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業の軌跡 〜悪魔は不老不死を渇望する〜 (未完結)  作者: 橘 涼
〜士官学校編〜
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幼少期編と士官学校編、全体的に前半のテンポが悪く感じたので、次からはなるべく早めるようにします。

士官学校編の前半も、もうすぐ終わるのでお待ち下さいませ。

「退学、ですか?」


「あぁ、だからもう彼のことは気にしなくていい。自由にやって貰って構わない」


 例の貴族の従者から、貴族が退学したと言われた。


 従者はちゃんと伝えたぞ、と言いたげに念押しをし、そそくさと去っていった。


「やぁ、上手くいったみたいだね」


 物陰から二人の男女が顔を出す。

 彼らはマークスとリン、私の取引相手だ。


「……お陰様でな」


 彼の取引に応じた結果、貴族の情報を伝えたりはしたが、私のやることは一つの団子を食わせる事だけだった。しかも毒の入っていない。


 こいつらは一体何をしたんだ。

 もし貴族に何か手を出したら報復される。貴族にはそれ程の力があるし、報復しないと面子にも関わる。

 

 そんな貴族を退学させてお咎めなし? 普通ならば有り得ない。なんなら従者は私に怯えているようにも見えたぞ。


 あの団子には何の意味があったんだ? 裏で二人が動いていたのか?

 分からない、聞きたいが詮索しない約束だ。



「――その取引に応えてくれるなら、あの貴族を抹消しよう。多少ツバキにもやってもらうことはあるけどね」


 あの時のマークスの言葉を、未だに一語一句欠かさず覚えている。


 こいつは今まで、レナート先生と同種で人体を弄るのが好きな狂人だと思っていた。

 リンとよく話していたのは、幼い頃からこの狂人と一緒に居たせいで歪められたのだろう、という同情心からだ。


 だが今ではこいつらが恐ろしい。

 平民なのに平然と貴族を抹消出来るなど聞いた事がない。


 レナート先生は狂人だけど、考えていることが口や行動に現れているから何となく考えていることは分かる。

 だがこいつらは全く分からない。


 普段は普通の人間に見えるのが怖い。

 研究の時に多少本性を表すものの、食堂で食事をする時は普通の人間にしか見えないのだ。

 あの貼り付けたような笑みと言い、人の皮を被った何か別の生き物に見える。



 しかしながら貴族は居なくなり、報復される予感もない。どんな形であれ、私たちの家庭に平穏を与えてくれたのは事実だ。


 後悔はしていない。

 だが、気分は晴れない。

 将来私はどうなるのだろうか。


 思わず俯いて手に目を向けると、そこにはリンとお揃いの指輪が嵌められていた。



―――――――――――――――――――



「素晴らしい御手際です、ご主人様」


「学校でそれは……人が居ないからまぁいいか。ありがとうリン」


 無事ツバキを手駒にすることが出来た。


 僕に逆らえなくなったり不利益な行動を取れなくなる……実質奴隷になるようなもので、断るのが普通なのだ。

 だがツバキは家族が心配で盲目的になっていた。当然その隙を見逃すわけが無い。



 本当は三割くらいの確率でツバキは死ぬ見積りだったが、上手くいったようで良かった。


 二割はツバキに毒を仕込まれたと喚き、領主がそれを信じて報復するパターン。一割は領主が忌み子になった原因を解明しようとし、ツバキに足が着くパターンだ。


 どの道手を出したのはツバキだし、僕らは無関係を装えるからほぼほぼノーリスクだ。


 表向きは退学となっているが、貴族社会で忌み子が居るなんて知られたらタダじゃ済まない。恐らく監禁されているか、もう死んでいるかだろう。

 少なくとも表舞台に出てくることは無い。


 まぁ居なくなった人のことを考えても仕方ない。ツバキは生物学部のみに所属して居るので、僕らよりも存分に時間をかけられる。彼女には魔法の知識を付けたり、手術の腕を磨いてもらおう。


「彼女にはこれから手術や研究の手助けになってもらおう」


「身体は鍛えさせないんですか?」


「うーん、彼女は運動神経良くないから、今更鍛えてもそこまで意味が無いと思うんだよねぇ。中途半端になるくらいなら学業の方に集中させようと思ったけど……リンは気になることでもある?」


「自衛出来ないのが心配ですね。ご主人様の手駒があっさり死なれたら困ります」


「自衛かぁ……」


 リンは僕が今後命が狙われるような事をするだろうから、そう言ってるんだよな。

 リンの考えも理解出来る。


 現状手駒の確保は難しいから死んでしまっては大損失だ、特にツバキは貴重な研究職。


「うーん……」


 難しい問題だなぁ、リンも良い意見を言ってくれる。


「まぁ一旦学業に専念しようか。自衛が必要な時が来たらその時考えよう」


「なるほど、分かりました」


 ツバキはたまたま関わる機会も多かったし、弱みを持っていてそこにつけ込めた。だが他に魅力的な人は一人を除いて居ない。


 ここでの人材確保は十分かな。


 ツバキも指輪で契約を結んだとはいえ、あまりに抵抗されると面倒だ。

 今の所過去に色々やった事はツバキには隠しているが、知ってしまえば僕らにも嫌悪感を示してくるだろう。

 なるべく協力的になって欲しい。


 ツバキにはもう一手必要だ。



 除いた一人はレナート先生のことだ。先生も確保したいが、一応は貴族という立場あるものなので保留にしている。


 学校という自由に動きずらい空間で、ツバキ一人を手に入れただけでも上々だろう。


 元々の目的は、鍛えることと研究を進めることだ。

 邪魔者も排除できたし、そのまま頑張っていこう。

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