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食事会

 貴族の子弟が通う王立学園には名物となる令嬢がいる。

 

 女生徒でありながら、刺繍や花、立ち居振る舞いを女生徒と一緒に学ぶ一方で、政治・内政・軍事について男子生徒と一緒に学んでいた。

 

 エノールに特別にカリキュラムを組むにあたって、教師陣は頭を悩ませた。そして、学園全体で授業の順番を入れ替えたのだ。エノールのためだけに。

 

 それは伯爵家の令嬢のためでもあるし、彼女は次期伯爵だし、もっと言えばそれは過去の事件に関連している。それは学園としても宮廷を巻き込むほどの大事件なのでエノールからの要請に強く「否」と言えないのだ。

 

 その裏にいたのは彼女に目をかけているアルベレット教師である。彼女は音楽やその他エノールに必要ないであろうものを簡単な実技試験を課してクリアさせ、終了扱いとした。まだ自分が面倒を見たい刺繍や花、そして淑女としての立ち居振る舞いは残し、その代わりに領主として必要なことを学ばせるよう学園に提案した。

 

 女子生徒の教室で実技、男子生徒の教室で座学、それは極めて合理的だった。エノールは乗馬や剣術を必要としないし、演奏やダンスなど専門的なことは習得しなくてもいいのである。

 

 それでもエノールはおざなりに終了はできないと音楽の実技試験ではヴァイオリンを選択し、なんとまともに引いて見せた。プロの技巧には到底及ぶべくもないが、耳障りな音が一切ないのである。それはエノールの努力と才能によるものだった。

 

 もし彼女が次期当主という立場にいなければどこかに嫁入りをして演奏家として……という夢想をアルベレットが抱くほどであった。ダンスに関しても社交界で十分通用するレベルだった。バレリーナのように爪先立ちで縦横無尽に舞台を駆け巡るわけでもない。

 

 そうしてエノールは非の打ち所がない成績を持ってして、男女混合のカリキュラムへと移行した。しかし、此処でもまた事件が起こる。

 

「それまでっ!」

 

「……」

 

「……」

 

 エノールが男子生徒相手に剣術で勝ってしまったのである。

 

 相手は平凡な学生の一人だったが、まともな撃ち合いの末に怪我をしない木剣でエノールが相手の首に刃を突き立てたのだ。

 

 その事件にアルベレットはひどく狼狽した。顔に傷がついたらどうするつもりだと問い詰めた結果、エノールから返ってきたのは『やれると思った……』の一言である。

 

 一応、エノールなりにも考えていた。それは『自分の顔が傷ついても、悲しむ人はいない』というものだった。

 

 自分は次期領主で、以前アルベレットが言ったように見た目が悪かろうと婿に来る人は来るのである。容姿で選ぶことはそうそうない。だから、問題ないと。

 

 アルベレットはそれに泣きながら怒った。悲しむ人なら私がいると叱って、自分の発言を悔いた。彼女の発言がエノールにそう思わせたのだ。後悔して後悔して……しかし、その光景を見ていた剣術の教師からひどく勧められてしまって、結局エノールは剣術の指南をたまにだが受けることになってしまった。

 

 そしたら、また事件が起こる。今度は剣術の授業の後で、男子生徒に拐かされてエノールが騎乗したのだ。男子生徒達の次の授業が乗馬で、少しぐらいならいいかと……乗馬の先生も見ていたが、エノールが剣術の授業にでていることを知っていたから問題ないと思ったらしい。

 

 エノールも次の授業があったが、校舎に帰る上で乗馬に演習場を横切るので、少しぐらいならいいかと思ってしまったのだ。男子生徒達が先生に話して、装具を取り付けてエノールは馬に乗った。教師に乗り方を説明されると見事な乗りこなしで馬を操ってみせた。これには周囲の男子達も感心し、教師に『十年に一度の逸材かと思った』と言わしめたほどである。

 

 ことはすぐにアルベレットにバレた。今回はエノールもほんのちょっとしか乗っていなかったので問題になるとは思っていなかった。次の授業にも間に合ったし、教師が見ている前で装具をつけて安全に騎乗したのだ。

 

