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46 *R15

前話の出来に納得して無いので、何処かで書き直せたらなぁと。

「「「」」」「……オエッ」


 そんな呻き声が聞こえ、酸っぱい臭いが流れてくる。

 合計五回も手足を切り落とされた四番が、僅かに肉を吐いてしまった。


「あーあー汚いなぁもう、エルナ掃除しといて。じゃあ最初からやり直しだね、一番、指輪を嵌める?」


 最初ってまさか一周の始めから……!?

 私は六番だからあまり被害は受けないが、一二番の負担が余りにも大きすぎる。

 それに最後尾の私が吐けば実質一周追加だ。

 絶対に吐く訳にもいかない。



「そろそろ厳しくなってきたなぁ。リン、交代ね」


「分かりました、ご主人様」


 何周したのだろうか。

 漸く男の魔力が尽きたかと思えば、ずっと後ろで見守っていたリンと交代すると言う。

 まさかリンも隠し持っていたのか?


「一番、指輪を嵌めますか?」


「辞めて! 目を覚ましてリンちゃん!」


「悲観に恐怖、僅かばかりの期待ですか。哀れですね」


 そう言って一番の必死な説得に一切耳を傾けずに、二番の身体を切り落としていく。

 それも敢えて苦しむように、ゆっくりとゆっくりと。


 リンは楽しんでも悲しんでも居ない。

 ただ事務的に、私達が少しでも苦しむように行動している。

 私の知るリンは、もう何処にもいない。



 段々声を抑えられなくなってきた。

 全力で叫ぶ事でしか、痛みを誤魔化せないのだ。

 定期的に洞窟内に叫び声が木霊する。


 その後も治されて痛みが引くので、頭が回り余計な事を思い出してしまう。

 手足を切り落とされる痛み、やけに粘り気があり歯に吸い付てくる人肉の味、どれも思い出したくないのに頭にこびりついて離れない。


 ここは地獄だ。

 男でも何でもいい、誰か助けてくれ……。



「うん、二十週したし今日はこれで終わりにしようか。ちゃんと薬の効果もあるようだ。エルナは監視してて、逃げるようなら最悪殺してもいいよ」


 私達に猿轡を噛ませて喋れないようにし、エルナを残して立ち去って行く。

 逃げようにも、身体が疲弊しきって力が入らない。

 

 男の手によって、たったの一日で私たちはボロボロだ。

 これが後何日も続くというの……。






「やぁ、おはよう。よく眠れたかい?」


「ひっ!」


 眠りから覚めて目を開けてみれば、男が目の前に立っていた。

 思わず悲鳴が漏れる。


 夢じゃなかった、二日目が始まってしまう。



「一番、指輪を嵌める?」


「お願い! 切り落とすのは私の手にして!」


「うんうん、二番の手を切り落とすね」


「なんで! なんで!」


 二番の悲痛な叫びが響く。

 一日経って少し落ち着いた事で分かったが、この男は仲間思いである私たちの心を利用している。


 円形に配置し仲間の様子が見れるようにしたり、叫び声がよく聞こえるように拷問の時だけ猿轡を外したりして、仲間が苦しんでいるのがよく分かるようにしている。


 そう理屈では分かっていても、到底受け入れられるものでは無い。


 身体を切り落とされる所は目を瞑れば見えないが、耳はどうしても塞げない。

 どうしても悲痛な叫び声が耳に入ってしまう。

 そしてそれを聞く度に、手足を切り落とされる痛みが蘇ってくる。


「そろそろお薬の時間だよー、ちゃんと飲んでね」


 時々怪しげな薬も飲まされる。

 増血剤や栄養剤と言っていたので、私たちを死なせる気は無いのだろう。

 一思いに殺してくれた方がマシだ。



――――――――――――――――――――



「お願い! 指輪を嵌めるからもう切らないで!」


 おお、二日目にして早くも二番が折れた。

 一番手足を切り落とされていたし、魔法使いっぽいから痛みに耐性が無かったのかもしれない。


 ただここで素直に聞き入れては非効率だ。

 二番には不和を蒔いて貰おう。


「えぇ? それを言う相手は僕じゃないでしょ」


「アンタ以外に誰が居るのよ!」


 思考力が落ちて僕が悪人だと、盲目的になっているのかもしれない。実際そうなのだけれど。

 ただ思考力が落ちてるのは好都合だ。


「隣の一番が指輪を嵌めるのを断るから、君の手足を切っているの。だから一番に受け入れてと言うべきだよね」


 多少暴論でも、弱った心には深く染み込む。

 それはツバキで実証されている。


 二番がハッとして横に居る一番を見やれば、心外そうに首を横に振るい否定する。


「違う! 惑わされるな!」


 六番が大きく声を張り上げる。

 確か六番は一度も吐いていない人だったか?

