朔——もう一つの、ざわつき
朔が気づいたのは、花火の夜から三日後のことだった。
蓮と涼太と三人で、学食にいた。
別に珍しいことじゃない。最近はよくある光景だ。涼太がうちのグループに混ざってきてから、三人で飯を食うことが増えた。
朔はいつも通り黙って食べていた。
蓮と涼太はいつも通り喋っていた。他愛ない話だ。バイトがきついとか、講義の教授が面白いとか、週末どこ行くとか。
朔はそれを半分聞きながら、定食の魚を崩していた。
そのときだった。
蓮が笑いながら、涼太の肩を叩いた。
「お前ほんとそういうとこあるよな」
涼太が、一瞬だけ——固まった。
ほんの一瞬だ。コンマ二秒くらい。すぐにまた笑って、「うるさい」と言った。
でも朔は見ていた。
涼太の耳が、赤かった。
朔は魚の骨を箸で除けながら、もう一度涼太を見た。涼太はまた普通に喋っている。蓮の話に笑っている。
でもさっきの、あの一瞬。
朔には見えてしまった。
あ、そういうことか。
頭の中で、静かにパズルのピースが嵌まった。
涼太が五月に言っていた言葉——いるだけで、ちょっと変な感じがする相手——の、相手が誰なのか。
朔にはもう、わかった。
帰り道、涼太と蓮が前を並んで歩いていた。
朔は少し後ろを歩きながら、二人の背中を見ていた。
蓮が何か言って、涼太が笑う。
涼太が何か言って、蓮が笑う。
朔はそれを見ながら、静かに息を吐いた。
ばかだな、二人とも。
どっちがとは、言えなかった。
どっちも、だから。




