ネットのが早い
―調査12 ネットのが早い―
「でもまぁ、そこまで分かってるなら、別に公民館で資料捜しなんてしなくていいんじゃないか? それより、せっかくここまで来たんだから、その廃校舎に行った方がいいだろ。」
定食屋から公民館への道すがら、俺はあくび混じりに進に話しかけた。
「私もそんな気がするけど。」
蛍子はそんな俺の言葉に頷く。
しかし、俺たち二人が現地直行を提案しても、進の心は変わらないようで、
「そういうわけにはいかないさ。七不思議の七つ目を知りたいからな。」
と言って、地図が描いてあるらしい手元の手帳に目を落とす。進に言われて、俺は首を傾げた。
「七つ目? それは書いてないのか? 」
その横で、蛍子も目をぱちくりさせている。
「そういえば、この記事には書いて無いね。」
疑問そうに進の方を見ていた俺たちの視線に気づいたのか、進は一旦足を止めて俺たちの方に向き直る。
「ああ、七つ目は“知った者は呪われる”と言われていて、誰も知らないんだ。」
「へぇ、なんかありがちな話だな。でも、それって元より七つ目なんて無いって可能性が高いんじゃないか? 」
俺はいかにも興味がないですよ~という顔をしながら、進の言葉を笑う。しかし、それでも次の進の言葉は何処か自信に満ちていた。
「いや、あるさ。」
俺と蛍子は顔を見合わせる。
蛍子も少なからず、彼の有りすぎる自信に困惑しているようだ。俺は浮かべた笑顔を苦笑いに切り替えて、進に言う。
「ここまで全部偽物なのに、よくそんなこと思うな…………。 」
すると進は、俺の目を真っ直ぐ見据えて、
「次を信じないで、前には進めないだろ。」
といきなりの正論を述べた。
俺はその余りに自信ありげな言葉に、
「いや、そうだけどさ。俺らは一向に進んでないからな。」
とぼそぼそツッこむのが限界だった。
※
そして、なんやかんやで今に至る。
「やっぱ、そんな噂が書いてあるやつなんてないぞ、ネット掲示板とかで探した方が早いんじゃないか。」
俺は疲れたアピールのため、大の字で畳の上に寝転がる。そんな俺の横に進は足早に歩いてきて、しゃがみこみ、俺の顔を覗きこむ。
「あったぞ。」
進の手にはクリアファイルがあった。
そしてその言葉の後、早速全員がファイルを囲むように、談話室に集まることになる。
ファイル内には、進の言う通り七不思議関連の学校新聞が挟まっていた。進はそれをぺらぺらとかなりの早さでめくっている。読んでいるというよりは、探しているという様子だろうか。
それから少しして、進は手を止める。
見ていた俺たちは進の顔を少し見てから、そのファイルに目を落とした。
そこには、それまで挟まっていた学校新聞とはまるで違う雰囲気のページがあった。
殴り書きされた赤黒い文字。
文面は、
―皆が探す七つ目、ずっと側にあるのに―
それを見た俺は、というか俺たちは間違いなく血の気が引いた。
「こ、この赤いの血、じゃないよな。」
自分でもわかる。俺の声は確実に震えていた。進は三人の中では一番冷静で、文字の臭いを確認する。
「無臭だ………。」
三人は沈黙した。
この場所がかなりの田舎なせいか、辺りは恐ろしいほどに静かだ。進がぽつりと呟く。
「とりあえず、帰ろうか。」
俺たちは進の呟きに急いで乗っかった。
「そ、そうだよな。」
「長居はしたくないし………。」
それから急いで宿に帰ろうとしたが、開いたままのページを閉じて例のファイルを片付けなければいけないことを思い出す。
「私、しまってくるね。」
蛍子は直ぐに談話室に駆けもどる。
そして、二分ほど後に公民館の入り口で待っていた俺たちのところに戻ってきた。
「じゃあ、かえろうか。」
蛍子はそう明るい声で告げて、宿に向かう道を俺たちが歩き出すのを待たずに歩き出した。俺はそんな蛍子に驚きながら、慌ててその後を追い、そして気づいてしまった。
なぜかその表情は凍りついていることに。
続く。




