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業の軌跡 〜悪魔は不老不死を渇望する〜 (未完結)  作者: 橘 涼
〜スミア王国編・前編〜
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 ある日、フリスク公はバイソン公の屋敷へ赴いていた。


「突然の来訪で申し訳ない。ヴァンパイアの騒動を耳にしてな」


 事前に連絡を取り合わないのは失礼に当たるが、緊急事態だったので仕方ない。

 バイソン公もそれを理解して、好意的に受け入れてくれている。


「わざわざ来て頂きありがとうございます、フリスク公」


 バイソン領でヴァンパイアが大量発生。

 フリスク公はその報せを聞き、慌ててバイソン公の元へ駆けつけた。


 バイソン公は優秀とは言え、まだまだ若く新参者だ。

 このような犠牲者が多く出る問題に見舞われるのは、領主になって初だろう。


 重く受け止め過ぎてしまわないか、引き摺って仕舞わないか、下手をすれば立ち直れなくなるかもしれない。

 それを背負うのが領主というものだと事前にバイソン公に何度も言ってきたが、それでもやはり心配だった。


 メイドから出された紅茶を飲みながら、バイソン公を"目"で注意深く見る。


(どうやら杞憂だったようだな……)


 フリスク伯は、特別な目を持っていた。


 人の身体を包み込むような色の付いたオーラを、一人一人が纏って見えるのだ。


 温厚で優しい人ならば赤く、冷淡で厳しい人ならば青く、どちらにも偏ってない普通の人ならば紫に。

 真っ直ぐで自信を持つ人ならば澄んで、疑心暗鬼で後ろめたい事がある人ならば濁って。

 性格や心境をそのまま反映したような、不思議なオーラが幼い頃からフリスク公には見えていた。


 小さい頃は生まれつき見えていたので当然のものだと思っていたが、父にそれは自分にしかない……恐らく素質によるものだと教えられた。


 フリスク公はそれを国の為に駆使して、横領等の国の害になる行為をする者を見抜いてきた。

 カマをかけてやれば、表面上は何とも無いように装っても色は露骨に濁り出す。

 密偵を送って証拠を掴み、陛下の元や裁判所に突きつけて処断した。

 政治関係の罪は相当重くなっている。横領程度では死刑とまでは行かないが、十数年は外に出れなくなる。


 一部の人は過激と言うが、構わない。

 それで国が守れるのだから。


 少しでも許してしまえば徐々に蔓延し、パーチェ王国のような腐敗政治が始まってしまう。

 パーチェ王国は余裕があるので問題無いが、スミア王国でそんな事態になれば、国が衰退し簡単に滅んでしまうだろう。

 そんな下らない形で国を終わらせる訳にはいかない。


 当然その素質を知られては警戒されるので、徹底的に隠している。

 父が亡くなった今、その素質を知るものは私自身と弟のフランコの二人だけだ。



 そんなフリスク公にしかない特別な目でバイソン公を見れば、少し薄まってはいるものの立派な赤色を示している。

 この程度ならば直ぐに立ち直るだろう。


 色を見てある程度予想は付くが、慌てて駆けつけたのでヴァンパイア騒動の結末は詳しく聞いて無い。


「それで、ヴァンパイアはどうなったのかね。私はまだ詳しく聞いてないのだが」


「はい、あの日の夜に出現したヴァンパイアは、下位が計六体。その夜のうちに無事全てを仕留める事が出来ました」


「六体も出たのか!? よく仕留められたな……」


 下位とは言え、ヴァンパイアは夜中だと十分に脅威だ。

 闇夜に紛れて行動し、自然治癒の能力も有しているので、上手く連携しないと仕留められないと聞く。

 突然の事態に現場も混乱していただろうに、よくここまで連携、討伐出来たものだ。

 武官や憲兵が必死に頑張ってくれたのだろう。


 いや、それよりも六体同時にヴァンパイアが出現するなど偶然では有り得ない、間違いなく人為的だ。

 上位ヴァンパイアがこの都市に目を付けて、敵情視察の為に放った可能性が高いな。


「それがですね、最近来たマークスさん……ラースの息子さんが文官なのに、連れの方との二人だけでヴァンパイアを二体も討伐してくれたんですよ」


 マークス……そうだ。少し怪しいので一目見ておこうと思っていたが、中々機会が無く後回しにしていた人だ。

 バイソン公は部下から私に情報が流れている事を知らない。ここは殆ど知らない振りをして話に乗っておこう。


「おお、文官にしてそれ程の実力者とは、流石はラースの息子さんですね」


「ええ、まだ働いて一年も経っていませんが、非常に仕事が早いです。加えてかなり戦闘も出来るとは、近年稀に見る優秀な人材ですよ」


 バイソン公の顔に喜色が現れている。

 バイソン公は若く、その分仕える官吏には歳上が多いので、珍しく歳下であるマークスの事を気に入っているのかもしれない。


 バイソン公も人を見る目はある。

 彼が高く評価しているし、ヴァンパイアを二体も討伐してくれている。警戒し過ぎだったかもしれないな。

 まぁそれでも折角の機会だし一目見ておかないと安心出来ないので、後で紹介してもらうとしよう。



 今はヴァンパイアについてが本題だ。


「そうかそうか。それで、このヴァンパイアの騒動についてはどう考えているんだ?」


 バイソン公の顔から喜色が消え、真面目な表情に切り替わる。声のトーンも数段落ちる。


「かなりの確率で、大密林に潜む上位ヴァンパイアによるものと見ています。何名か行方不明にもなっていて、恐らく目的は……敵情視察でしょうか」


「うむ、こちらも同じ考えだ。それで、何か打つ手はあるか?」


「はい、我が領の中で最も高いBランクの白銀の乙女という冒険者チームを中心に、大密林を探索して貰おうと思います。それなりの支援をするつもりです」


 やはりそうなるだろうな。

 ヴァンパイアが潜んでいるとすれば、間違いなく大密林だ。探索して住処を見つけ討伐しなければ、第二第三のヴァンパイアの騒動が起こってしまう。


 上位ヴァンパイアはAランクに匹敵する強さだ。

 白銀の乙女らには住処だけ見つけて貰って、その後パーチェ王国からAランクの冒険者を借りて送る、と言った流れになるだう。


「なるほど、良い考えだ」


「ありがとうございます」


 バイソン伯もしっかりと考えていて安心だ。

 もし旗色が悪ければ、こちらも自領にいるBランク冒険者や武官を出して探索に協力させるとしよう。


「とりあえず騒動は落ち着いたようで良かった。どれ、いつものように仕事の様子を見学させておくれ」

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