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「素晴らしかったです。あの様子だと問題無さそうですね」
「そうだねぇ、こういう事をするのは初めてだったけど、上手く行って良かった良かった」
「ツバキさんも良い手駒になってくれる事でしょう。ご主人様も今、いい笑顔をしてますよ」
「そうかい? ありがとう」
『――そうだね、私もそういう人間だったんだ。受け入れて、これからもマークスに従うよ。よろしくね?』
あの後ツバキは壊れた自分を受け入れて、自ら僕に従う理想的な手駒になってくれた。
今のツバキなら、家族を殺せと言えば殺せるだろう。
リンからも問題ないという太鼓判を貰った。
これで懸念事項は無くなった。
村に帰って両親と話し合いながら、僕ら三人が今後どうするか決めて行こう。
その前に母親の治療をしないといけないな。
村に着いたが、やはり母さんのお迎えがない。
「ただいまぁ……ぁあ?」
家で寝ているだろうとドアを開けて元気に挨拶をしたら、父さんが目の前に佇んでいた。
思わず素っ頓狂な声が出てしまう。
しかもよく見れば真剣な表情だ。学校に行く事を提案された時のような、重々しい空気が周りには漂っている。
「帰って来たかマークス、とりあえず三人とも座れ」
なんだなんだ、何やら不穏だぞ。
よく分からないが指示に従う。
「分かりましたけども……どうしたんです?」
「……母さんが死んだ」
「え?」
「数週間前の事だ」
そうかー、母さん死んじゃったのか。
母さんは死ぬ時にナニカに呑まれたのかな……気になるが調べる術はない。
幸い、前々から体調が怪しくなっており、念の為に父さんは帰省していたので看取る事は出来たらしい。
うーむ、家族という手札を一枚失ったのは痛いな。
「既に村の皆で火葬をした。時期が時期でな、事前に伝えられず本当に済まなかった」
「そうですか……」
多分卒業間際だったから送りにくかったんだろうな。
落ち込んだように顔を伏せれば、今日はもう休んでいいぞと言ってくれた。
「なぁマークス、母さんが死んでどう思ってるんだ?」
「母さんは味方になってくれる存在だったから生きて欲しかったな。でも家に居て邪魔でもあったし、ここで死んだのはある意味好都合とも言えるかな? 損得はあまり分からないね」
「親の命も損得か、それでこそ私のご主人様だ」
――――――――――――――――――――
母さんが死んだと告げられた翌日の朝を迎えた。
別に情が湧かない訳では無いが、不老不死には関係ない。
すぐに切り替えて動いていくぞ。
父さんとも今後のことを話し合わないといけない。
リビングに行くと、父さんが珍しく酒を飲んでいた。
「よぉマークス、もう大丈夫か?」
「まぁ、なんとか……」
「そうか……これからどうしたい? もう今から俺と一緒にスミア王国に行くのもいいぞ」
あー……そういう手もあるか。
今からスミア王国に行けば、じっくり時間を掛けて動けそうだが、あまりに手駒や準備が出来ていない。
ここは遠慮しておこう。
「ツバキは戦えないので家で家事をして、僕らは冒険者になろうかなと……」
「お前には、どちらかと言うとその頭脳を活かして貰うつもりだ。強さはそこまで求めてないぞ?」
「魔物の事も色々調べたいですし、向こうに行ったらそこまで時間は取れないと思うので……」
「むぅ……」
父さんが唸っている。
冒険者は簡単に死ぬ危険がある職業だ。僕はそこまで危険を冒すつもりは無いが、何があるかは分からない。
父さんも不安なのだろう。
「大丈夫です。討伐ではなく研究をしたいので、討伐の大半はリン一人でやらせます。リンは僕よりも強いですし」
これは本当だ。冒険者に成り立ての最初と僕自身も魔物を見たい時は同行するが、基本は僕が死ぬリスクを抑える為にもリン一人で行かせればいい。
寧ろ僕も行くと、リンが僕を守る必要があるので足手まといになる可能性まである。
父さんは母さんとは違って放任主義だ。重傷を負ったりと変なことをしない限りは自由にしろ、というスタンスが多い。今回もそのスタンスで居てくれると嬉しいが……
「分かった、好きにしろ。ただし死ぬなよ。当然リンにも死んで欲しくない」
「ありがとうございます」
リンは忌み子だったが、すっかり受け入れられているようだ。まさか心配までされるとは、良かったねリン。
父さんは仕事へ帰って行った。わざわざ僕に母さんの死を伝えるために待っていてくれたのだろうな。
一応これからも月末には帰って来るそうだ。
村での魔物の間引きもこれからは僕らがやることになって、村の出費が減るのか村人も喜んでいた。
忌み子の存在よりも金って事か、分かりやすくて良い。
良い感情を持たせてやれば変に探ることはないだろう。
再びあの洞窟を拠点に出来るな、ツバキが一人で行けないのが難点だが。
ともかく冒険者になることは許可して貰えた。
「よし、今後の細かい動きを決めていくぞ」
士官学校編はこれにて終了です。
次話からは冒険者編になります。
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