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少し長めです。

後半は普段と異なる書き方を試しています。

「ねぇオスカー、本気なの?」


「あぁ、勧誘する分には問題無いはずだ」


「でも白銀の乙女の方は大丈夫なの?」


「別に違法では無いし、白銀の乙女も以前会ったけど話が通じない人では無かっただろ? 大丈夫だって」


「でもねぇ……ずっと二人でやってきたじゃない、今のままじゃ駄目なの?」


 エルナは不服そうに抗議してくる。ここに来るまでに何度も繰り返したやり取りだ。


 駄目に決まってる。


 幼なじみのエルナとパーティーを組み長年活動して、ようやくBランクまで上がってこれたのだ。

 しかしそろそろ限界を感じている。


 エルナは現状に満足しているようだが、俺は不満だ。


 冒険者チームの平均人数は五人程と言われている。

 人数が多ければ多いほど手数が増えるが、逆に増え過ぎると同士討ちや金銭の分配のようなトラブルが増える。

 その結果五人に集結するのだ。


 そんな中エルナとの二人だけでBランクまで来れたのだから、仲間を増やせばAランクも夢では無い。


「まぁ一回見るだけ見てみようぜ、噂がどこまで真実なのか分からないしな」


 そんな訳で仲間に加える候補の人を探しているのだが、王都には強いソロの冒険者など滅多に居ない。

 殆どがAランクのチームや貴族に引き抜かれてしまう。


 そんな中、辺境にソロの実力者が居ると言う噂を耳にした。

 忌み子の女性の剣士。Cランクだが、Aランクに匹敵する実力の持ち主と言われている。


 詳しく調べてみれば、やはりと言うかBランクの白銀の乙女に引き抜かれていた。

 ただ正式に加入はして居ないとの事。


 正式に加入して居ないなら、引き抜いても問題は無い。

 駄目元で勧誘してみる事にした。


「分かったわよ……でもこれで駄目だったらそろそろ諦めない? そのうちお金が無くなるわ」


 実力者を探しに情報を集めたり、別の都市に向かったりしたが、当然その間の収入は無くなる。

 そろそろ生活の為にも切り上げる必要がある。


 それでもこんな所で諦めたくは無いし、何とかこの機会に仲間を増やしたい所だ。




 女性一人で活動する冒険者など滅多に居ない、それも忌み子なので、街中で見た時一目で分かった。


 その瞬間、美しさに目を奪われた。

 非常に整った容姿。

 忌み子に特に嫌悪感がある訳では無いので、赤目なのもそこまで気にならない。


 これは是非とも仲間に加えたい。


 王都で活動するBランクが来たと知られると、余りに目立ってしまうので人気の無い所に呼び出す。

 非常に怪しまれてはいるが、どうにか来てくれた。


「それで、話とは何です?」


 淡々とした声で問い掛けてくる。

 距離も取っており、明らかに警戒されている。


「お願いします! 俺らとチームを組んでください!」


「お断りします」

 

 取り付く島も無く、背中を向けて立ち去って行く。

 待て、何とか引き留めなければ。


「俺らはBランクの冒険者だ!」


 そう言うと、女性の足が止まる。


「……私の知る限りでは、男女二人組のBランクはこの辺りに居なかったはずですが」


「それはだな、俺達は王都から来た――」


 何とか事情を説明して、実績や素質を伝え俺達が実力者である事をアピールする。

 その間も女性は無表情で警戒しているし、エルナは横から白い目で見てくるので、何だか胸が締め付けられる。


「ふむ、一日お試しで組んでみます? 活動場所は私が決めますけど」


 納得してくれたのか、色よい返事が来た。

 一日だけでも良い。ここで上手くアピールをすれば、仲間になってくれる可能性は十分にある。


「ありがとう! 君のような美し、じゃなくて実力者と組めて嬉しいよ!」



――――――――――――――――――――



「お疲れ様です。次は私が住んでいる村の近くの森へ、間引きをしに向かいます」


「リンさん、俺に任せてください!」


 出会って一日も経っていないリンという名の忌み子の女性に対し、そう豪語するオスカーを見て、エルナは失敗したなと思う。


 一目でも見に行かなきゃ良かった。ここまでオスカーが暴走するだなんて、予想だにしていなかった。


 良い所を見せつけようとして焦っているのか、戦闘時の動きも粗くなっている。

 更にはリンが差し出したクッキーも毒が入っている可能性を疑わずに、速攻で喜んで食べ出す始末だ。

 魔法で調べた結果、毒は入っていなかったから良かったものの、オスカーのあらゆる言動が粗末になっている。


 そもそもリンが一日付き合ってくれたのを、オスカーは説得に成功したからだと思っている。だがあれは確実に、必死になるオスカーを見て哀れに思い、仕方なく付き合ってあげているだけだ。

