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ハードモードだよ

―調査13 ハードモードだよ―


俺たちは計画通り旅館に戻ってきた。

時間はそろそろ16時、移動で疲れているのに、ここから探索を始めるのは流石に嫌だ。

進もそれぐらいは分かっているのか、中央にあった菓子入れのふたを明け、部屋の備え付けの急須きゅうすで3人分のお茶を淹れている。

俺はそれが「集まれ」という言葉の代わりだということをなんとなく察して、蛍子を呼びにいく。真面目な進のことだ、大方今日のまとめがしたいとかそんなんだろう。


そして、全員が集まったところで、案の定、今日のまとめが始まり、


「さて、あの言葉の意味を考えるとするか。」


話はそこに行きつく。

あの言葉とは勿論、ファイルのなかにあった、


―皆が探す七つ目、ずっと側にあるのに―


という赤黒い文字のことである。

俺は暖かいお茶を飲んでだいぶ冷静さを取り戻していたので、あんなものに恐怖を覚えたりしない、笑いながら進に言う。


「あれって、あなたの後ろでずーっと見てるよ的なよくあるやつだろ。あんなイタズラしてなにが楽しいのかねー。」


しかし、進は俺の言葉を受け止めながらも、やはりあれには興味があるようで、


「真偽の程は分からないが、あれが手がかりである可能性は高い。」


と神妙な顔をしている。

そこで進が黙ってしまったので、俺はなんとか話を続けようと蛍子に話を振った。


「なぁ、蛍子はどう思う? 」


「………え、あ、イタズラ、だと思う。」

蛍子は慌てて俺に賛同した。


それに少し遅れて、進の声が飛んでくる。


「とにかく明日、現場にいこう。」


進が広げた地図には赤い丸がつけられた校舎の位置がはっきりと示されていた。

ぶっちゃけ嫌な予感がするし、行きたくないが、進を納得させるには行くしかないんだろう。



翌日、結局予定通り俺たちはその丸の中に入った。


「うげー。確かに似てんなー。」


校舎は俺の学校の廃校舎と同じく、木造の古い建築物で、今にもつぶれそうなほどボロボロだった。しかし、さんさんと降り注ぐ日差しと辺りを囲む生き生きとした草木のせいか、その表情はどこか柔らかく感じる。

進は早速、


「校舎に入るか。」


と言って俺の肩をぽんと叩き、蛍子に目配せをした、しかし、下駄箱のところまで行くと、それが不可能だと直ぐに分かった。


校舎の床はすっかり崩れ落ち、頭上にぽっかりと空いた穴の中には、外と同じ青空が見えている。


「まぁ、予想はしてたけどな。」


俺はため息をついた。

それには落胆よりも、安堵が込められている。俺はファンタジーゲームは好きだが、現実に呪いなんて子供だましを信じてる訳じゃない。でも、まぁ、そういう不気味な雰囲気は苦手だ。勿論、怖い訳じゃないからな!


そんな脳内会話をしている俺の横で、蛍子は下駄箱を指差す。


「何足か上履きが残ってるみたい。」


蛍子が指差した先には、確かに下駄箱に納められた靴が何足かある。急に廃校になったわけではないらしいから、きっと思い出だとかでわざと残して行ったんだろう。


その証拠に、上履きの中には古い缶バッチや、昔流行った小物類が納められている。


しかし、その靴の中に一つだけ、思い出の品ではないだろう、しわくちゃにされた手紙が入っているものがあった。


「ん、これは? 」


俺はなんとなく気になって手紙を広げて見る。勿論、覗き見が趣味な訳じゃないぞ、不可抗力だからな!


手紙の判読はとても難しかった。

だが読めない訳ではない、そこには、か細い文字でこう綴られていた。


―ごめんなさい、許して下さい―


そして、その上から罵詈雑言が強い筆圧で書きなぐられている。文字の書き方が違うものが幾つもあるから、何人もで書いたのだろう。


俺は手紙を渡して、進に訊ねた。


「なあ、この学校ってなんで廃校になったんだっけ。」


進は苦い表情で手紙に指を滑らせながら、淡々と答えた。


「肝だめしをした生徒が行方知れずになって、見つからなかった。それを聞いた父兄は自分の子供をやめさせた。生徒がいなくなったこの学校は自然に閉校された。」


俺は寒気を感じた。


「なぁ、七つ目を探すのは止めないか? 」


そんな俺に進は、


「呪いが怖いのか? 」


と笑みを浮かべる。

………俺の性格を分かってのことだろう。

俺は罠だと分かっていても、こう返すしかない。


「そんなわけねーだろ! 」


俺はなにやってんだ自分。とか思いながらも、せめてもの抵抗として、


「それより、七つ目の場所は分かったのかよ。」


と進に食いかかる。俺は脳内で、進め、これには言い返せまい、ぐっふっふ………とか悪魔の笑いを浮かべていたのだが、意外にも進は平然と答えた。


「ああ、正体が分かった。」


「へ? 」


俺はその答えに焦って、


「いや、でも校舎は立ち入り禁止だし。」


と付け足す。

しかし、これにも進は笑顔で答えた。


「大丈夫だ、昨日、許可が下りた。」


「はあああ? なんで!?」


俺の言葉はもう、脳内に留まってなかった。


「どうしてこうなんの! 生まれるときにハードモードを選んだの!? なに考えてそうしたの、生まれる前の俺! 」


「界記くん、ゲーム脳があふれでてる。」


蛍子はドン引きしていた。



この旅の一日目、

宿に戻るために、一人、ファイルを片付けに来た蛍子は気付いた。


「え、うそ。」


ページをめくった覚えは無いのに、開いているページは他のページにあったような学校新聞に変わっている。蛍子は慌ててファイルの中を調べるが、やっぱりあのページは何処にもない。


「そんな、まさか………。」


思わず固まる蛍子。

そこに外から声がする。


「おーい、大丈夫か? 」


ファイルを返す場所が分からないとでも思ったのか、界記が此方に向かって叫ぶように話しかけて来たのだ。

その言葉におどろいて、慌ててファイルを閉じようとした蛍子は、不意に開かれていたページの学校新聞の記事が目にする。

―生徒自殺、原因は不明-



―続く。

最近文字数多くてすみません。

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