえ動かなければ良いし、動きがあれば密偵から報告が来る。

 ある程度は対処出来るだろう。


 これからは鉱脈と大密林を中心に、密かに活動を進めていこうか。

スミア王国編・前編はこれにて終了です。

次話からは大密林編になります。


ブックマークや評価ポイントを頂けて大変励みになっております、誤字報告も有難いです。

今後とも宜しくお願い致します。



軽く戯言を一つ。(聞き流す程度でok)


迷走気味だった書き方ですが、ストックを書き進める内にしっくり来る書き方を見つけたので、それで固定化するかもしれません。(決定事項では無いです)


大密林編の更に次の章はその書き方になってます。


こうした執筆は初挑戦なので苦戦していますが、今後とも暖かい目で見守って頂ければ幸いです。

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