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ギャーヴェの父

 翌朝の私はレガルドやアリスちゃんと一緒に遊ぶことにした。

 

「……」

 

「……」

 

 二人は向かい合うとなんとも微妙な顔をしていた。

 

 ──レガルド・マルデリアの方は私が友人だと紹介すると訝しげな顔をした。アリスベリアがエノールをいじめたことがある一人だと知っているからだ。


 ──アリスベリア・レディカーナもまたレガルドに対して訝しげな顔をした。個人感情として嫌いなのである。エノールの立場では縁談相手としてこの上ないことは理解しているが、合理と感情は別なのだ。


 二人はさながら犬と猿、猫と犬、水と油のように相容れない存在だったが、エノールという界面活性剤によってギリギリのネットワークで結びついた。これ以上原子間距離が離れればどちらかが分解してしまう。

 

 二人はエノールに連れられて、男子達と混ざりながら遊んだ。アリスベリアの方はもっとエノールに女の子らしい遊びをさせるべきだとレガルドを筆頭にした男子達に抗議し、男子達もまたエノールは付き合ってくれるんだと平行線な話をし始めた。

 

 エノールは『女の子らしい遊びって例えば?』といって、アリスベリアは考えていなかった質問に咄嗟に考えて『釣りとか……読書?』というと、そんなのは集団でする遊びじゃないとアリスを小馬鹿にし始めた。

 

 そこにエノールが仲裁に入り、アリスを日陰者と笑った男子達をエノールが怒ったことで場は収まった。そもそもの原因はエノールの存在によるものだが、誰もそれに気づかないし、エノールも棚上げしている。

 

 そこで折衷案として森での散策が行われたが、結局男子達と混ざったエノール達のそれは散策というより探検となった。ウサギの屠殺を経験した彼らは生きていくことの大変さと辛さ、業の深さの一端に触れて一歩大人の階段を歩んだのだ。

 

 蛮勇の彼らは女の子達にかっこいいところを見せようと躍起になっていたが、慣れない森の道ではいつもよりも体力を奪われて、最後には歩き方を知っていたレガルドと身のこなしに一定の評価があるエノールが先頭になった。なんの知識も無いのにその場に順応するエノールの適応能力とセンスはやはりピカイチである。

 

 そもそもが馬と一緒に生まれ、剣を手にするために育ち、動物の身体を知り尽くしているのではないかと言わしめるのがエノールである。そこに千年に一度の釣りの才能まで加わっている。出鱈目なエノールの戦闘センスは生まれる時代が違えば戦うジャンヌダルク(戦乙女)になっていただろう。

 

 こうして三日目が終了し、貴族の子弟達は帰路についた。昼頃には学園に着いて解散すると、エノールは臨時営業している食堂に立ち寄ったのだが、そこでまたもレガルドとアリスベリアが声をかける。今度は二人それぞれが同時に声をかけてきたのだ。

 

「……」

 

「……」

 

 蛇とトカゲ、またも二人のガチンコ対決が勃発する。

 

 二人に囲まれながらの食事にエノールはご満悦だったが、言葉の水面下ではレガルドとアリスベリアの殴り合いが行われていた。先に仕掛けたのはアリスベリアである。

 

「……レガルド殿? 私『達』はこれからお茶会をするので、ご遠慮して(・・・・・)いただけますか?」

 

 公爵家の令息に遠慮してもらうなど、法衣貴族の娘の言い草ではない。アリスベリアはレガルドが三男なので有効だと考えた。

 

 対してレガルドも笑みを浮かべながら返す。

 

「俺たちは縁談相手・・・・なんだ。悪いがただのお友達(・・・・・・)の君に用はないよ」

 

「あらあら、殿方が無粋ですわね。縁談は本来『何の問題もなければ』順調に進むと言いますのに、何をそんなに焦っているのですか?」

 

「君こそ焦ってないかい? まるで『何かの失点』を取り返したいようだ」

 

「……」

 

「……」

 

「……二人とも、仲良いねぇ」

 