 許可した時、そんな呆れたような表情をしていた。


 リンには聞こえない声量でオスカーに話しかける。


「ねぇ、連携も取れていないしもう辞めとこうよ」


「何言ってんだ、ソロだからそこは仕方ないだろ。強さは十分にあるし、チームに加えて連携が出来るようになれば、Aランクだって夢じゃない」


 オスカーが心外そうに顔を顰めて反論する。

 言ってる事は正しいが、本当にそれだけなのだろうか。


 リンと名乗った女性は、噂に違わぬ程の実力者だった。下手すれば私たち二人よりも強い。

 だが連携する気が毛頭見られない。


 連携力が強みの白銀の乙女と度々共に行動していると聞いていたので、連携は出来る方だと思っていた。

 ハッキリ言って期待外れだ。


 オスカーは連携については後から何とかすれば良いと言っているが、判断が甘いのでは無かろうか。

 先程からもリンに好奇の視線を向けていて、下心に惑わされているように見える。


 何でこうなってしまったんだ……。

 エルナは心の中で嘆く。



 そんなオスカーが好奇の視線を向けている相手、リンは黙々と目的地に歩みを進めている。


 この人もこの人だ。

 先程言ったように連携する気が微塵も感じられないし、寡黙、無表情で何を考えているのかも分からない。

 流石にオスカーの言動には呆れていたようだが。


 呆れているだけならばまだ良いが、リンがオスカーの気持ちを悪用しようとすると不味い事になる。

 今のオスカーならば何でもやりかねない。

 それだけは避けなくては。


「この先私が住む村がありますが、忌み子で忌避されているので、目に付かないように回り込んで行きます」


「そうか……忌み子で苦労しているんだね。俺らは気にしてないから安心していいぞ」


 おい、貴様何を言っているんだ。

 これは本格的に不味いぞ。

 如何にリンが強くても、加入は絶対に止めなければ。

 

 今日一日は仕方なく付き合ってやるが、後でリンが加入すると言い出しても、断るように強く言い付けておこう。




 現在向かっている村周りの森は、先程まで活動していた森よりも地平の起伏は緩く、魔物も弱い。


 だがリンに付き従う二人の目に力が無い。

 かなり疲弊しているようで、汗をかいている。


「ねぇ、やけに二人とも疲れているんだけど。リンに何か盛られた可能性があるかもしれないわよ」


「リンがそんな事する訳がないだろ。盛る理由も無いし同じ物を食べたんだから、俺達だけに何かを盛るなんて出来ないぞ」


 エルナはリンのことを怪しんでいるが、オスカーはそうでは無いらしい。

 断言するオスカーにエルナは呆れてしまうが、後半部分の主張は確かに間違ってはいない。

 ただエルナは何処か納得できず、不安が募る。

 

 すると突然、エルナの視界からオスカーが消えた。


「オスカー!?」


 オスカーが居た所を見れば、地面に穴が空いている。

 覗き込めば、落下の衝撃で身体を痛めているオスカーが居た。


 落とし穴?


 何故こんな所にある、何処かの狩人が作ったのか?

 いや、そもそも普段のオスカーならば落とし穴に気付いて躱すか、躱せなくても受身を取れていたはず。


 明らかに様子が変だ。

 私も異様に疲れすぎている。オスカーを助けたら、今日はもう撤退して休もう。


 そう考えるエルナの後頭部に、強い衝撃が走る。


 何故、誰が、そんな事を? 考える間もなくエルナは意識を失い、脱力してオスカーの居る穴へと転がり落ちる。



「な、何で……リンさん……」


 歯切れの悪い声が、穴の中に居るオスカーから漏れる。

 その様子を、リンが上から冷たい目で見ていた。


「貴方は実力と性格、共に問題有りですが、何かに使えるかもしれないので一応生きた状態で回収しておきましょう」


 リンはよく分からない事を言うと、自ら穴に飛び込んでオスカーに襲い掛かった。

 オスカーも慌てて対処しようとするが、異様な疲れと落とし穴に落ちた衝撃で身体が上手く動かせず、リンの拳を受けてしまう。


「ガハッ……」


 拳が余りにも重い。まるで魔法が掛かっているように。


 剣と魔法を両立する人は殆ど居ない。分野が余りにも違うので、片方に特化した方が効率が良いと言われている。


 だが目の前の女性は、剣も魔法も器用に使いこなして襲いかかって来る。

 オスカーには、自分の心身状態を加味すると勝ち目が見当たらなかった。


「魔法まで使える実力者のお前が……何故こんなことを……」


「全部ご主人様の為ですよ、早く眠ってください」


 再び重い拳が腹に当たる。


 エルナの警告を聞き入れておくべきだった。そう後悔する間もなく、オスカーも意識を失っていった。

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