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「やぁエルナ、調子はどうだい?」


「はいマークス様! 全然問題無いですよ!」


 あれからエルナの心体共に色々を調べたが、特に大きな問題は見られなかった。


 強いて問題を挙げるならば、忠誠心が強すぎて僕とのコミュニケーションが取りにくい所だろうか。

 普段通りの言動を心掛けるように命令したら普通に接する事が出来るのだが、僕相手だと忠誠心が抑えきれてないように見える。

 今もこうして様付けして呼んでくるし。


 人前でエルナと行動するとボロが出そうだな。

 まぁそんな大きな問題では無い。


 とにかくこれで、楽に自分で考え動く事の出来る手駒を増やせるようになった。

 当初の目的は達成したと言っても良いだろう。




 だが問題は幾つか残っており、その内の一つが白銀の乙女をどうするか、というものだ。

 リンに親しくさせており、友好関係を築いているBランクの冒険者チームだ。


 元々は脳改造が出来るようになってから、差し入れのクッキーに薬を混ぜて、眠ってるところに纏めて脳改造を施してやる予定だった。


 しかし素質が消えるというデメリットが生まれたせいで、その計画は使えなくなった。


 殆どの高ランク冒険者の強さは、素質があってこそだ。

 リンもそうだし、白銀の乙女も例外では無く、ほぼ全員が戦闘向きの素質を持っている。


 更には白銀の乙女はこの都市有数の上位パーティーなので、失踪しないよう遠征に行く際には、行き先や帰る予定日の報告が義務付けられている。



 無理なように思えるが、そこを何とかする為にリンに時間を掛けて親しくさせたのだ。

 あれだけ時間を使ったのに、何もせずに諦めるなんて勿体ない選択肢は取らない。


 脳改造が駄目ならば、指輪で手駒にすれば良いだけの話だろう。


「じゃあリン、今日は白銀の乙女の皆に睡眠薬と筋弛緩剤を入れたクッキーを食べさせようか」


「分かりました、ご主人様」


 クッキーの中に度々仕込む薬は、パーチェ士官学校の薬学部で習得したものだ。三年もあれば色々な薬について学べるので、睡眠薬や筋弛緩剤、強壮剤なんかはお手の物だ。


 この世界には毒を検知する魔法が一般的に知られているが、直接命に関わらない薬は検知しないという穴がある。

 この世界で薬の重要性や注目度が低いからこそ、警戒する者は少ない。有難く使わせてもらおう。



 二年間友好関係を築いた甲斐あって、簡単に六人とも薬の混ざったクッキーを食べ、眠ってくれた。

 エルナ含めた三人で闇夜に紛れて回収し、洞窟で全員拘束する。



 リンとツバキは精神が不安定でアイデンティティが確立してなかったから、話術でこちら側に引き込む事が出来た。


 それに対し白銀の乙女は、精神が成熟した立派な大人だ。

 話術で引き込むには時間が掛かる。

 遠征中という事になっているが、帰りが遅いと捜索される。そんな呑気にはしていられない。


 ならば短期間で心をへし折るしかない、拷問だ。


 拷問と言われて色々案は出てくるが、情報を吐かせる訳ではなく手駒として利用する為、再起不能にしたり無闇に壊したりしてはいけない。


 さて、どうやって拷問しようかな?



――――――――――――――――――――



 うーん……ここは……

 長い眠りに浸かっていたような気がする。


 確か森でいつもより早く眠くなっちゃって、一先ずリンに魔物の監視を任せて先に寝たんだっけか……。


 目を開けば周りは岩しかない。

 記憶違いでなければ森の中で寝たはずだ。


 風が全然吹いていないし薄暗い。洞窟か?


 というか身体が動かせん。

 横を見れば、他の仲間達が全身を拘束された状態で眠っている。


「おい! 起きろ!!!」


 どうやら口に猿轡は噛まされていないらしい。

 叫べば拘束した人に気づかれる可能性もあるが、今は起こして状況把握をするのが先決だ。


 声が届いたのか、皆も起き出した。

 皆も最初はパニックになり、鎮めさせて状況を整理するが、誰も何も分かっていないと言う。


 手足は何とか動かせるので、拘束具を振りほどこうとするが身体に上手く力が入らない。

 麻痺しているのか?



「やぁ皆さん、おはようございます」


 突然前から声が聞こえてきた、少し高いが男の声だ。

 前を見れば、暗闇から若々しい男が現れる。

 背もそこまで高くない、まだ子供だろうか。


 その後ろには何人かの女……リンも居るな。


「ねえリンちゃん……これは何? 裏切ったの……?」


 仲間が感傷的な声で問いかける。


「裏切ってませんよ。元々ご主人様の仲間でしたので、そちらが勝手に騙されただけです」


 仲間は言ってることが理解出来ないのか、呆然とする。


 リンは普段から無愛想な子だったが……あれは本当にリンなのか? あまりにも表情と声が冷たい。

 そしてご主人様……偶にリンが一緒に行動していた男か、見覚えがある。


「こうして拘束した理由ですが、私の手駒になって頂きたいんですよね。別に性欲の捌け口にするような酷いことはしないですよ、死ぬまで一生指示に従ってくれれば良いだけで」


 男が落ち着いた態度で、諭すように話しかけてくる。

 が、内容は到底聞き入れられるようなものでは無い。

 奴隷になれと言っているようなものだ。

 

 男に舐められ見下され、それが嫌で強い女性同士でチームを組んだというのに、男の奴隷に成り下がるなどあってはならない事だ。


「……下衆が」


 嫌味をぶつけるが、男はどこ吹く風に話を続ける。


「で、皆さんにはこの指輪を嵌めて頂きます。この指輪は奴隷の首輪と似たようなものです。僕の命令遵守、僕にとって不利益な行為をしない、自死をしない、後は感情を抑制する効果なんかもありますね。ただ契約なので同意が必要です、皆さんには同意して頂きます」


 思えばリンはずっと指輪を嵌めていた。

 彼に命令されて私達と組んでいたのだろう。


 男は同意するのが確定事項のように話してくる。

 気に食わない、私達が拘束された程度で同意するような人だと舐めているのだろうか。


「ウチらが素直に同意するとでも思ってんのか?」

 

「思ってませんよ。だから今から同意してくれるまで、拷問をして苦しめます」


 拷問か……やはり男は下衆で悪意に塗れている。


 拷問をされた経験は無いが、過去に何度も強い魔物と戦い、傷を負ってきた。

 かなり痛みに耐性はあるはずだ。


 それに奴隷として使うのが目的ならば、殺す気は無いという事。とにかく痛みに耐えれば良い。

 絶対に耐えてやるぞ。


「殴るなり蹴るなり、好きにしてみろよ」


 私はそう喧嘩を売った。



 ……売ってしまった。

一応拷問タグを追加しました。

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