修羅場
「あなたは誰のかしら?」
目を覚めてからの麗華の第一声がそれだった。
これは不味いことになったなと颯音はその言葉で確信した。彼女も自分と同じように過去から来たんだと。
大体、颯音自身も状況があまり呑み込めてない。だが、まだ希望が残っている。それは颯音が虐めの被害に受ける前の時代から来たという可能性だ。
「俺は綾波颯音だよ。念のために聞くんだけど、君はあや、いや違うか。花園麗華でいいんだよね」
たどたどしい口調で颯音が訊くと、麗華は不愉快そうに眉をひそめる。
あっ。終わった。最後の希望が……。今の反応で分かった。これは虐めを受けている
真っ最中の反応だ。
「今、あなたは俺は綾波颯音って言ったわよね。たしかにあのクズ野郎と似ているわ。まず、ここはどこなのかしら。そして、どうしてあなたみたいなクズと一緒にいるの?」
「…………え――っと、それは……どうしてでしょうね」
さすがに自分と君は結婚していて、子供も一人いるんだよ。なんてことを言える颯音ではない。どうすればいいのだろか。そんな颯音の心情などお構いないで麗華は質問を続けてくる。
「どうしてそこで口ごもるの。怪しいわ」
「怪しくないぞ、ここは俺たちの家だ!」
もうどうにでもなれと思い、颯音は言うが、
「もしかして、あなた。私を誘拐して、監禁しようとしているのね!」
麗華はそんな事実を認めるわけもなく叫び始めた。
「警察よ。警察。訴えてやるわ」
そんなことを言いながら、リビングを出ようとドアを開けようと近づいた。
すると、ドアが開いた。麗華はまだ開けていない。なら、いったい誰が。まあ、この家に今いるのは三人だけだ。ならいるのは当然……。
「お母さん、うるさいよ。……起きちゃったよ」
まだ眠そうな瞳を擦りながらそこに立っていた。
そう、娘の彩だ。
「どう説明すればいいんだ」
頭を片手で抱えながら、気怠そうに呟いた。




