怪異と二人
―調査16 怪異と二人―
時は旅行中に遡る。
「うーん。」
そのとき煉瓦は困っていた。
音楽室、家庭科室、物置部屋、廊下、プール、そこの怪異は何度か退治した。しかし、6つめと7つめがどうしても見つからない。
時間が経ってしまったせいか、最初に退治した怪異が復活してしまっている。何度退治しようとも、元凶を断たなければまたそうなるだろう。
「やっぱり7つめが怪しいけど。正体がいまいち判然としないんだな。」
煉瓦は頭をかく。
「やっぱりちゃんと確かめるには、進くんをもう一回怪異に近づけるしかないか。」
煉瓦は7つめについてある仮説を立てていた。
それは「進」が怪異自体であるか、それを持っているという仮説である。
その根拠は、彼が居るときには「怪異に出くわしていない」ということ、そして「ここに来ることを提案した張本人」だというものだ。
この事実に出会えたのは殆ど偶然と言ってもいいだろう。陰陽決死団が結成された当初、煉瓦は「七不思議」の退治という大仕事を任され、少し浮かれていた。だからこそ、危険を承知で上の人間に頼み込んで校舎への立ち入り許可を下ろしたのだ。
あのときの気まぐれがまさか、こんな発見になるとは思わなかったが、これはチャンスだ、事実を確かめるには絶対にもう一度、彼らをここに呼ばなければいけない。
「それには、誰かさんが出した、立ち入り禁止を解除して貰わないと。」
煉瓦は後ろをついてきている少女の方を見た。少女はそれに気づくと、びくりと反応する。
「な、なによ! あいつらをまた入れるって言うの? 危険よ! 」
少女は目を背けた。
彼女とは怪異退治に回っていた途中で数日ぶりに出会った。ターゲットが同じなら、こうやって祓い屋が出くわすことは珍しくないが、彼女との出会いに煉瓦は非常に驚いた。
なぜなら、出会ったときの彼女は真っ赤なプールで、溺れてじたばたしていたからだ。
「君のほうがよっぽど危険なんだな。」
「な! 私を馬鹿にしてるの!? 」
彼女は指摘されて頬を膨らませる。
煉瓦は困りながらも彼女に、
「そうじゃないけど、一人の行動が多いのは感心しないんだな。 まだ君は研修中なんだし、ちゃんと僕と一緒に………。」
と諭そうとしたが、それは逆効果だったようで、
「嫌よ! 私は強いんだから、お守りなんて必要ないの! 」
と言って彼女は屋上に駆け出してしまった。
「あ、ちょっと。」
煉瓦は慌てて彼女の後を追う。
彼女は煉瓦と同期で、実力も確かなのだが、そのドジっ子気質から、いまだ研修を抜けられていない。煉瓦の心配の種なのだ。
煉瓦は彼女に、
「屋上はなにも居なかったから! 」
と叫ぶように声をかけるが、
しかし、その呼び掛けはやはり通じず、彼女はどんどん階段を駆け上がって屋上に出る。
煉瓦はやっとの思いで彼女に追い付いて、同じく屋上に立った。
「はぁ、はぁ。ねぇ、いなかったでしょ。」
彼女は一点を凝視したまま動かない。
「どうかした? 」
煉瓦は彼女が見つめる先に目を移した。
しかし、その先には何もない。
首をかしげる煉瓦に、彼女はやっと口を開いた。
「ねぇ、ここの怪異って、飛び降りよね。」
「あ、うん。そうだね。」
煉瓦は頷く。
彼女は険しい表情で告げた。
「確かに見たわ、向こうの校舎にいた。」
「え? 」
煉瓦は今見てもいないことが分かっていても、もう一度彼女の視線を追った。そして、確信を込めて呟いた。
「やっぱり進くんが原因なんだな。」
続く。




