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十二歳になった。
月日が経つのが早すぎる……
だが研究は順調に進んだ。人を確保するための下準備もしている。
そしてなりより、オリジナルの奴隷用の魔法が完成した。魔法具も当然作れるようにした。
本にも書いてあったが、オリジナルを魔法を作るのはそう珍しいことでは無い。努力すれば誰でも出来る。
元は主人の命令は絶対遵守、人を傷つけない、自死しない、くらいの魔法しか込められていなかった。
そこから人を傷つけない項目を無くし、僕にとって不利益な行為をしない、感情をある程度抑制する、指輪を最優先で守る、という項目を追加した。
奴隷に大きな感情は不要だからね、流石に痛みとかは感じて欲しいから抑える程度だけど。
ただ、どうしても両者の同意を得ないと出来ない――契約の要素を無くすことは出来なかった。リンも奴隷になる時は奴隷商人と契約を結んでいたらしい。
まぁ脅せばいいだけなのでそこまで問題ではないだろう。不意打ちで指輪を嵌めてはい奴隷、なんて出来たら楽ではあったが。
後は魔法なので僕がやったように、解明されたら解除されてしまう。適度に監視が必要だろう。
早速魔法具にしたいので商人に指輪を幾つか仕入れてもらう。
商人とは沢山研究や狩りに使える物を買い、魔物の討伐証明を買い取ってもらう、立派なビジネスパートナーだ。
当然僕のような子供がここまでやるのに違和感は覚えているが、商人にとって僕は金の成る木だ、あまり深く詮索はしてこない。
ちなみに指輪にしたのは、指輪の魔法具がよく使われており違和感を抱かれないからだ。冒険者が奥の手として魔法が込められた指輪を沢山装着していたりする。
指輪を幾つか貰ったので、カモフラージュ用に防護の魔法をかけた指輪を二つ作り、一つにはオリジナルの奴隷化の魔法をかける。残りは保留だ。
何を買ったかは母さんに報告義務がある。ちゃんと防護の指輪をプレゼントとして渡し、違和感を持たれないようにしないとね。
「リン、じゃあこの指輪を嵌めて契約しようか」
「はい、どうか最初の奴隷にしてください、ご主人様」
……最初の奴隷ねぇ。
それは暗に後々新たな奴隷が来ることを察しているのだろう、他に奴隷が来ても変な嫉妬はしないってことか。
「ははは……リンは本当に賢い、奴隷として買い取って良かったよ」
「光栄です」
そんなやり取りをしながら首輪の魔法を解除する。解除の仕方も当然研究した。解除しても首輪をそのままにしてやれば見た目は変わらないので悟られることはない。
今ならリンが僕を襲うことも出来るが、絶対にそんなことは無い。それくらい信頼関係が築けたことが喜ばしい。
リンが指を差し出し僕が指輪を嵌める……なんだか結婚式みたいだ。無事契約も終わり、真の手駒が出来上がった。指輪も幾つかストックがあり、後々出番は来るだろう。大事に取っておく。
うっかり事前に掛けていつでも使えるようにしておく所だった。そんな指輪が見つかったらただでは済まない。嬉しいのは分かるが油断はするな。
後々研究の内容次第では過激なこともするかもしれない、その為にも自分だけの武器を増やさなければ。
残る課題は人の確保のみになった、良いペースだ。
成人するのはまだ先だが、早めに村を出て冒険者になってもいいかもしれないな。
ちなみにこの国での成人は十八歳だ。国によって異なるが、十八歳前後になって心も身体も成熟すると言われている、ほとんどの国はそれくらいだろう。
さて、次は人の確保だ。
計画を進めていこう。
あれから父さんが帰ってきた時に、二人に防護の魔法がかかった指輪をプレゼントした。
父さんは素直に喜んで受け取ってくれた。母さんは喜びよりも驚きが勝ったのだろうか、驚いた顔ような顔をして受け取っていた。
なにか不味いことでもあったのだろうか、商人に聞いてみるとどうやら僕の年齢で魔法具を作れるのはおかしいらしい。大人の魔法の研究者が作るようなものだとか。
果たして元から素質があったのか、努力の成果なのかは分からないがなるほど、かなりの能力が必要なのだろう。そりゃ母さんも驚くはずだ。
商人には定期的に魔法具を提供するという条件で誰にも言わないようにしてもらった。完全に信用は出来ないが、少なくとも利害は一致している、迂闊に漏らすことは無いだろう。
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今は表向きの拠点、洞穴で魔法に関する本を読んでいる。ジェイが今日もこっそり着いてきているのだ。毎月しっかり着いてくる。随分と律儀な事だ。
いや、言動が荒いだけで根はいい人なのだろう。自分も非常に親切にして貰った。
「ご主人様、ジェイが何やら怪しい動きをしています」
索敵の素質でジェイの同行を観察しているリンがそんなことを言う。どうやら拠点の周りを探索しているらしい、それも丁寧に。
……今までそんなこと無かったよな? 確認するが、初めての事だと言っている。ジェイが何かに勘づいたか?
いや、ちゃんと研究内容や本の内容も見せてるし、そこまで深く疑うような人では無いはずだ。
単なる気まぐれで動いているだけかもしれない、一旦狩りに行けばジェイも着いてくる、洞窟から引き離すか。
「ご主人様、着いてくる様子が見受けられません」
不味いな、いつもなら着いてきていた。これは絶対何か吹き込まれたな。
そういえばそうだ、僕はジェイに魔物に関する色々を調べている様子を見せていた。いつ魔法具を作ったんだって話になるな。
やらかした、魔法具を作る様子をジェイに見せておくべきだった。母さんに隠し事をしていると勘づかれたな。
後悔や反省してもしょうがない、まずは対処しなければ。
幸いにも準備は整っている。
「リン、少し早いが計画を実行しようか」