 エノールは二人の様子に気づいた上で、本心でその言葉を呟いた。言われのない話に二人は大いに食いつく。

 

「仲なんてよくない!」「仲良くない!」

 

「仲良いねぇ……」

 

 犬と猿はハモってしまったことを相手のせいにした。お前のせいで勘違いされるじゃないかと。

 

 エノールにしてみれば、嫌いあっていてもこうして一緒にご飯を食べれて、言いたいことを言い合える二人は十分に仲良く見えた。エノールの見てきた世界は色んな意味で……仲が良くないと関わりさえ持たない。そんな世界だ。

 

 結局、エノールは三人でお茶をして、三人でデートをした。お茶はアリスに対して重点を置いて、デートの時はレガルドに比重を置いた。

 

 二人もエノールの気遣いに気づいていて、彼女が三人で仲良くするために行動しているのを察したから、相手の番になってデレデレしている時もあまり横槍は入れなかった。

 

「今度会った時は覚えてなさい!」

 

「ふん、どこまでも咬ませ犬だな」

 

 アリスが『しゃー!』と蛇のように威嚇して去っていく。エノールはレガルドと話があると言って、女子寮に帰っていくアリスを見送った。

 

「ばいばーい、アリスちゃーん!」

 

「ばいばい、エノールさーん!」

 

 レガルドは二人の様子を見て、ああだこうだ言いつつも友人はいいものだと再確認する。

 

「レガルド、お待たせ」

 

 エノールはレガルドの手を取ってニコリと笑うと、自分の手を引っ張って歩いていく。彼女の可憐な仕草に心を射止められて、呆然としたレガルドはワンテンポ反応が遅れるのだった。

 

「今日も暑いねー」

 

「ああ」

 

 レガルドがぎゅっとエノールの手を握りしめる。すると、エノールもまた答えるように握った。

 

 レガルドはエノールの横顔を見て、その可憐を自分で守らねばと決意する。彼女が大事にしたくないのを承知して、ギャーヴェの件について話し始めた。

 

「父上に手紙を送った。きっと王宮派閥内でも問題になる」

 

 地方列強の立場となる伯爵以下領主貴族達に対して、中枢集権の立場となる王宮派閥は公爵家・侯爵家を中心に組織されている。

 

 一見して後者のほうがまとまっているように見えるが、その実態は領主貴族達と変わらず一枚岩ではないために様々な政治競争が繰り広げられていた。

 

 女を使った色仕掛け、捨てられた手紙を利用した文書偽造、使用人を利用したスパイ工作や貴族同士で行われる三枚舌交渉、実の娘達を使った政略結婚など、騙し協調し合併し吸収し没落させる。今回の事態もその火種になるだろう。

 

 レガルドは俯いて申し訳なく思っていたが、隣にいるエノールは笑っていた。

 

「そっかー、しょうがないよねー」

 

「……」

 

 エノールはこのことを予期しているようだった。レガルドが怒りを見せていた時には宥めていたが、喧嘩を買うと決断するとエノールはそれを受け入れたのだ。

 

「……嫌じゃなかったの?」

 

「何が?」

 

「政争になるのが」

 

「うーん……だって、そんな顔してたでしょ?」

 

 人差し指でほっぺたをさされる。なぜこの少女の指先爪先の仕草、その一挙手一投足はこうまでも可憐なのだろうか。気を抜いていると何度もどきりとさせられるようである。

 

 クスクスと笑うエノールの姿が、レガルドにはダイヤモンドのようにも思えた。思わず手を伸ばしてしまって、その手が頬にあてがわれたことに自分で戸惑った。

 

「この手はなナーニ?」

 

「っ……あの──」


 エノールは手からすり抜けて、するりとレガルドと距離を詰める。

 

 首元にキスされて、終わった後にレガルドはようやく反応した。

 

「……」

 

 レガルドは、小さな令息はあまりのことに呆然となっていた。その様子を見てまたクスクスと笑うのだけれど、すぐにエノールは言う。

 

「まだこれで我慢よ」

 

