14話 拒絶
翌日熱は下がったものの、ブルーノからの反対もあり俺は学校を欠席し、そのまま休暇日を迎えた。
その間もずっと一日中先生のことを考えてしまっている自分がいた。
オッターが言っていた秘密の2つはわかった。先生の過去とオッターとの関係。これは先生の生い立ちに関係しているらしかった。買い取ったという単語からして先生はオッターの父に金で買われ、虐待されていたということらしい。先生は多分二十代前半だろう、そこから十数年前ということは先生は下手すると十代にも満たないうちにそんなことをされていたということだ。
「ひどい」
俺はベッドの上でポツリと呟いた。
オッターから過去をバラすと脅され仕方なく彼に身を委ねたのだろう。
先生からオッターを遠ざけなければまた同じことになることは容易に想像できた。
俺はオッターを学園から追い出す術を考えた。
実家の力を使えばそれは容易に叶うだろう。しかし、ブルーノも勘繰ってるところをさらに刺激するわけにいかない。学園に報告したところで父さんに知られ厄介なことになりそうである。子どもたちが大好き過ぎて少々荒いこともしてしまうのだ。
こうなったら俺個人の力でどうにかするしかないのだ。力でねじ伏せるか、理詰めでいくか、どちらにせよあの後どうなったのかを先生に聞かなくてはいけない。
どうしたら先生はまた笑顔を向けてくれるのだろうか。
あの切れ長な目で見つめられたら俺は理性を保っていられるのだろうか。
段々と自分の思考回路がまたまずい方向に進んでることに気が付き焦った。
俺は一体どうしてしまったのか。熱のせいで本当におかしくなってしまったのだろうか。
◇◆◇
3の月22日目の放課後、元気になった俺は医務室を訪れた。
オッターは2日間学校を無断で欠席しているという噂がたった。
先生が何かしてしまったのだろうか。もしかして、殺して、、いや、そんなことは考えてはいけない。
ドアのノックに応えたのはいつもの緩い声ではなかった。
「いらっしゃい」
先生に笑顔はなかった。そしてろくに目も合わせてくれなかった。
「あの、先生」
「熱が下がったのね、良かったわ。あら、今日は怪我してるわけじゃないのね?忙しいから帰ってくださるかしら、リット様」
先生はドアを開け退出を促してきた。
「先生」
「ほら、他の生徒が来ますので」
「先生、待って」
俺は何も言えないまま追い出されてしまった。
次の日も、その次の日も追い出されてしまい、3日目からはついにイレーネさんが入り口で対応するようになってしまった。先生はついに俺と顔を合わせてくれなくなったのだ。
「メーヴェさん、何度もすみません。先生がどうしてもお会いしたくないというもので」
黒髪に暗い茶色の瞳をした中年の女性、看護助手のイレーネさんは何度も俺に頭を下げた。
「こちらこそすみません。イレーネさんにまでご迷惑をおかけして」
「私がいなかったあの時、何かがあったんですよね?先生、何も話してくれないもので」
イレーネさんはそう言うと心配そうに小さくため息をついた。
「俺からもちょっと、、すみません」
「いいえ。先生は、メーヴェさんのことを大切に思ってるからこそ距離を置いてるのだと思います。あまり気を悪くしないでください」
俺はそれに何も返せず、ペコリと頭だけ下げてトボトボと医務室を後にした。
俺は悶々とした日々を過ごした。俺は先生に嫌われてしまったのだろうか。今までならばそれで構わないと思えていたのだろうが、今は先生に嫌われたくないという気持ちが心を埋めていた。
それと同時に先生の3つ目の秘密について考え続けていた。
それこそが先生が俺を避ける理由なのだとそう直感して。
そして俺は一つの仮説にたどり着いた。
それを確かめるために、図書館に足繁く通うことにした。




