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 ジェイを殺した。

 ジェイは足元に転がっており、微動だにしない。


 動物や魔物は何度も殺してきたが、人間は初めてだ。前世でもそんなことをした事は無い。


 もっと動揺すると思ったんだがな……意外と呆気なく殺せた。まあ一度死んだことがあるから、多少の価値観はズレるのは仕方ない事だろう。

 念の為僕が出来なかったら、リンに手を下すように命じていたが、杞憂だったようだ。


 そんなリンは僕の後ろで、ジェイを殺す一部始終を見守っていた。


「お疲れ様です、ご主人様」


「あぁ、リンは大丈夫かい?」


 大丈夫だろうな、幼少期から僕と居たせいかこいつも価値観がズレている。

 いやでも人が死ぬところは見たが、自分から手を下したことは無い、どこかで試してみるか?

 指輪の魔法で恐怖心などは抑えられるはずだ。

 ……っといかんいかん、また思考が逸れている。


 まずはこの状況を何とかしないといけない。

 一旦返り血を洗い流そう。




 さて、以前ジェイを殺すと僕らが真っ先に疑われると言った、ならばどうすればいいか。

 魔物が殺したことにすればいいのだ。


 だが、ただ単に母さんや村人にジェイが魔物に殺されたと言っても、疑いの目は消えないだろう。なので実物を持ってきてやる。


「ジェイ」


 あるケージの中に一匹の魔物がケージ越しにこちらに向かってこようとしている。こいつは比較的温厚で、動物の肉を食べるので簡単な躾も出来た。

 こいつにはとある躾を仕込んである。ジェイと呼べばこっちに来るようにしてあるのだ。


 そんな魔物から核を取り出す。

 そしてそれを、この森有数の強力な魔物の抜け殻に埋め込む。コイツは自分よりも大きく、倒すのに時間が掛かった程だ。


 そうすれば、あら不思議。

 ジェイと呼べばこっちに全力で駆けつけてくる可愛らしいペット……一般人から見ればおぞましい魔物の完成だ。

 本能的に強さの違いを察しているのだろうか、依代が強くなっても襲ってくる気配が無い。こちらが襲えば当然逆上するだろうが。


 あとはこいつに動物や魔物の肉を食わせて、血をつければ、立派なジェイを殺した魔物の誕生だ。

 ジェイの死体は動物や魔物の死骸が積まれている所に埋めて隠して置く。汚いがこれはまぁ仕方がない。


 魔物を村の近くの森の浅い所に誘導しておく。


 夜になるまで魔物の近くで待ち、村人が近づいて気づきそうになったら、その村人を気絶させて拘束し、リンに隠し拠点まで運ばせる。相手は戦闘などした事の無い油断した一般人、それくらいなら造作もない。

 最終的に日が暮れるまでに若い男を二人回収できた。


 この人達も魔物に食われたことに出来るだろう。


 そして暗くなってきたら、散歩や畑仕事、各々行動していた村人も家に戻るようになってきた。僕もそれに乗じて何食わぬ顔していつも通り帰宅する。


 後はジェイが居なくなって皆が心配するはずだ、誰かがジェイと叫べば良いだろう。



――――――――――――――――――――



「マークス、リン、おかえり」


「ただいま母さん」


 マークスがいつも通りの返事をする。

 マークスの様子をよく観察するが、変わっている所は見られない。ジェイは上手くやったのだろうか。


 夜になれば今までのようにジェイが報告に来てくれるはず、それまでにマークスを寝させよう。

 幸い彼らはかなりの早寝早起きの生活になっていて、変に夜更かしすることも無いので勝手に寝てくれる。

 健康なのはいい事だ。


 二人は用意していた料理を食べ終わって、いつものように本を読むと言って自室へ行く。

 相変わらず勉強熱心だ、私に似たのだろうか。


 忌み子のリンを買ったことを最初は猛反対していたが、こうして一緒に行動している所を見ると、マークスの理解者になってくれているのかもしれない。


「はぁ……子育てって難しいわね」




「え、ジェイさんの行方が分からない?」


「あぁ、マークスなら何か知ってるんじゃないかってな」


 どうやらジェイさんが帰ってこないらしい、他に数人の村人も消えていると、夜に村人が報告に来ていた。

 村人の横から外の広場を見れば、ジェイのお父さんが心配そうに嘆いている。


「マークスを呼んできます」


 マークスが村人に問い詰められるが、別行動してるので分からないと言う。

 それはそうだ、マークスはジェイが尾行していることを知らないのだから。

 ジェイさん……魔物に襲われてしまったの……?


 もし仮にジェイさんを仕留める程の魔物が居るとしたら、迂闊に探索は出来ない。それにもう外も暗い。


 ジェイのお父さんが乱心して、息子の名前を叫び出す。ごめんなさい……きっと私が無理に頼んだから……


「え?」


 森の方から呻き声が聞こえたような気がする。

 行方が分からなかった人達だろうか。

 でもそんな人の出す声じゃない、もっと重々しくてまるで魔物のような――


「魔物が出たぞ!」


 森から何かが走り出してくる。

 暗くてシルエットしか見えないが、かなり大きい。


 不味い。

 魔物が村まで来たら一団となって挑んで、討伐していたが、魔物に詳しいジェイさんが色々指示を出してくれていたから出来たことだ。

 だが今は居ない、寧ろ居るならあの魔物の腹の中だ。


「母さんはそこで待っててください、僕らが倒します」


「マークス!?」

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