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15話 誤解

俺が先生に拒絶されている間に、オッターは休職に入ることになった。精神を病んだからという噂が立っていた。根本的な解決には至っていないけれど、しばらくの間は安心できそうだった。



4の月1日目の放課後。先生から拒絶されることを覚悟で俺は医務室を訪れた。この日は俺の16回目の誕生日だった。


それは一つの仮説を確かめるためだった。それが事実であれば、俺は後戻りができない領域に足を踏み入れることになることを理解していた。

正直、何が起こるかはわからなかった。それでも俺は先生ともう一度向き合いたかった。せっかく家族以外で尊敬できる人に出会えた。先生は俺を変えたキッカケを作ってくれた人なのだ。

簡単に手放したくはなかった。



「先生。話を」

俺は医務室に押し入った。

イレーネさんが俺を止めようと近づいてきたがそれを先生が止めた。

「嫌です。貴方様と話すことはありません。これ以上深入りしてはいけませんよ。お帰りください」

先生は相変わらず目を合わせてくれなかった。

「僕は、あなたのことがもっと知りたい」

「教えることなんてありません。私はごく普通の一般平民ですからね」

「あなたの正体に気づいたとしたら?」

俺はそれでもまっすぐに先生を見た。

先生は一瞬だけ俺を見てまた視線をそらした。

「正体も、何も」

「ここではちょっと言いづらいというか、その、、」

俺はちらりとイレーネさんの方を見た。

イレーネさんは一瞬ニヤリとしたかと思うとポンと手を打ち、保管庫から薬草を持ってきまーす!と言い、すごい速さで部屋を出ていった。

「ちょっと、イレーネさん!!」

先生の声はイレーネさんには届かなかった。



再び静かになった室内で、俺は徐ろに口を開いた。





「先生は、氷の精霊様なんですよね?」





俺は真顔で一週間考え続けた結論を述べた。

それはリズニアに浸透している宗教の一つであり、シェルドントの国教でもある精霊教の教典に出てくる精霊の一人のことである。仮説を元に図書館で開いた簡易教典には美しい黒髪に美しい顔立ちをした氷の精霊の姿が載っていたのだ。その姿がどことなく先生に似ていたことも確信の材料となった。



しばしの沈黙が流れた。


「えっ?」

先生は驚きを隠せていなかった。


これは正解だったのかもしれない。

だとすればやはり俺は引き返せないところまで来てしまったのだ、そう覚悟を決めた時だった。



「えっと、、その、、ごめんなさいね。そんな大したものじゃないの」

先生はそう答えるとお腹を抱えて笑い出した。


「えっ?!ち、違うんですか?!氷柱が急に現れるなんて、それ以外に考えられなくて!!」

俺がそう聞くも、先生は笑いが止まらず目尻には涙まで浮かべていた。


段々と恥ずかしくなってきた。


"黒歴史を作ってしまったのか!!!"


俺は恥ずかしさから今すぐにここから逃げ出したい衝動に駆られた。


先生はごめんなさい、ちょっと、止まらなくて!と言いながら笑い続けていた。


「そ、そんなに笑わなくても!」

俺は少し涙目になりながら先生にそう訴えた。

恥ずかしすぎてこの場から消え去りたかった。

人生の中で一番恥ずかしい誕生日になりそうだった。



よく考えれば精霊様などいるわけがない。

なぜ俺はそこまで確信が持てたのだろうか。



「ふぅ、、ごめんなさい。久しぶりに大笑いしてしまったわ」

「酷いです。俺、結構深刻に悩んでたんですよ?!本当に先生が精霊様だったらどうしようって!」

「坊や、高等部生にもなってそれはないわ、、と言いたいところだけれど、100%間違いとは言えないの」

先生はそういうと真っ直ぐに俺を見つめた。その視線に不覚にも胸が高鳴ってしまった。

俺はとにかく何かを言わなければと思い咄嗟に思いついたことを言った。

「え?じゃあ、精霊様の子孫とか?」

「えっと、精霊様からは離れてもらってもいいかしら?ちょっと場所を変えましょうか」


先生はそう言うと自身の机に戻り、紙片に万年筆でサラサラと何かを書きイレーネさんの机に置いた。そして、机の引き出しから古い鍵のようなものを取り出した。


俺は先生に続き医務室を出た。医務室の奥隣、突き当りの部屋の前で先生は足を止めた。


「ここは今は使われていない実験室ですよね。物置になってるとうかがってたのですが」


先生は俺の言葉など気にせず、古いドアの鍵を開けた。




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