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業の軌跡 〜悪魔は不老不死を渇望する〜 (未完結)  作者: 橘 涼
〜士官学校編〜
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感想やいいねも頂きました。

誠に感謝です。


士官学校編も前半は大人しめですが、長い目で見守って頂けると幸いです、

 本格的に授業が始まった。

 一位を取ったので変な人に絡まれるかなー、と思って居たが、そんなことは無かった。

 忌み子には変に絡まないのが一番だと思われているのだろうか、大抵の人は無視している。


 平民だと忌み子が働く様子を見ることもある。一部の人は慣れてるのか、僕やリンに普通に接してくれる。

 まぁ仲良くする気は無いんだけど、敵が増えないのはいい事だ。


 何はともあれ平和ならばそれに超したことはない。

 今は授業に集中だ。




 身体を鍛える授業は新入生全員集まってやるらしい、広大なグラウンドに集められた。何が始まるのだろうと心構えをしていたが、ひたすらに走らされるだけだった。


 先頭で走る先生とそれを追いかける沢山の生徒、周りでは他の先生が遅れそうな生徒に檄を入れている。思ったよりも脳筋でスパルタだなぁ……

 貴族様相手にも同じことをやっているのだろうか、やっていたら相当度胸があるぞこいつら。


 まぁ確かに剣を振るうにしてもまず体力と筋肉がなきゃ話にならない。理屈は理解出来るが、僕らはもう狩りで鍛えちゃったからなぁ。


 段々後ろの方から力尽きて脱落した者が出てくる。先生が一人一人に水を渡したりストレッチを指示したりと、アフターケアはしっかりしている。

 スパルタではあるが脳筋では無いようだ。


 前を走る先生を見るが呼吸が全く乱れていない。体力には自信があったが、井戸の中の蛙だったのかもしれない。


 授業も終盤へと近づいていき、脱落者も半数近くになった。

 研究職を目指してる人や女性から落ちるのかな、振り返ると畑仕事を元気に頑張ってそうなエネルギッシュな男ばかりだ。

 隣を走るリンは女性なのに流石だなぁ、辛そうだけど頑張っている。


 すると前にいる先生がペースを上げてきた。

 うへぇ、地獄かよ。




「はぁ……はぁ……みっともない所を見せてすいません。ごしゅ……マークスさん」


「いやいや、リンは女の子だから相当頑張った方だよ。それに僕達の鍛錬がまだまだ甘かったと知れたのは良い事じゃないか」


 あれから僕は最後まで先生に食いつけたが、リンは脱落してしまった。僕も息は切らしてるし汗が止まらない。

 前を走っていた先生との格の違いを感じる。


 僕たちの身体能力はで良い方だが、それはあくまで子供の中でだ。大人に比べたらまだまだだと再認識させられた。


 知識面での勉強はレベルが低かったが、運動面はかなりレベルが高い。これを機にちゃんと鍛え直すぞ。


 将来は国に仕えるのだ、騎士ともなにかトラブルがないとは限らない。下手をすれば敵に回す。

 子供だからといって甘える訳にはいかない。


 自分が未熟だと知れたのは良い事だ、前向きに捉えていくぞ。次は学部をどうするかだな。




 さて、専攻する学部を決める訳だが、事前に調べる中で一つ、ここには必ず入ろうと決めていた所がある。


 レナート先生が担当する生物学部だ。


 生物学部は本来は、様々な生き物の体内構成や臓器の役割を調べる学部だ。

 不老不死の研究の助けになりそうな予感がする。


 それにレナート先生の主な研究対象は人間で、人工的な生命――ホムンクルスを創造するのが目標らしい。


 入ると奇異な目で見られることにはなるが、元々忌み子と行動してるしそんな変わらないだろう。


 去年最後の生徒が卒業し、誰もいないのも好都合だ。三人で好きな研究が出来る。人が多いとどうしても遅れている人に合わせる必要がある。



 ということで選択期間である今、どんなもんか様子を見てみようとレナート先生の研究室へと向かう。

 

「レナート先生、失礼します」


「あぁ」


 どこか素っ気ないが返事を貰ったのでドアを開ける。

 中に入るとレナート先生が、動物の死体を切り開いて色々弄っている。


 うわぁ……想像以上にヤバい人だ。歓迎する気が全く感じられない。部屋入ったら動物の死体見せつけられるとかそりゃ誰も来ないわ。


 僕はそういう行為や人間で実験することが忌み嫌われる、不味いものだと知っている。ただ不老不死のためにやむを得ず、両親などから隠れてやっているのだ。最低限の良識くらいはある。


 だがこの人は違う。

 そんなことを理解しようともせず、好奇心に従って研究者という地位を使って堂々とやるのだ。


 出来れば関わりたくないんだが、彼の研究内容や知識には興味がある。研究だけに限れば気も合いそうだ。


 と思案しているが、その間リンはこちらを黙って見つめるだけだし、レナート先生も全くこちらを見ず動物ばかり見ている。


 えぇ……とりあえず話しかけてみようか。


「あのー、すいません。レナート先生の研究に興味があるんですが……」


 するとギョロりと目だけを動かしこちらを見つめる。

 リンにも気づいたのか二人を交互に見る。


「本当に?」


「冷やかしでは無いですよ、僕も何故生きているのか、生命とはどんなものか知りたいです」


「あなた入学試験で首席だった人ですね。その考え方、好奇心、実に素晴らしいですよ! やはり賢い人は同じ考えのようだ、これだから学校の馬鹿共は……」


「え、えぇ……僕らもそう思います」


「久々に同志に会えましたね、それも二人。じゃあ早速こちらで手続きしておきますね」


 勝手にあなたの同志にしないでください。思わずそう言いたくなるが心の中に押し留める。

 生命に興味があると言った途端に態度が変わったな。

 言動はちょっとあれだけど、まぁ慣れるだろう。


 何はともあれ生物学部に入ることは出来た。

 これでレナート先生の元で、合法的に色々研究が出来るぞ。他の学部はどうしようかな。


「ところで後ろの女性の方は本当に人間ですか? 一瞬ゴーレムやホムンクルスかと思いましたよ」


「普通の人間ですよ」


 まぁ基本無表情だし、僕の指示に従っているだけだからな、見間違うのも無理はない。


 本来子供は、親や友達など周りとの関係から、生き方や心構え、アイデンティティが形成されるが、僕は敢えてリンが誰とも関わらないようにした。

 親の記憶も幼少期で殆ど残ってないので、人との触れ合いの中で知る感情も殆ど知らない。


 リンの心の中には、僕に対する感情しかないのだ。

 歪んでいるが、僕にとっては理想的だ。


 まぁそんな訳で、レナート先生もリンの異質さに気づいたようだが、深く詮索はしてこなかった。

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