「……」

 

 いつの間にか少女は自分の手からも抜けて、女子寮がある方向で手を振っていた。

 

 遠くにいるエノールに手を振って、その後ろ姿を見ながらレガルドは首の感触を確かめる。

 

 『唇はまだ……』ということだろうが、十二の子供に首のキスは少々刺激が強かった。

 

 

 

 

 

 学園は翌日から始まった。初日は午前授業でエノールも芸事の授業しかできなかったが、そのあとの時間をふんだんに使って執務と勉学と自己研鑽に力を入れた。

 

 久しぶりの風呂に羽を伸ばしつつ、そろそろと微睡に耽ろうとしていたがそこにバルターが現れる。

 

 こんな夜更けにどうしたのかと確認してみれば何やら速達で封書が届けられたとか。速達の封書は届いてすぐに開けなければならない。速達で郵便された印を見つつ、エノールはその中を開けた。

 

 ──ギャーヴェの学園生活も再開された。


 彼女は侯爵令嬢であるため、まだ取り巻きは離れていなかったが、自分たちの周囲の空気感は確実に悪くなっていた。エノールに対して先に手を出してしまったのである。

 

 まさか、現場を抑えられるとは思わなかった。手を出す時点で大声を出されることは考えたほうが良かったのに、何の対策も無しに手を出して教師に見つかったのだ。周囲の生徒からは無様だと嘲る視線が刺さっていた。

 

 それに対してエノールの教室ではアリスがエノールと懇意にするようになってから、周囲はその姿を認めてあからさまに態度が軟化させていた。

 

 その様子にアリスは辟易しているようだったが、エノールはそれをよしとした。中には本心で仲良くしたいと思ってくれている人がいるのを知っていたからだ。

 

 対照的なエノールとギャーヴェの状況だが、ギャーヴェ本人もエノールと扱いが真逆なことに気づいてさらに恨みを募らせた。食堂に行く途中でばったり会えたレガルドには冷たくされ、学園に彼女の居場所はなかった。

 

 取り巻き達はギャーヴェの侯爵家という立場を惜しんで離れていかなかったが、それは浅慮だったかもしれない。なにせギャーヴェは自分の父からこっぴどく叱られることになるからだ。

 

 突然、ピレライン侯爵が学園に来た。父が突然訪問してきたことにギャーヴェは驚き、きっと自分を助けにきてくれたのだと思った。

 

 自分も客間に呼び出され、中に入るとそこにはエノールとレガルドの姿もあった。不安になるギャーヴェだが、そこで父から罵られることになる。

 

「こんの馬鹿娘!」

 

「っ……!」

 

「何度問題を起こせば気が済む! 私がどれだけ黙認してきたと思ってるんだ!」

 

「お父様……!」

 

「ピレライン侯爵、まずは落ち着かれては如何ですか?」

 

 自分の父に対してエノールは生意気な口を聞く。彼女も叱られると思って──ギャーヴェは父の信じられない言葉を聞いた。


「そうだな……」

 

 その光景にギャーヴェは閉口した。あの父が息巻く中でエノールに諌められ、素直に従っているではないか。

 

 言葉が出ずその場で立ち尽くすギャーヴェに、父は自分の隣に座るよう命じた。

 

「この度は、娘がすまなかった……!」

 

「よろしいんですよ、侯爵。思春期の娘というのは往々にして御し難いものですから」

 

「よくありません。侯爵、エノールは私の縁談相手なのです。今は学生の身で互いを知る途中ですが、現状でもエノールは公爵家の関係者。父にもエノール次期伯爵には恩があると伺っております。それを如何お考えか」

 

「誠に申し訳ない。何でしたら即刻この娘を除籍処分といたします」

 

 ギャーヴェは父の言葉に肺が潰れるようだった。


「示談の条件は娘さんとの謝罪でしたよね?」

 

 レガルドが確認する。すぐに侯爵がギャーヴェは睨みつけた。

 

「すっ、すいません……」

 

「でしたが抜けているッ!」

 

