50 *R15
普段と異なる書き方を試して居ます。
戦闘シーンが難しい……。
「マークスと言ったか、お前正気か?」
「いや、あくまでも思い付く限りで最も勝率の高そうな案を挙げただけだよ。やるかやらないかは、君次第さ」
「ガキのくせになんて事を……流石にそれは……。いや、その作戦なら確実に殺せるんだな?」
「上位ヴァンパイアとの戦闘経験が僕らには無いから保証は出来ないけど、自信はあるね」
「分かった、元より俺が普通に戦っても勝てない相手なんだ。乗ろう」
――――――――――――――――――――
森の中に聳え立つ大きな洋館、その入口付近でマークス、リン、ナダールの三人が話し合っている。
「うーん、窓は塞がれてるね。頑丈そうだし洋館を壊して日光を無理矢理浴びせる事は出来なさそうだなぁ」
そうボソッと呟くマークスに、ナダールが驚いた反応を見せる。
「あんたはそんな事まで考えてんのか……」
「仮にも命が掛かってるんだから、色々な作戦を用意して、その中で最も安全な択を取るべきだろう?」
「力押しでこれまでやってきた俺には耳が痛いぜ……」
「じゃあ、さっき挙げた作戦で行こうか」
「あぁ、出来るだけ派手にすれば良いんだよな?」
「そうだね。下手すれば死ぬけど、覚悟は良いかい?」
「任せろ、やってやらぁ」
洋館のドアを開ければ、開けた空間に出た。
そこには僅かな明かりがあるだけで、人の気配は無い。
「奥に十名、左右にも十名ずつ」
だがリンが人の気配を察知して、数を報告する。
ナダールを先頭に少しずつ歩みを進めて行けば、二階から何者かが姿を現した。
「君は前にも来た人じゃないかぁ! 君が見捨てた仲間は皆死んだよぉ?」
ヴァンパイアだ。
流暢に言葉を話す様子から上位だと伺える。
「てめぇ!」
挑発を受けたナダールは激昂しそうになるが、何とか抑えて後ろを向き、不慣れな魔法を発動する。
魔法はただ派手な光を放つだけのもので、今のナダールは余りに隙だらけだ。
だがヴァンパイアには、それが分からない。
何の魔法なのか観察するも、背に隠れて認識出来ない。
だが、背中からは眩い光が漏れており、壮大な魔法を溜めているようにも見える。
「ふぅん? そんなハッタリが通じるとでも?」
ヴァンパイアが見透かしたように言う。
それでもナダールは動じない。
ヴァンパイアはナダールの反応が気に入らなかったのか、不機嫌そうに顔を顰めて合図を出す。
すると、周りの部屋から続々と眷属である下位のヴァンパイアが現れた。
ヴァンパイアに攫われたり洋館に迷い込んだりした冒険者の成れの果てだろう。
一斉にナダールへと襲いかかる。
「リン、迎撃するぞ」
「はい」
今までずっと黙って上位ヴァンパイアの動向を眺めていたマークスが、遂に動き出す。
隣にいたリンも呼応するように動き、二人でナダールを守るように眷属を迎撃する。
「……チッ」
二階からその様子を見ていたヴァンパイアが、一瞬顔を歪めて舌打ちをする。
「君ぃ! その魔法は何なのかなぁ!?」
が、直ぐに元の余裕振った態度に切り替えて、一階へと飛び降りる。
そのままナダールの元へ一直線に走っていく。
「リン、守るぞ」
「はい」
上位ヴァンパイアは余裕そうに振舞っているが、僅かに迷いが生じていた。その所為か足取りが重い。
以前戦った時、ナダールは魔法を使ってこなかった。
上位ヴァンパイアを一撃で倒せるような魔法は聞いた事が無いし、使えるなら何故以前は使わなかったのか。
ハッタリに決まってる。
だが大量の眷属を二人だけで抑え込める程の腕が立つ者が、ナダールを守る事に徹している事。
挑発してもナダールが動じない事。
背を向けて、余りにも隙だらけな事。
これらの矛盾点が上位ヴァンパイアを惑わせた。
迷っている間にも眷属が次々と削られている。
だが、人間は仲間思いな種族だ。
多人数相手での戦闘の際には、一人でも殺したり人質にしたりすれば、相手の動揺を狙えて一気に殺りやすくなる。
ここは最も弱く、やってる事が理解出来ない奇妙なナダールを落としに行くべきだ。
その後に動揺するであろう二人に畳かければ良い。
そう上位ヴァンパイアは考え、迷いを捨てる。
ナダールの元へ駆ける足取りが速くなった。
走りながらも爪を伸ばして、その勢いのままにナダールへ向かって爪を突き刺していく。
倒すには振るう方が確実だが、二人が守りに来ている。
少しでも早く攻撃を与えたる為、突きを選択した。
「チッ」
次に舌打ちをしたのはマークス。
上位ヴァンパイアの動きが突然早くなり、突きを選択したせいで間合いを見誤った。
かなり距離がギリギリで、剣の先端でしか防げない。
防げても、衝撃で体勢を崩してしまうだろう。
崩せなくてもそのまま連撃で釘付けにし、その間に眷属がナダールに攻撃すれば良い。
もっとナダールを守れるだけの人手を用意するべきだったな。
だが、剣と爪がぶつかる瞬間、突然剣の動きが止まった。
剣とぶつかるはずだった爪が虚空を通り過ぎて、そのままナダールの背中へ突き刺さる。
勢いがあった為、そのまま腹まで貫通した。
「なっ……!」
戦闘中だと言うのに、上位ヴァンパイアが素っ頓狂な声を出げて混乱する。
「お前も……道連れだ……っ!」
即座にナダールが光の魔法を解除し、両手で腹から顔を出す爪をガッシリと握る。
「なっ! やめろ! 離せっ!」
上位ヴァンパイアが少しして状況を理解し、慌てて爪を抜こうと暴れるが、それでもナダールは死力を尽くして爪を握って離さない。
「死ぬまで離さねぇ!」
「離せ! 離せ!」
上位ヴァンパイアは必死に喚き散らす。背後から剣を振るう二人の存在に気付かないほどに。
「あ……っ!?」
魔法で鋭くなった二つの剣が、上位ヴァンパイアの心臓に的確に突き刺さった。
上位ヴァンパイアがそれを認識した頃には、身体の風化が始まっている。
「畜生……お前も死ねよ……」
ナダールへの恨み言を残して、上位ヴァンパイアは呆気ない最期を迎えた。
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「リン」
「分かりました、ご主人様」
リンが風化していくヴァンパイアの身体から核を抜き取り、即座に口へ放り込む。
少し大きくて苦しそうにしていたが、何とか呑み込めたようだ。
よし、これで上位ヴァンパイアの核を食べれたな。
それにしても、正面からの戦闘にはならなかったから、上位ヴァンパイアの強さが余り分からなかった。
終始顔に困惑の色が現れていて、移動や攻撃にも思い切りが無かった。
高度な知能が裏目に出たなぁ。
まぁ、策を弄して全力を出せないようにするのも、戦い方の一つなので良しとしよう。
正面からぶつかり合う方が危ないからな。
一旦頑張って囮の役目を果たしてくれた、ナダールの様子を見に行こうか。




