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「ちょっと、Cランクのリンって君?」
「はい、そうですが」
今日も私はご主人様の為に依頼を確認し、森へ魔物を討伐しに行こうとしたのですが……また絡まれた。
あれから絡んでくる人は殆ど居なくなったんですがね。
ですが、今回声を掛けてきた人の感情は関心や期待。
プラスの感情ですね、珍しい。
「そうかそうか! うちらBランクの白銀の乙女っていう冒険者なんだけど、知ってるかな?」
Bランクの冒険者の情報は、ご主人様の命令通りしっかりと集めているので当然知っている。
白銀の乙女……女性が軽視されがちな冒険者の世界で、女性の地位を確立しようと各地から強い女性を集めた、女性六人組のチームだ。
各々が近接戦闘や魔法等、何かに特化した猛者らしい。
加入条件はそれなりに強い女性であるだけ。
男性に対しては厳しく、絡んできたら全力で迎撃する。
今やBランクまで上がり、男性は誰も近づけなくなっているそうだ。
Bランクともなるとかなり森の深い所まで行き、数週間の遠征になるので、殆ど出会うことは無い。
たまたま出会っただけなら良いのですが、わざわざ私を狙って待っていた可能性もある。
プラスの感情ではあるが、警戒は必要ですね。
一先ず要件を聞こう。
「一応は存じておりますが、私に何の用でしょうか」
「いやー君さ、前に野蛮な男に絡まれたって聞いたのよ。自力で撃退したらしいけど、心配だから勧誘しちゃおっかなーって!」
なるほど、ソロの女性の冒険者は狙われやすい。護ろうとしてくれているのだろう。
だが私はご主人様の手駒、勧誘を受ける訳にはいかない。尤も、ご主人様が命令したら話は別だが。
ただBランクの冒険者が初対面から私に好意的に接して来て、勧誘までされるのは想定していなかった。
何かに利用出来そうだが、独断で動く訳にはいかない。
一度ご主人様に確認しなければ。
「すいません。勧誘は有難いのですが、一日考えさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「うん、こっちも唐突だしね。全然いいよー」
「へぇ、白銀の乙女がリンをねぇ」
「はい、流石にBランク相手なので独断で動くのは宜しくないと判断し、保留にしてあります」
洞窟で研究をしているご主人様に事情を話す。
ご主人様は重大な事案だと捉えたのか、研究の手を止めて真剣に考え出した。
「うん、そんな事想定してなかったし仕方ない。そうだな……Bランクか……」
「手駒にされるのですか?」
「出来ればしたいね。ただ今は脳改造の研究を進めたいし、白銀の乙女の情報も足りてないから、後回しかな」
ご主人様が下した判断は後回し。
つまり脳改造が出来るようになるまでは、手を出さないのだろう。
逆に言えば、出来るようになれば手を出すと言う事。
手を出す際には、違和感を持たれて逃げられないように纏めて捕らえる必要がある。
ならば私のやる事は、少しでも捕獲の成功率を上げる為に友好関係を築き、信頼されるようになる事だろうか。
「では私は、仮加入や見学辺りで宜しいですか?」
「話が早くて助かるよ。ついでに何も入ってないクッキーを差し入れに渡すようにしようか」
なるほど。
手を出す際に、クッキーに薬を仕込むのですね。
「分かりました、その様に動きます」
「うん、よろしくね。リン」
ご主人様は機嫌が良いのか、頭を撫でてくれる。
思わず身体が震えてしまう程の喜びが込み上げてくる。
ご主人様にはしたない姿を見せる訳にはいかないのに、頬は赤らみ口からしっとりとした吐息が漏れてしまう。
それでもご主人様は気にかける様子も無く、頭を撫で続ける。至福の一時だ。
よし、明日から頑張りましょう。
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「誘って下さるのは嬉しいのですが、やはり私は忌み子ですし……」
向こうは忌み子なのを分かった上で誘っているので問題は無いが、敢えて一度なるべく汐らしい態度で遠慮する。
一度遠慮すると譲歩案が通りやすくなるかも、とご主人様は言っていた。
流石はご主人様、博識です。
「大丈夫だって、女性なら忌み子とか関係ないよ!」
「うーん。では一度、戦闘の様子を見学させて頂いても宜しいでしょうか?」
「うん、いいよいいよ!」
折角なので、Bランクの実力や戦い方も見せて貰いましょうか。
「リンちゃん! どうだいうちらのチームは!」
なるほど、Bランクなだけあって連携がしっかりしており、安定感がある。
それぞれの特化した武器の利点を活かしつつ、連携して上手い事弱点を補っている。
「非常に勉強になります、特に連携が凄いです」
一人の女性は満足気に頷く。
実際、この連携力には目を見張るものがある。
もしも敵対されると、鏖殺するのに五分は掛かりそうですだ、
念の為、弱点や穴も探しておきましょう。
「どうだいリンちゃん、入ってみないかい?」
「うーん、この連携に着いていける気がしないですし、今の環境にも満足しているので遠慮しておきます。ただこれからも、勉強の為に見学させて貰えると嬉しいです!」
好印象を持たれるよう、頑張って声に感情を込める。
普段は感情を表に出していないので、ここぞという時に出せば効果的に映るはずだ。
「あー、全然いいよ! これからもよろしくね!
勧誘を断ったというのに、読み取れる感情は喜び。
この人達は女性には甘いのかもしれない、騙しやすそうですね。
このまま友好関係を維持して、ご主人様の研究が一段落つくのを待ちましょうか。
白銀の乙女の皆さんが、将来ご主人様の手駒になると思うと非常に楽しみです。




