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業の軌跡 〜悪魔は不老不死を渇望する〜 (未完結)  作者: 橘 涼
〜士官学校編〜
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 私は平民から成り上がった、生物学部を専攻する研究者だ。


 生物学は世間的には評判が宜しくないが、私は民を救うには必要だと確信し、この道に入った。

 医療魔法では不完全だ、やはり傷を根本的な所から治すためには手術が必要だ。


 生物学もれっきとした人の命を守る為の研究なのだ、誇りを持っている。

 あんな人体を弄り、ホムンクルスを生み出そうとするレナートと一緒にしないで貰いたい。


 レナートとは学生時代同級生だったのだが、あいつは狂っていた。人の身体を嬉々として解剖し、人体の仕組みばかりを知ろうとしていた。誰かの命を救うなど考えずに、自分が気になっていることだけを研究するだけの人だった。

 貴族でそれなりの立ち位置だったのもタチが悪い。


 あいつは何に魅せられたのか、ホムンクルスを作ると言い出して、学校を拠点に活動を始めた。

 学校という閉鎖空間に籠り、研究室でホムンクルスを生み出す非人道的な試行錯誤をしているのだろう。

 忌々しい奴め。

 ホムンクルスが実現していない現状、上層部も研究を問題視せず法整備していないので、何かの罪として逮捕することも出来ない。




 ある日、そんなレナートが大成果を上げた。

 心臓マッサージというものを発見し、これを使えば蘇生が出来るらしい。


 表向きは彼が発見した事になっているが、どうにもアイツが蘇生の方法を探るような人には思えない。

 度々研究発表で出会うが、相変わらず人体やホムンクルスに固執している。


 ホムンクルスの研究の際に偶然発見した可能性はあるが、蘇生とは関係性がない。彼の生徒に心臓マッサージが思いつく程の、優秀な生徒が居たと考えるのが現実的だ。


 確証は無いが仮に居たとしたら、その子をレナートの元で腐らせるのは勿体ない。

 私ならばもっと人類の為に、有意義に活かせるだろう。


 最終的にどちらを選ぶかは当人次第だか、勧誘する分には問題ないだろう。

 決して引き抜いて、私の元で成果を上げてもらおう、となどと汚い事は考えてはいない。


 学校の敷地内には入れないので、登下校中の生徒に聞き込み調査をした。

 やはり思った通り、彼のいる学部には、入学試験で一位と二位だった者が入ったらしい。


 だが残念なことに寮暮らしだった。

 中々出てくる様子も無い。

 年末年始には寮暮らしの生徒もほとんどが実家に帰る、そのタイミングで接触してみようか。

 私は一旦出直すことにした。




 ようやく年末年始の長期休暇に入った。

 私は入口で見張る、どうやら一人は忌み子の女であるらしいので、目を見ればすぐに分かるはずだ。


 おー居た居た、何やら女の子が一人多いが、三人で話しながら出てきた。

 早速声を掛けてみたいが、話に割り込むのもな……


 声をかけるタイミングが掴めず、ただ後ろを着いていく。


 もしも彼らが私の元に来て成果を出せればどうなるだろうか……平民だと見下してくる学者やレナートを見返せるだろう。

 なによりレナートが救世主の様な扱いをされるのは許せん。誰も本性を知らないだけだ。

 かと言って何か抗議しても白い目で見られるのは分かっている。ならば私がそれ以上の成果をあげてやれば良い。


 考え事をしていると、彼らが家に入ってしまった。

 一度考え込むと、その思考の渦から抜け出せないのが私の悪い所だ。やってしまった。

 夕方まで出てこなかったら家に押し掛けるしかないな……


 杞憂だった、意外と早く出てきてくれた。

 しかしこれでは私はストーカーと思われないだろうか。

 人類の為にやっている事なのに、皆はそれを理解してくれないので困ったものだ。


 おや、例の二人がどこかへ行ったぞ。

 これはチャンスだ、少しお伺いさせてもらおう。


「そこのお嬢さん、ちょっといいかい? 私はこういう者なんだけど」


 研究所に所属している資格証を見せる。

 身分の証明をすれば不審者呼ばわりはされないだろう。


「はぁ……? 研究者の方が私になんの用です?」


「さっきまで一緒に居た二人、レナートさんの生徒だろう? 少し話したいことがあってね」


 その女の子は戸惑っている。

 やはり身分の証明を出来たとは言え見知らぬ人なのに変わりはない。もう一押ししてやる。


「なんというか……レナートさんはちょっと素行に問題があるだろう? 私が助けてあげようかと思ってね」


「あー……」


 どうやら心当たりがあるようだ。


「でも彼らはレナート先生を慕ってますからね……」


 何だと、あいつは生徒を洗脳しているのか?

 優秀な生徒を脅したり洗脳したりして研究の協力者にする、あいつならやりかねない。

 これは助けなくては。


「とりあえず私から伝えてみますね……」


 それは助かる。私からよりも、友からの方が話をしっかり聞いてくれるだろう。



 おや、例の女の子が手を振っている。

 話が着いたのだろう。


「お話は聞かせてもらいました。実は僕らもレナート先生には困ってましてね、貴方のお話に興味があります、何処かでじっくりお話しませんか?」


 どうやら女の子が説得してくれたみたいだ、素晴らしい。なのにどうして不安気な顔を浮かべているのだろうか。

 大丈夫ですよ、私はレナートさんと違ってしっかりしてますから、悪いようにはしませんよ。


「なっ!?」


 突然女の子の驚いた声をあげる、あれ、意識が――

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