「すいませんでしたっ!」


「私からも本当に申し訳ないと謝罪する。まさかこんなことになるとは……」

 

 父は青ざめていた。ギャーヴェはそんな父を見たこともない。

 

「……よろしいです、侯爵。私はただ学園を『平和に』過ごしたいだけですから」

 

 エノールは持っていたティーカップを置いた。

 

「ギャーヴェさんの件は不問と致しましょう。彼女も何か事情があったのかもしれません……思春期の少女とは揺れ動くもの。ピレライン侯爵も年頃の娘を持ってさぞ大変だったことでしょう」

 

「いやはや、全くもってその通りで……」

 

「私も、父の苦労する姿は目に焼きついています。そんな侯爵の娘さんを退学だなんて……ピレライン侯爵にしても、娘を退学させるよりかは無事に卒業させたほうが何かと都合がよろしいのではないですか?」

 

「全くもってその通りで、ありがたい。こちらの事情を汲んでくださるとは……」

 

「いえいえ、結構です。大変な時はお互い様ですから」

 

「……」

 

 ギャーヴェは信じられなかった。あの父が、この小娘の前でペコペコしている。エノールもまた侯爵である父に対して対等のように接している。こんな光景は今まで一度として見てこなかった。

 

 ギャーヴェがこれまで見てきた父親像は厳格で、仕事に対してはストイックなほうだった。一切のミスを許さず、使用人達を度々泣かせている。

 

 それでも自分の問題行動を容認してくれていると知っていて、自分は父に愛されているのだと感じていた。

 

 しかし、目の前で父に説教されたばかりか、その父がエノールに対して下手に出ている。二人が順調に会話している姿は異常に見えてならなかった。いくらレガルドがいると言っても限度がある。

 

「男は家を守る柱、女は家を繋ぎ止める道具。学園を途中退学しては道具の役目を果たせぬばかりか、家名に傷をつけてしまいますものね」

 

「はぁ、全くもってその通り。エノール様が寛大で本当に良かった」

 

「そうです、侯爵。これはエノールが寛大だからで本来無処分というのはあり得ません。このことを肝に銘じて屋敷にお帰りください」

 

「分かりました。それではご随意に。娘は回収していきますので失礼します」

 

「はい、侯爵。良い日を」

 

「侯爵、良い日を」


「お二方も、良い日を」

 

 ピレライン侯爵は娘を連れて先に客室を出る。ドアを閉めるとため息をつき、娘の方を一瞥もせずに歩き出した。ギャーヴェはその背中に捨てられそうになっている幼子のようについてまわる。

 

 ピレライン侯爵は落ち目のピレライン家を建て直した精励恪勤な性格だ。家のためなら泥をかぶることも厭わない。エノールに身を下げたのはそれで家が何もなければ……という思いもあるし、被害者であるはずのエノールがこともあろうか侯爵側に理解を示したからである。

 

 ピレライン家が擁立している公爵家からマルデリア家と騒動になりそうだと手紙があった。何事かと見てみれば、そこに自分の娘の名前があるではないか。相手はエノール・アルガルド、王国の四つの伯爵家の嫡子であり、しかもマルデリア家の三男と縁談中だというではないか。

 

 これはまずいとすぐに手紙を送り、まず侯爵は自分の指示でないこと、本当であれば自分の至らなさによるものだと謝罪した。マルデリア家からは折衷案の申し出があり、その条件の一つがピレライン侯爵が被害者であるエノールに対し直々に謝罪をすること。となれば、侯爵は学園に向かう必要がある。

 

 すぐに準備を済ませつつ学園に向かってみれば、情報を集めた執事からは何と本当の話だというではないか。即座に客室に向かうとエノールとレガルドの姿があって、二人からことの経緯を聞いた。森林のコテージで、自分の娘が指示をして……それからの内容は侯爵を膝から崩れさせるに足りた。

 

