初めての会話
娘の彩が来た。まあそれからどうなったのか。それも気になるが今回は綾波颯音と花園麗華の出会い、いやいや初めて喋った会話の話をしたい。
前にも似たようなことを言っていたが颯音は別に麗華が苦手なわけではない。
むしろ好印象、気になるあの子ぐらいに位置なのだ。
別に颯音がマゾなわけではない。
どうしてなのか。
それは麗華と初めて話した時に遡る。
「どうして俺ばかりこんな目に遭わなくてはいけないんだよ!」
この時、俺は過度の虐めの間最中であった。今は昼休み。俺は屋上にいた。
まったくいつもそうだ俺ばかりこんな目に遭う。同じように勉強やスポーツをやっても弟に負け、そして親にもっと頑張れと弟と比べられる。
どんなに頑張っても先には弟がいて褒められるのはいつも弟だ。そんな毎日が嫌になって家から飛び出したのはよかったが結局ダメだった。
俺は何がやりたかったんだ。分っていたことじゃないか。立場が上の奴に逆らってもこうなるだけだって。だけど見捨てることもできなかったんだ。
今思えば後悔している。助けたことをではない。もっと根本的なことである。
どうして俺が虐めるのを助けた友達に虐めを受けなくてはいけないんだよ。
つまり友達になる相手を間違えたのだ。
「ちょっとそこのクズ野郎!」
不意に後ろから声を掛けられる。
振り返ると彼女がいた。
長い髪に整った顔、モデルもビックリ。
そう俺のクラスメイト、花園麗華である。
「そこでウジウジされると、お弁当が不味くなるでしょう。他の所でやってくれるかしら」
不機嫌そうな口調で言われるが、
「お前には分からないだろ! ……弱者の気持ちが。どんな思いをして毎日暮らしていると思っているんだよ!」
この時ばかりは怒鳴り返した。
まあ今思えば八つ当たりもいいところである。彼女からは虐められてはいない。
虐めを見て見ぬふりをしていれば同罪だとは俺は思わないからだ。
「ええわからないわ。理解する気もない。あなたは顔を背けているだけだわ」
麗華は当然ように呟いた。
「どうゆことだ? 何が言いたい?」
「あなたは顔を背けているだけ、そこに居続けている。つまりは何もしていない。あなたのお友達のことを聞いたわ。虐めからあなたに助けてもらった友達の話。その友達はあなたに助けてもらいながら、あなたを虐めているらしいわね。まあその友達は虐めに加わることで自分の身を守った。要するにさ、あなたに虐められることを押し付け逃げたわけだ」
「なんだ、結局は俺をバカにしたいだけか」
「いやいや、違うわ。話を聞いていたのかしらクズ野郎。その友達は逃げ出したの。そこから動いた。つまりは行動したわけ。それが正しいかどうかはさておき、何もしないよりはまっしだわ。こんなところでウジウジするぐらいならとっと家に帰ればいいわ」
不愉快そうに息を吐き、麗華は弁当を片づけ屋上から立ち去ろうとする。
俺は彼女の話を聞き終え思った。たしかにそうだ。俺は何もしていない。
この時、俺の何かが変わった気がした。
俺も何かしなければならない。言い訳だけばかりしていてもダメなんだ。
当たり前なことだけど、言われなけば分からなかった。
俺は屋上から立ち去ろうとする後ろ姿に声を掛けた。
「何か、悪かった。ありがとな」
ふん、と鼻を鳴らし麗華はどこかに行ってしまった。
そんなことがあり、口が悪いが根は優しいことを知ったわけだ。
もしあの時に彼女に声を掛けられなければたぶん俺はダメになっていただろう。
だから彼女のことは嫌いにはなれなかった。
そして未来では夫婦になっているわけだがどう説明すればいいのやら。




