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レナート先生は予想を遥かに上回る大躍進だった。
あれから周りの国から学者を集めて、実際に蘇生する所を実演したそうだ。
あんな人のどこにそんな人望があるんだと思ったが、腕は確かなので生物学者の中では有名らしい。
死んだ直後という条件はあるものの、初めて一度死んだ人間を生き返らせることに成功した。
たちまちその話は世間に広まった。
変人と噂され悪名高かったレナートは居なくなり、今ではすっかり名教授になってしまった。
学校での地位が上がる所か、様々な国から是非とも我が国に仕えてくれとスカウトされるようになり、学校からも全力で引き止められるようになった。
そんな注目を浴びるレナート教授は、『今は学校で教えている生徒が居るため、その子たちが卒業するまで待ってくれ』と国相手に言い放ち、生徒思いの優しい先生だとさらに株が上がったらしい。
僕の交渉の結果でそうなっただけなんだけどね……
学校関係者や以前から彼を知るものは、ホムンクルスにご執着な彼がそんな事を思いつくわけが無いと一蹴するが、世間で見たらそれはごく一部でしかない。
世間では瞬く間に有名人になってしまった。
そんな彼がいるパーチェ士官学校の生物学部は、先生が一言上にお願いするだけで簡単に生きた人間や遺体、研究に使える道具などが送られるようになった。
そのお陰で人間を使ったが沢山練習出来るようになったので、手術の練習をしたり各臓器の役割を調べたりと、有意義な時間を送れるようになったのだった。
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学校に入学して、一年が過ぎた。
この学校では週に一日休みがあったが、長期休暇はなかった。
だが、三年生が卒業し、入学試験もある年末年始には二、三週間の長い休みが与えられる。
学校も封鎖されていてやることがないので、僕らはツバキと一緒に家に帰ることにした。
寮で暮らす人には、実家に手紙を送れるようになっており、僕も度々親に状況連絡はしてあった。
ツバキやレナート先生と一緒にいることも知っているが、有名になってからは手紙を送ってないからなぁ、果たしてなんと言われるのだろうか。
「なぁ、一年経ったのにまだ教えてくれないのか?」
「えー、何かめぼしい成果まだ上げてないじゃん」
「ふん、面倒な奴め」
ツバキには研究の協力者として手術の腕を磨くことを頑張って貰っているが、まだ僕の目的や契約を結ばせた理由は教えていない。
それが少し不満なのか、小言や嫌味をぶつけてくる。
たまに良い意見も出るから、黙らせてはいないけども。
僕のために何か大きな貢献をしたら、教えると言ってある。
まぁこれは建前で、ツバキには解剖や手術などの行為に慣れる期間を与えたかったのが実だ。
どの道忌避感は抱くだろうが、レナート先生に毒された後の方が色々とやりやすいだろう。
そろそろ打ち明けても良いかもしれない。
まずは近くにあるツバキの家に寄る。
どうやらツバキの妹は無事だったようで、家族はツバキが貴族にされた事を知らないそうだ。
家に着けば家族が笑って迎え入れ、妹らしき人もツバキに抱きついている。
ごく普通の家庭だ。
僕らもツバキの友達として歓迎されている。
ただ、貴族が退学した事だけは伝えてもらう。
「あら、じゃあこれからどうするの?」
「あと二年で心変わりするかもしれないけど、とりあえずこいつらに着いて行くつもり、スミア王国に行くみたい」
「こら、友達をこいつらって言わないの。スミア王国って隣の?」
「うん。直接仕える訳じゃないけど、手伝いとかね」
「それはそれは……よろしくお願いしますね」
親が僕らに挨拶をしてくるので、僕らも丁寧に返す。
元々貴族の元に仕える予定だったので、行き先が変わっただけでそこまで大したことではないのかもしれない。
寧ろ友達と一緒になれて嬉しそうだ。
親はすんなり了承してくれた。
ツバキは後ろでこれでいいんだろ、と言いたげな冷ややかな視線を向けている。うんうん、それでいいよ。
これで一手打てる。
「おかえり、マークス! それにリンも、後ろにいる女の子は手紙に書いてあったツバキさんかしら? 少し元気がないようだけど」
家に帰ると母さんが笑顔で出迎えてくれた。父さんはまだ月末じゃないので居ないが、すぐに会えるだろう。
「……ツバキです、よろしくお願いします」
ツバキが珍しく頭を下げて丁寧に挨拶をする。
流石に相手が立派な大人ならば、しっかりした態度を取るのだろうか。
それとも"あんなこと"があったから、変な態度取りたくないのかねぇ。
母さんは友達を連れてきたことが相当嬉しいのか、張り切ってみんなの分のご馳走を作ってくれると言った。
ツバキは未だに元気が無いが、まぁどこかで立ち直るだろう。