 ソファに座っていたのが功を奏した。無様な姿を曝け出さずに済んだが、そこでなんとエノールの方から示談にすることを持ちかけてきたのだ。受けた仕打ちにしてあまりに寛大すぎる。レガルドの方から娘と一緒に謝ることを条件に出された。

 

 すぐに娘を呼び出して謝罪してみれば、今度は思春期の娘を持つ父親の苦労を理解する旨の話をしてきたではないか。エノールの『思春期の娘というのは往々にして御し難い』という言葉に、侯爵はひどく救われた。自分の与り知らぬところで危うく家が取り潰しになりかけたのだから。

 

 ない、とは言い切れない。今回の件で家が取り潰されてもおかしくないほど、今のピレライン家は大変なのだ。侯爵が立て直してはいるものの、それでも吹けば倒れる砂上の楼閣。アルガルド伯爵家とは脆さが違った。アルガルド家は一応大諸侯の直系なのだ。

 

 この場において、侯爵は家のためにプライドを殺し、エノールは器の大きさを見せ、レガルドはエノールに代わって本件の糾弾をした。必要最低限の役割分担だ。たった三人の間に貴族の交渉の場を煮詰めたような政治的手腕が飛び交っていた。あの場にいた三人は自分たちの目的に従って完璧にロールをこなしたのである。

 

 それを理解していなかったのはギャーヴェだけだ。政治ごとに疎く、男子達が受ける政治の授業も受けていない。侯爵は齢十歳で政治交渉の腕を持つ二人を敵に回さなくて良かったと安堵しつつ、おそらく何も理解していないだろう愚鈍な娘に苛立ちを覚えた。あの二人は決して学生如きが喧嘩を売っちゃいけない相手なのだ。

 

 この件で侯爵はマルデリア家とアルガルド家に借りができた。後者はいいとしても、派閥の上で敵対関係にあるはずのマルデリア家に弁慶の泣き所を作ったのは大きい。擁立する公爵家からも苦情の手紙が来るだろうし、侯爵は頭が痛くなった。

 

 ストレスが限界に達して、ギャーヴェの父は後ろからうざったく腰巾着のようについてくる娘に罵声を浴びせた。

 

「貴様は何をしているんだ!」

 

「ひっ、お父様……?」

 

「公爵家の縁談相手に喧嘩を売って、学園は知らせていたのだろう⁉︎」

 

「で、でも、相手は伯爵家で……」

 

「伯爵家だろうと落ち目だろうと敵に回したら厄介なのがなぜわからん! 政治ごとで煽りを受けるのは貴様じゃなくてこの俺なんだぞ!」

 

 ギャーヴェは涙目になった。一度として父に怒鳴られたことなどないのである。

 

「泣くな! このっ……エノール様が寛大でなかったらどうする気だったんだ! 我が家は危うく取り潰されるところだったんだぞ!」

 

「そんな!」

 

「うちなんて見せしめのために潰される! そうなってもおかしくなかったという状況を貴様は理解していないのか⁉︎ どれだけ屋敷にいたんだ!」

 

 侯爵の説教は数十分続いた。これまでのことも掘り返し、ことごとくギャーヴェを罵り、叱った。エノール達から娘のしたことを聞かされた時、侯爵は顔から火が出るほど恥ずかしかったのだ。それに対してエノールが寛容さを見せたことに、安堵もしたがそれ以上に娘と比べて恥ずかしくて仕方なかった。

 

 あまりにもできが違う。アルガルド家はあのような子女を育てて、自分はどこで間違ったのだろうという持ち前の責任感から愛情が憎悪やそれ以上の呆れに転化した。王国で穢らわしいとされる『不浄の血』を使ったのも侯爵の逆鱗に触れた。


「もういい。学園を卒業したらお前は家を出ろ。我が家にお前のような愚鈍は必要ない」

 

「そんな! お父様!」

 

 最後に侯爵は勢いから娘を見捨てる。もう顔も見たくないと可愛さ余って憎さ百倍となったのだ。その言葉にギャーヴェは青ざめる。

 

 我が子の悲鳴のような声を聞きながら、侯爵は去っていった。


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