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業の軌跡 〜悪魔は不老不死を渇望する〜 (未完結)  作者: 橘 涼
〜士官学校編〜
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 あれから何日か家族とツバキで暮らした。


 僕の家族が元気の無いツバキに優しく接していたので、とりあえずは元気になれたようだ。


 ツバキは両親から僕らの学校での様子をしつこく聞かれていたが、変なことは言えないようにしているので問題ない。寧ろ僕の評価を上げてもらおう。


 心臓マッサージの事はこの村まで届いており、大層褒められた。母さんも僕が皆の命を救うために頑張っていると思い、安心したようだ。


 それに久々に森への狩りに行ったが、学校で鍛錬を頑張った甲斐あって目に見えて動けるようになっている。

 僕らはまだまだ強くなれる。喜ばしい事だ。


 ちなみに村で狩人をする僕らが居ない間は、魔物の間引きは基本的に冒険者に依頼をしている。お金は掛かるが仕方の無いことだろう。


 あっという間に年末年始が過ぎて行き、一年後また来ると別れを告げ、泣いている母さんを宥めて学校へ帰って行った。




「ご主人様、ツバキの家族が死んだら、人質が居なくなって逆らってきたりしませんか?」


「あー、ツバキは僕らと同種だろうから大丈夫だよ」


「同種、ですか?」


「あの研究者を殺すときに躊躇ったり感情を表に出したりしなかっただろう? いくら家族を人質に取られてるとはいえ、人を殺せばもっと感情を出して現実や罪悪感から逃れようとする。それが無かったから彼女も、自分が生きる為なら割り切って何だってやれるタイプだね」


「なるほど、自分が生きる為に下手な事はしてこないと。しかしあの後しばらく落ち込んでいました。同種とは言えないように思えますが」


「根は善人だけど、子供なのに貴族に酷い目に合わされたりと精神的負担が大きかったから中途半端に壊れたのかもしれない。そこで彼女が次に家族に会った時に、完全に壊してこちら側に引き寄せてあげるさ」


「なるほど、理解しました。その時はツバキも良い手駒になれるといいですね」


 リンも積極的に意見や疑問を言えるようになったし、良い傾向だ。

 ツバキも中途半端だが壊れていたのは、嬉しい誤算だ。


 次は二年生だ、頑張るかぁ。



――――――――――――――――――――



 今日もレナート先生の研究室にいつもの四人が集まる。


 新入生の生物学部への入部希望者が多かったが、どの道二年後はどこかの国に行くので僕たちの世代で終わりだとお断りして貰った。


「今年も研究をやって行く訳ですが、国から学校へ研究の依頼が殺到しましてね……中でも個人的にマシだと思ったものを幾つかに厳選したので、どれをやりたいか選んで下さい」


「先生……」


「ごめんなさい、拒否権はありません、上からの命令です。ですがなんとか一年期限でお願い出来たので、取引は問題はないですよ!」


 有名になりすぎた故の問題だなぁ。

 まぁ国からの勧誘を断って三年間学校に留まるわけだから、その間にもせめて研究だけでもやって欲しい気持ちは分かる。


 レナート先生もホムンクルスに関する研究が出来ず、少し残念そうだ。

 国の依頼に対してマシなんてって言っている。


 〇〇国からの――、〇〇国からの――、レナート先生が次々と読み上げていく。面白そうなものはあれど、不老不死に関わりそうなものが出てこない。


「デイン帝国からのエルフの長寿の秘訣について」


 ……おや? 今長寿って言ったか?

 レナート先生は全部言いきったのか、黙ってこちらを見ている。


 エルフ……本で読んだことはある。

 森の奥深くで暮らす長寿の種族。

 閉鎖的で稀に人間界に降りてくる物好きはいるもの、基本的には不干渉。

 エルフの里に近づいても、門前払いか最悪殺されるのだとか。


「デイン帝国ですか……大丈夫なんです?」


 ツバキが心配そうに問いかけてくる。



 ―――デイン帝国


 パーチェ王国に隣接する、実力主義の帝国。

 リンも恐らく元々はそこに住んでいて、圧政に苦しんでいた。


 武力でパーチェ王国に引けを取らない程の大国まで領土を広げ、パーチェ王国にも戦争を吹っかけた過去がある。

 僕が産まれる前には二国間で度々戦争が起きていた。今は停戦して交易もしてるし人も行き通っているが、いつ戦争が再開するか分からないらしい。


 要はこの国の潜在的な敵だ。


 僕達が今後向かうスミア王国とは真反対に位置するので、そちらに特に影響はない。



 とまぁそんな国からも依頼が来た訳だが……ツバキが心配するのも分かる。

 パーチェ王国の学校なのに、敵対国の研究なんてしていたら反逆者みたいな扱いにならないか?


「多分大丈夫です、国からの許可は降りてますし、どうせ帝国に情報を渡す時にパーチェ王国も確認するでしょうね」


 そうぶっきらぼうに答える。

 帝国に渡す情報は自分たちも確認するから良いよって事か。政治のいざこざに巻き込まれたようで気が滅入る。

 だがこの研究依頼は是非とも受けたい。


「デイン帝国からのエルフの長寿の秘訣について調べたいですね。エルフも一度見てみたいですし」


 リンも同意してくれる。


「おおそうか、学園長にもそう伝えておく。エルフの素体は帝国が届けてくれるらしいぞ!」


 エルフはそうそうお目にかかれないし、長寿について何か掴めるかもしれない。楽しみだ。

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