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業の軌跡 〜悪魔は不老不死を渇望する〜 (未完結)  作者: 橘 涼
〜スミア王国編・前編〜
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 王城の一室に国王と三人の領主が座り、その後ろに騎士や武官が立っている。

 周囲の警備も厳重になっており、何処も彼処も憲兵が周囲を見張っている。


 騎士については、フリスク公が国王にお願いしてラースには席を外して貰った。ラースを除いた二人が立っている。


 ラースの色は特に黒くは無かった。

 恐らく無関係、ならば巻き込む必要は無いだろう、とフリスク公は判断した結果だ。

 父親の前で息子を誹るのは流石に憚られる。



「――なるほど、未だヴァンパイアを発生させた元凶の行方が分かっていないのだな?」


「はい。上位ヴァンパイアを捜索する最中に、偶然鉱脈が見つかったと白銀の乙女が仰っていました」


 そこでバイソン公が陛下に、自領の状況や鉱脈関係の出来事を報告している。


 もしも鉱業を興すのならば、大きな産業になるのでかなり地位が高く、信頼出来る者を送る必要がある。

 だが、潜伏しているであろう上位ヴァンパイアに襲われてしまえば、優秀な人材を失う事になってしまう。


 とは言え鉱業を興せば、国はより安定するだろう。

 経済が回るようになるし、パーチェ王国に鉄を流せば友好関係をより強固なものに出来る。

 金を取るか人を取るか、非常に難しい問題だ。


 フリスク公としても、マークスが何かを企んでいる可能性があるのが気がかりだが、鉱脈の発見自体は国にとって有難いものだと認識している。

 企みを潰すなら鉱脈の放置が一番だが、皆興す前提で話を進めている。

 それに得られる利益を考えると、流石に放置は不可能だ。


 ではどうするべきか。

 

 鉱脈が見つかった報告が来てからこの状況に辿り着くまでの時間が早すぎて、良い策が思い付けなかった。 

 無駄に周りが優秀すぎる。


 周りの文官にも素質やマークスの事は隠してそれとなく案を考えさせたが、どれもその場しのぎの策で、有効な策を通すには時間が足りないと言われた。


 もっと早く周りに頼るべきだったと後悔している。

 と言っても、時間があれば何とか出来たかと言われると微妙だが。


 中々尻尾を掴ませてくれないし、人望のある平民という面倒な立ち位置に居る。


 貴族では無いので、責任問題に持って行きにくい。

 平民なので権力を盾に、強引に事を進めて処刑する事は可能だが、ラースとバイソン公が黙っては居ないだろう。


 バイソン公はまだ何とかなるが、ラースが恨んで敵対すると不味い。ラース自体が強過ぎるし、ラースを気に入っている陛下まで敵対すれば、公爵家同士で内乱だ。


 国を滅ぼす悪魔を殺せた所で、その代償に大きな内乱が起きれば元も子も無い。

 本当にどうしようも無くなったら、一か八かでその手で行くつもりだが。


 何か、何か良い手は無いものか。



「白銀の乙女を護衛として雇い、鉱脈で働く文官の警護をして貰う。鉱脈の労働力は奴隷を買えば良いだろう」


 考え込んでいる間にも、どんどん話は進んで行く。

 白銀の乙女が文官の護衛や物資の護送する流れになっているのは、非常に宜しくない事態だ。


 白銀の乙女が鉱脈という孤立した所で、金属を盗んだり文官を襲ったりすると証拠が掴みにくい。

 気が付けば鉱脈が乗っ取られているなんて事も有り得る。


 マークスが中々動かないのは、このような動きになる事を見越していたからなのでは?

 皆が自己中にならず国の利益に則って動くという理念を持っているからこそ、マークスにも動きが予想しやすいのでは?


