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『すいません、これ買ってもいいですか?』
『身体の傷は全部治したよ、どうだい?』
『うーん、名前は言いたくないと。じゃあリン、今日から君の名前はリンだ』
何も分からぬまま忌み子の孤児となり、奴隷として売られ、人として扱われず、あらゆる人に蔑まれ、ボロボロになった私は、ある日同年代の少年に買い取られた。
『これからは僕の家族に迷惑掛けないように、食事や睡眠は僕と一緒に取ってね。それで、君はまず知識と体力を身につけようか』
その少年は、忌み子だった私にも普通の人間のように接してくれた。
限界まで走らされて、限界を迎えれば本を読んで勉強。
幼い私にはとても厳しい内容だったが、一人の人間として扱われているのが嬉しかった。
何かもを失ってポッカリ空いていた心の穴が、その少年で埋められていった。
ある日、忌み子に纏わる本を読んだ。
少年がおかしいだけで、私のような忌み子にはなるべく近づいてはいけない存在らしい。
女神様から見捨てられた者だと。
――もしも少年に見捨てられたら、私はどうなる?
ふとそんな考えが頭に過った。
少年の他に、私を人間として接してくれる人が居るのだろうか? 運良く他の人に買い取られても、労働力として死ぬまで使い潰されるだろう。
嫌だ、捨てられたくない。
少年は、私に対して常に距離を置いている様に見える。警戒されているの?
なんで? やっぱり忌み子だから?
でも気にしてないって言ってた。
なら私が隠し事をしているから?
なんでも話すから、私を捨てないで。
『……なんで急に過去の事を話そうと思ったのかな?』
『貴方に捨てられたくない……隠し事もしないし、言う事はなんでも聞くから。お願い、捨てないでください……』
ある日の夕暮れ時に、全てを打ち明けた。
もう外も暗く、火を焚いている程度なのでハッキリと顔は見えなかったが、少年は笑っているように見えた。
心の底からの、本当の笑顔が見えたような気がした。
『僕は不老不死を目指しているんだ。その為ならば、なんだってするつもりだ。リンも協力してくれるかい?』
翌日、目的を打ち明けられた。
親にも教えていなかった事を、私にだけ教えてくれた。
不老不死。
永久に若く有り続け、死なない事。
実現可能なのかも分からないし、きっと長く険しい道程になるだろう。
私に優しくしてくれたのも、その協力者になって欲しいという打算的な考えからだったのかもしれない。
『勿論です、ご主人様』
それでも、私は構わなかった。
少年と一緒に居れるのならば、なんだってする。
今思えば、私は恋をしていたのかもしれない。
私はこの少年の為に生き、全てを捧げ、共に不老不死を目指す事を決めた。
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いけない、またご主人様との出会いを思い出していた。
守るべき人が居ないからといって、油断してはいけない。
ご主人様に色々な仕事を任されて、別行動することになった。
仕事は特に難しくは無いのですが、どうしてもご主人様の身に何か起こらないか心配です。
夜には帰りますが、それでも昼は寂しいです。
思えば、ご主人様とここまで離れるのは初めてだ。
ですが別行動を取り、仕事を任されたという事は、それだけ私を信頼してくれているという事。
その信頼を裏切らないように、頑張らなければ。
私はご主人様にとって、優秀な手駒になるのだ。
「リンさん……Bランクに昇格する気は無いんですか?」
「ありませんね」
そういうと、受付嬢が眉間に皺を寄せて唸る。
やはりCランクまでは簡単に上がってしまった。
だがBランクには上げるな、とご主人様に言われた。
その為Cランク以下の魔物を狩り続けていたのだが、毎日一人で安定して狩り続けていた為、Bランクになれるだけの実績が出来てしまった。
それでもランク上げには本人の意思も必要になるので、私が断る限りは上がらない。この辺りにはAランクはおらず、Bランクは四組しかいない。
五組目のBランクとなれば、あまりに目立ってしまう。
「チッ、あの女、また断ってるぞ」
「忌み子のくせに、気に入らねぇな」
近くの机に座る男が、小さな声で嫌味を言う。
周りが騒がしく聞こえていないと思ってるのだろうが、狩りの経験で聴覚が研ぎ澄まされた私には正確に聞き取れる。
この都市の冒険者には既に目を付けられている。
なるべく注目は集めたくなかったが、Bランク昇格を断り続けているのだ。こればっかりは仕方ない。
横目で見れば、こちらを睨んで来る。
Bランクからは二つ名やチーム名があるが、その分大きな壁があり、Cランクで停滞している人が多い。
そんな中で新入りが一人突然現れ、Bランクになれるのに拒否しているとなれば、気に食わないのでしょう。
また、女神を信仰する者からは一方的に敵視される。
Bランクにも忌み子はいるのですが、強さとかではなく生理的に無理みたいですね。
正直面倒臭くて全員殺したいが、そんなことは出来ない。ご主人様に迷惑が掛かってしまう。
何とか丁寧にあしらっている。
その程度の事はご主人様に捨てられる事に比べればなんてことは無いが、ヒートアップして邪魔をしたり尾行したりする人が現れ、ご主人様に任された仕事の妨げになると厄介だ。
何処かで上手く処理したいところである。
そんなことを考えながら、様々な依頼が貼ってある掲示板に移る。
めぼしい依頼が無い……ご主人様には珍しい魔物の討伐依頼を受けて欲しいと言われている。
ご主人様の為にも、早く何か出てきて欲しい所だ。
「あぁ、ご主人様……」




