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結局人間は二人とも死んでしまった。衰弱死だ。
1ヶ月も持たなかったが、有意義に使えた自信はある。
ただ、この村の辺りでこれ以上人を確保するのは難しい。ここら辺の森の動物や魔物も調べ終わったし、そろそろ拠点を移すべきかもしれない。
一番可能性があるのは冒険者だ。
冒険者になれば他の森にも自由に出入り出来るし、金もより確保出来る。
他の冒険者を誘拐しても、魔物に食われたと思われてあまり怪しまれないように思える。
ただ問題があり、自分達だけが使える拠点が見つかるか怪しいという点や、自分よりも強い人がいる点だ。
僕らも子供の割にはかなり強い方とはいえ、大人には敵わないだろう。そもそも体格差が違う。
うーむ、研究者路線で進めるのもありなんだよな。
正式な研究者になれば最先端の情報を仕入れることが出来る。ただ未成年で正式な研究者にはなれないし、ジェイのように弟子入りしようにも伝手が無い。
やはり成人しないと出来ないことが多い。こっそりやるのもいいが、バレない自信がない。
今は僕を監視する目が母さん位しかいないけども、今後は増えてくるだろう。どの道人を誘拐するのだ。
なるべく目立たないようにはしたいが、忌み子のリンを連れている地点で無理だ。かといって手放す訳にも……
というか最終的には母さんの許可が必要だ。親とは子供の存在を守ってくれる貴重な存在。
リンを受け入れてくれるし今の関係を壊したくはない。
うーむ、ここは人生相談として母さんに聞いてみるか……
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マークスが最近森の奥深くで何をやっているが、聞いてもジェイさんに見せていた研究の内容が返ってくる、はぐらかされてるように思える。
マークスは全然私たちを頼ろうとしない。子供なんだしもっと親を頼ってくれてもいいと思う。
変なことしていたら怒りはするが、考え無しに取り上げるような真似はしない。
その事を伝えてもマークスの言動は変わらなかった。
マークスは何がしたいのかしら……
ある日、マークスから相談を受けた。
どうやらここの森にいる動物や魔物の研究を一通り終えたらしい。
この先には冒険者や研究者、様々な道があるが、どれを通ればいいのか分からないそうだ。
相談を受けている身でこんなことを思うのは良くないかもしれないが、正直安心した。
彼は毎日朝早くから夜になるまで森へ出掛けていた。話す機会は減っており、ご飯も一緒に食べなくなった。マークスは狩りに出掛ける時楽しそうにしているし、変なことをしている確証もないから止めることができなかった。
ふと目を離した隙にどこかへ行ってしまいそうだった。
でも、今こうして頼ってくれている。
マークスに色々あれど、大事な一人息子なのだ。
親としてしっかり相談に乗ってあげなくては。
幾つか考えはある。ラースとも相談したいからラースが帰ってくるまでは、いつものように狩りをして月末まで待っていてと伝えておいた。
「――ということがあったの」
ラースが帰ってきたので、マークスが狩りに出掛けている間に、魔物の襲撃や、マークスからの相談等今月あったことを伝えた。
「いい事じゃねぇか? 村のために戦ってくれたり、困ったことがあったらマーシャに頼ってたりしてるいい子じゃねぇか。あんたはいつも心配していたからな」
中々私たちを頼らず、どこか大人びていたマークス。
その癖私たちに何も言わずに、隠れて何か研究をしているし、考えていることが分からない。
そう考えると今回、相談されたことはいい事のように思える。ラースの言うことはごもっともなのだ。
「ていうかマークスのやつそんなに強くなってたのか、これは一度手合わせ願いたいな」
ラースは豪快に腕をぶんぶん回す。
全くこの人は……強い人が居るとすぐに勝負を挑みたがる。息子でもそうなのか。
普段はいい人なのに、この好戦的な性格だけは何とかならないだろうか……
だけど何となく気が和らいできた、ラースと話していると落ち着く。
「戦うのもいいけどまずはマークスの将来よ、どうするの?」
「俺と一緒に仕えればいんじゃねぇか? マークスだって相当賢いんだろう? お前がそう言うくらいだ」
昔、息子も騎士にさせたいと言っていたが、今でも本気なのだろうか。
「マークスはまだ未成年よ、そんなこと出来るわけないじゃない。それに将来マークスがそうなるとも限らないわ」
「じゃあ将来仕えるってことで説得してみるよ、ひとまず学校に入れるのはどうだ?」
「学校ね……それなら……出来るの?」
「ああ、任せとけ。そろそろマークスに父さんが何をやっているのか打ち明けてもいいだろ」
学校ならば、人も多く変な研究は中々できないだろう。
だけど施設はちゃんと整っているし、研究熱心な今のマークスには合っているかもしれない。
「そうね、そうしましょうか」




