赤点ひゃっほい
-調査14 赤点ひゃっほい-
旅行の翌日、
俺たちは七不思議6つ目の「屋上から飛び降りる影」を求めて、行き慣れた廃校舎に踏み込んだ。その日は煉ちゃんもいた。
しかし、結果は言わずもがな、空振りで、特別に気になることもない。
強いて気になった点を挙げるとすれば、進がその一つの怪異を調査しただけで「七つ目」には調査も言及もすることなく、次の予定も用意して来なかったことだろうか?
(本当は「七つ目」のことなんて分かってなかったんじゃ無いのか? いや、でも。)
と俺はそんなことを考えつつ、教室の窓から、段々と照度を下げていく夕陽の色を眺めていた。
(でも、進がテストの予想問題くれないなんて、ちょっと様子おかしかったよな。)
そこに、机を叩く音。
「おい、補習中に放心か? 山城、お前、いい度胸だな。」
その音の原因は、補習担当の教師が俺の机を叩いたことだった。本来不要な残業を強いられているせいか、教師はいつもよりピリピリしている。俺は直ぐに頭を下げた。
「えっと、すみません。」
しかし、それを教師に見られることはなかった。何故なら…………。
俺の声と重なるように、校舎の外から耳を裂くような悲鳴が聞こえ、反射的に窓に目を向けると、人影が地面に向けて落ちていくのが見えたからだ。
「え。」
俺は自分のテストの点数が29点だった(ぎりぎり赤点だった)のを見たときよりも、青ざめる。
教師は冷静さを失いながらも、職務に従おうと教室を飛び出した。
一人教室に取り残された俺は、じっとしていれば良いのに、怖いもの見たさなのか、それとも一種の義務感なのか、窓から身を乗り出して下を見た。
「誰も、いない、のか? 」
下には誰も居なかったし、人に見間違えるような物は落ちていなかった。
俺はさっきの記憶を引きずりだす。
確かにあれは「人」影だった。
「見間違い、じゃ、ないよな。」
そうしているうちに、下にはまだ学校に残っていた何人かの生徒や教師が、「なにかが落ちた」はずの場所に集まってきていた。
-七不思議「屋上から飛び降りる影」
昔、理由は不明だが、生徒が屋上から飛び降りた。しかし、その遺体は見つからず、彼が落ちたあとには-。
集まった彼らの輪の中央から、じわりじわりと赤いものが染みだして、大きな液だまりが作られる。俺は、はは、と短く笑った。
「『落ちたあとには、飛び降りが事実だと告げる、血だまりだけが残った』、まじかよ………。」
血だまりを囲む人の中には、蛍子もいた。距離があるし暗いから、その表情までは見えなかったが、彼女が一歩、また一歩と後ずさり、逃げるように走り去ったのだけは間違いなく見えた。
「七不思議は、移動する………? 」
俺は下の騒ぎをただボンヤリと眺めた。
続く。




