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僕は母さんに人生相談をした月末、両親に話し合いをしようと呼び出された。リンは一人で狩りに行かせて、二人が待っているリビングに向かう。研究者か冒険者か、どちらを勧めてくるか覚悟していたが……
「マークス、学校へ行く気はないか?」
「へ? 学校?」
久々に父さんと話すような気がする。父さんは月に五日くらいしか戻ってこないし、戻ってきても俺は狩りに行ってたからな。いや、この人今なんて言った?
「学校って、あの学校?」
父さんが重々しげに頷く。
「マークス、パーチェ士官学校に行く気はないか」
むむむ? 思わず下を向いて考え込む。
―――パーチェ士官学校
この国には義務教育なんてものはない。情報の収入源は本を読むか親に教わるなどの人伝しかない。
ただ、例外でこの国には一つだけ子供が学ぶ場、学校がある。
この世界は貴族が領主として表立って内政をしたり戦争をしたりする、格差社会だ。
将来貴族になるような子供が馬鹿だったり弱かったりしたら、内政が上手く行かなかったり、戦争の時に負けてしまう。
各家に教育を任せても差が生じてしまうので、貴族の子を集めてまとめて教育するわけだ。
貴族の子に生まれたけど次男だったりと、正式な領主になれなかった者はその学校で学んだ知識を活かして、そのまま騎士や研究者、官吏になることが多い。
基本的には貴族のみが行くところだ。
ただ平民にも有能な人材はいるということで、貴族や研究所長等のお偉いさんからの推薦状があれば、平民でも受け入れられるようになっている。
当然入学する前に試験や審査はあるし、授業も貴族と平民で分けられてはいるが。
なるほど、貴族が平民を推薦し、平民にも上等な学習環境を与えてやる。その見返りとして学び得た能力を、自分のために使ってもらうって訳か。
要はコネである。
あれ? じゃあ俺のことは誰が推薦するんだ?
思わず顔を見上げる。
「……父さんはな、パーチェ王国の隣にある小さな国――スミア王国に仕える騎士だ」
―――騎士
武官の中でも、国王に見出されて国王直属の護衛となった人の事を言う、国の中で一番強い立ち位置だ。
思わず口が開く、確かに父さんが何をしているのか気になっては居たが、あまり深くは考えていなかった。
父さん、騎士だったのか……
そりゃ毎月どこか遠出しに行く訳だ、王様を守るんだから。というかだったらなんでここに住んでいるんだ。父さんは貴族だったのか? 平民から実力で成り上がっていったのか?
色々疑問が湧き出てくるが、父さんが国に一目置かれるほどの実力者ということだろう。敵に回すと絶対不味い。
推薦者はスミア王国の騎士ということになるのか?
「僕に将来、スミア王国に仕えろって言う意味ですか?」
父さんに問いかけるが、表情は揺らがない。
「……マークスは賢いんだな、俺ははっきり言って仕えて欲しいと思っている」
「あなた!」
母さんが驚いたように声を上げるが、それでも父さんは揺らがない。真剣だ。
「そもそも俺たち二人は元々スミア王国出身だ。伸び伸びと自由に暮らしたくて引っ越したが、生まれ育った故郷を愛している。マークスには分からないかもしれねぇが、俺は国を守りたいんだ」
「だからこそマークス、お前は賢い。その頭脳や能力を、国のために活かしてみねえか? 推薦状は国王が出してくれる。余計な心配は不要だ」
母さんは明らかに困惑している。
父さんの独断なのだろう。
「学校に行くけど、仕えないということは――」
「それはダメだ、国王の信頼を裏切ることになる。学校に行くからには、しっかりと仕えてもらう」
バッサリ言葉を切られる。えぇ……
「学校に行ってから何かトラブルあったなら、その時はその時だ。こちらでどうするか考える」
「それと卒業してから成人するまでの間に二、三年あるがそこは好きにしていい、仕えるのは成人してからだ」
……。
揺らがない、国を想う強い意志を感じられる。それでも無理強いをしないのは、子を想う優しさからなのだろう。
母さんも黙って見守っている。
「……リンはどうするんですか」
「バラバラにさせる気は無い、従者の位置付けで二人一組で学校に送ることも出来る。ただし試験に落ちる時や退学、卒業する時も一緒だがな。奴隷の首輪は商人に頼んで外してもらおう」
「忌み子だから当然嫌がられるだろうが……貴族とは分けられるから大きなトラブルにはならないと思う。スミア王国は人が少ないからな、忌み子でも大歓迎だ」
リンは賢いから問題はないだろう。首輪を外すのか、まぁ指輪があるから問題ないんだけど、外す前に魔法かけ直しておかないと。
学校でしか学べないことも多いだろうし、魅力的ではある。ただし将来が制限される。国に仕えても自由に動けるだろうか。考え込んでいると、父さんが更に加える。
「今のお前がバカ真面目に国のために働くのが嫌なのは分かる。だが文官として仕事場の近くに住めば、自分の時間をある程度は確保できるはずだ、どうだ?」
一応時間は確保できると。
貴族や政治関係に足を突っ込むと、ドロドロの陰謀が蠢いて居たりと面倒臭そうなんだよなぁ……
というか試験があるのに合格して卒業する前提で話してるな。僕が何をやらかすか分からんぞ。
ただこのまま平民として、ひっそり研究を進めても、集まる情報に限界はある。
難しいな、すぐには決められん。
「俺のエゴなのは分かっている。無理強いはしない」
「……」
「行きます、僕とリンの推薦状をお願いします」
幼少期編はこれにて終了です。
次話からは士官学校編になります。
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