 マークスに集中し過ぎて、白銀の乙女の監視が疎かになっていたのが悔やまれる。

 今思えばマークスは囮だったのかもしれない。


 もうこの際、全てを打ち明けてしまおうか。

 ここに居る人はバイソン公を除いて、十年以上仕えている古参なので信頼は出来る。


 思考放棄によるやけくそ気味な手段ではあるが、弟もその手は案外悪くは無いと評していた。

 せめてマークスや白銀の乙女を皆に警戒させなければ。


「む、フリスク公、どうされた?」


「陛下、その白銀の乙女とラースの息子について、お話したい事があります」



――――――――――――――――――――



「――という訳でマークスとリン、白銀の乙女は危険です! 特にマークスは不味い! アレは下手をすれば国を滅ぼす存在です!」


 必死に熱弁した。

 最後は少し感情が溢れたが、比較的抑えられた方ではあるだろう。


 過去に調べたマークスの情報や自分の素質、マークスとリンに見えた色、ほぼ全てを話した。

 中途半端に話しても、彼らは頭が切れる。

 矛盾点や敢えて誤魔化した所に鋭い指摘が入り、それを暈した私が怪しまれるだけだろう。


 ただ一つ、暗殺者を送り込んだ事だけは隠した。

 独断で感情的に動いていると見られ、私への信頼が落ちてしまう。

 アレに同情的な空気になると不味い。


 全部が全部信じて貰えるとは思っては居ないが、せめて少しでもアレの危険性を理解してくれたら、あわよくば処刑や国外追放してくれたら御の字だ。


 この状況に対する策も、この人達と考えれば良い。


 ただ皆突然のカミングアウトにどう反応して良いか分からないのか、微妙な表情を浮かべている。

 古参なので素質を漏らす心配は無いだろうが、どう受け止めてくれるのかまでは、私でも分からない。

 果たして、何処まで信じて貰えるだろうか。


「……話を整理しましょうか。フリスク公は、素質でバイソン公の元で働くマークスらの危険性を見抜き、何とかして処断したいと」


 熱の篭ったフリスク公の声と違い、冷えきった声でフリスク公の話した内容を端的に纏めてくるのは、私とバイソン公に次ぐ三人目の領主であるビーター公。


 この人は少々苦手だ。色を見れば、やはり真っ青。

 彼はどこまでも冷徹で合理的な人なのだ。


 悪行に手を染めた者を処断しようとする私に対し、彼は金や権力を使って脅したり誘導したりして、飼い殺して利用しようとする。


 実際彼の出す案は最も合理的で理にかなってはいるが、人間の尊厳を傷付けるような行為が多々ある。

 ビーター公のやり口が好かず、中々馬が合わないのだ。


 それでもこの中では最も賢く優秀なので、こうして領主として話し合いの場に立っている訳だが……。



「処断……出来れば国外追放か処刑が良いですがね」


 私の声には抑えきれない怒気が混じっている。

 ビーター公はそんな私の様子を見て呆れたように溜息を吐き、話し相手をバイソン公に変える。


「バイソン公から見て、マークスはどのような人物なのですか?」


 話を振られたバイソン公は、困惑しながらもマークスの印象を素直に語る。


「ええと、真面目に働いてくれてますし、ヴァンパイアの騒動ではヴァンパイアを二体も討伐した実績があります。非常に優秀で、少なくとも私にはマークスにフリスク公が仰ったような異常性は見られませんでした」


 そう、マークスは余りにも優秀なのだ。

 仕えて一年も経ってないと言うのに、周囲の人々が処刑や国外追放する事を惜しむ程に。


 特にビーター公ならば、どんなに問題児だろうと金や権威で服従させれば良いと考えていそうだ。

 アレを飼い慣らせる筈が無いと言うのに。


「ふぅむ、国王陛下はどう思われているのですか? 私はマークスについて何も知らないのです」


 気がつけば、話をビーター公が仕切っている。

 この流れは怪しく思える。


「ラースにはマークスの話をよく聞かされていた。小さい頃から賢い子だったが、孤立気味だったそうだ。学校でも生物学部に入っていたそうだし、異常性が無いとは言い切れない」


 生物学……人体を研究の為と称して、好き勝手に弄る学問。並の神経をしているのならば、そんな所に入る訳が無い。やはり異常性はある。


 ただバイソン公だけでなく、陛下も困惑している。

 長年仕えてきたラースの息子に、証拠も無しに悪く言う事に抵抗を覚えているのだろう。


「そういえばマークスは学校であのレナート教授に教わって居たそうですよ。蘇生の方法を見つけるのに一役買ったと、誇らしげに語っていました」


 国王は中立を何とか保っているが、その息子であるバイソン公はマークスに寄っているように見える。


 バイソン公から見れば、マークスは己の為に頑張ってくれる忠誠心の高い人なのだろう。

 私が何かしらの私怨で、言い掛かりをつけているように見えているのかもしれない。


 だが、私には……。


「それでもフリスク公には、過去に何人も悪事を行った者を見抜き、処断した実績がある。それが素質のお陰だとするのならば、彼の主張に納得は出来る」


 私には、長年積み重ねてきた実績と信頼があるのだ。

 陛下は私の考えを無下にはしないだろう。


「フリスク公。それを今打ち明けたのは、マークスを処断する証拠がまだ掴めてない。かつ、白銀の乙女に優秀な文官の警護をさせるのを避けたかったからか?」


 ビーター伯が鋭い指摘を投げかけてくる。

 やはり変に誤魔化さなくて正解だった。


「そうです。白銀の乙女がマークスに代わって何か動く可能性があります。マークスが大人しいのは、白銀の乙女に動いて貰うからだと私は見ています」


「ふぅむ。ですが地域が被っているだけでは、マークスと白銀の乙女が繋がっているとは言い切れませんよね? それに度しか見ていないのですから、フリスク公が色を見間違えた可能性も有……」


「違う! 見間違いでは絶対にありません! 現に私は見ただけで倒れたのですぞ! アレはこの国の敵だ!」


 そう、あの日の出来事が衝撃的過ぎて、ずっとあの奇妙な物体が脳裏にこびりついて離れない。

 あれはまさに、伝承に残る邪悪な存在だった。


 フリスク公の悲鳴のような叫びが、部屋中に轟いた。

一話で終わらすつもりだったのに4000字超えた挙句終わらなかった.....。

小説書くの難しい。

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[一言] 国王追放とは?
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