 斬られている側だと言うのに、大した精神力だ。


 リンに六番を黙らせて貰って、二番には痛い思いをするのは指輪を拒否する一番のせいだと、誠心誠意"説明"してやる。


「一番が憎いだろう? 彼女が拒否なんてしなければ君がこんなに苦しい思いをする事は無かったんだ。そうだろう?」


 説明のついでに憎悪の感情を煽らせる。


 敢えて他の人にも聞かせて、奇数組は罪悪感を抱き、偶数組は仲間を恨んで貰えれば万々歳だ。

 上手く行けば仲間同士で喧嘩してくれるだろう。


「じゃあ、切り落とすから頑張って耐えてねー」




「なんで拒否するの! 私をそんなに苦しめたいの!」


「拒否しないと奴隷になっちゃうんだよ! それに私だって変わってあげたいよ!」


「うるさい! 私が死んでも良いって思ってるの!?」


 やはり予想通り、一番と二番が仲間割れしている。

 奇数組と偶数組で、精神的な苦痛は同じでも身体的な苦痛が全然違うから、思考力に差が生まれて話が噛み合わなくなっているのは面白い発見だ。


 一番も散々仲間が苦しむ姿を見せられた挙句、その仲間だった二番に恨まれて揺らいで来ているし、思ったよりも早く折れそうだ。


 逆に六番は未だに全然心が折れておらず、未だに切り落とそうと近づく度に強い意志のある瞳で睨みつけてくる。

 六番は鼓舞するような事を言って今の空気を変えてくる可能性があるので、常に猿轡を噛ませることにした。


 後は……エルナによると、昨夜は皆グッスリと眠っていたそうだから、今夜は睡眠を奪わせて貰おう。



――――――――――――――――――――



『よし、二日目終了! 誰も折れなかったからプレゼントをあげるよ、明日も頑張ってね』


 男は余裕そうに話して去っていった。

 後数日で私達が折れる自信があるのだろう。

 実際一二番は危うい、何とかしようにも目を付けられて私だけ常に猿轡を噛まされてしまった。


 六人が作る円の中心には、プレゼントと称して置かれた禍々しいオーラを出す核が置かれている。

 魔物を倒す時に何度もこの核は目にしたが、未だにこのオーラには慣れない。


 いや、それが普通なのだ。

 あんな物を平然と手で持ち運べる人など聞いた事がない。

 エルナは平気そうに監視をしているので、狂ったり壊れたりした人は平気なんだろうな。


 逆にそれは、私が壊れていない事を認識させてくれる。

 良かった、私はまだ大丈夫だ。


 ただ、安らかに眠ることは出来ない。それに――


「お前のせいで……お前のせいで……」


 ――昨夜は猿轡を噛まされガックリと項垂れていた二番と四番が、今夜は噛まされておらずずっと仲間に対しての恨み言を呟いている。


 あの男に惑わされて、完全に身体を切り落とされるのは仲間のせいだと思い込んでいる。


 恐ろしい男だ。


 今まで見てきた男が全て温く感じてしまう程に、この男は悪意に満ちている。

 下衆とか言う言葉では言い表せない、余りにも邪悪すぎる。悪魔という言葉が一番しっくり来る。


 私達は悪魔に目を付けられてしまったのだ。


 奇数組は肉体的苦痛を何一つ受けていないというのに、明日には折れてしまいそうな程、心がボロボロになっている。

 

 私だって同じだ。

 これは悪い夢だ、折れてしまっても良いだろう。そう私の頭の中で囁かれる。

 惑わされてはいけない。


 一人でも耐えて抜け出せれば、後は周りが何とかしてくれる。あの悪魔に屈する訳にはいかない。


 心を強く保つんだ、私。

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