 アルベレットはその話を聞いてすぐに騎乗の教師に問い詰めた。彼はヘラヘラとしながら『少ししか見てないけど、馬の故に合わせた腰使いにはすごく自然だった。あれは遊牧民の家系なのかい?』などと言って、最終的にエノールに馬術の授業も受けさせてくれとアルベレットに迫った。結局これも許可された。

 

 アルベレットは剣術の件はともかくとして、馬術は教師の方から薦めてきたので何を考えているのかと憤慨していたが、エノールは『軍事に携わることになれば必然的に馬に乗る機会もありましょう』となぜだかアルベレットを慰めた。

 

 自分を慰めた愛弟子に生意気だと怒って、ついにアルベレットは泣き出してしまった。彼女からしてみれば自分の愛弟子がどんどん危ない方向に進んでいるのだ。

 

 剣に馬、手元が狂った男子に……とか、乗馬中に落下して……とか、いろんな想像をした。事実、馬上からの落馬は致命的な怪我につながることもあった。

 

 剣術の教師は『剣を持つために生まれてきたのでは?』とエノールを褒め、馬術の教師は『馬と一緒に生まれたとしか思えない』と称賛した。

 

 エノールは経験の面では当然、周囲の男子達に劣るが、教師達でもうまく言い表せないが、エノールの持っているものが光り輝いていることは仕草を見ればわかるという。

 

 エノールは女性に求められる実技より男性に求められる実技の方に天賦の才を持っていた。その事実にアルベレットは嘆いた。

 

 それでもエノールは馬術や剣術を嗜み程度に抑え、淑女としての研鑽に注力した。その姿をアルベレットも見ていたので、強くは言えなかったのだ。本人には言えないが、陰ながら『この娘は生まれる体を間違えたのでは……?』と疑問を持つこともあった。

 

 エノールもまた驚嘆していた。まさか自分に剣や馬術の才能があるとは思わなかったのだ。

 

 佐藤健の記憶に馬術や剣の方面の知識はない。体を動かすのは比較的苦手だった。そもそも知識があってのものであれば、教師達が見抜いている。しかし、彼らはエノールのそれは経験や知識などではなく生まれ持ったセンスなのだと評している。

 

 彼らがいうなら間違い無いだろう。つまり、それらはエノール自身の才能なのだ。まさか、自分の体にこんな才が眠っていたとは思わなかった。

 

 果てさて、女子生徒と男子生徒の反応だが、なんと本来と反対の反応がなされていた。

 

 本当であれば女子生徒が蔑み、男子生徒が嫉妬する場面だ。しかし、男子生徒はどちらかというと光り輝くエノールという、彼女の容姿とか魅力しか見ていなかったので、実力で負けたと悔しがるものはいなかった。

 

 自分たちとは別物、女子として認識しているので競争相手とはみなされなかったのである。エノールが馬術や剣術にそこまで重きを置いてなかったのも理由の一つだ。

 

 そして、女子生徒達こそが嫉妬した。正確にはその一部だ。大半の人間は『変な生徒』だとか『物珍しい人』と一定程度彼女の生い立ちや生まれ、立場で事情を理解し、アリスを除いたエノールの所属する教室の生徒が中心となって憎悪を振り撒くもの達がいた。

 

 彼女らにしてみれば自分たちも男子生徒と関わって、あばよくばちやほやされたいのである。しかし、エノールだけが男子生徒達の注目を買っている。合同授業の時に度々その様子が現れて、女子生徒達は嫉妬に狂った。

 

 エノールは……無理をしていた。それをバルターも分かっている。だからこそ、十二の夏に長期休業の合間を縫って誕生日会が開かれた。両親が企画したものだ。

 

「エノール、久しぶり」

 

「お母様!」

 

「元気してた?」

 

「はい!」

 

 こほんとアイジスが咳払いをする。

 

「エノール、壮健か」

 

「お父さんはねぇ、今構って欲しいの」

 

「お、お前! 余計なことを!」

 

「お父さん」

 

「なっ、なんだ」

 

 突然のお父さん呼びに驚いてしまうアイジス。『お父様だ!』という諌める言葉を逸してしまう。

 

「大好きです!」

 

 アイジスは胸を押さえた。

 

「……………領地のこともよくやってくれているようだな」

 

「はい! そろそろ騎士領での診療所建設も終わります。次々に開設していますから、我が家は借金放題です!」

 

「そ、そうか、その、返せる額で頼むぞ……?」

 

「大丈夫です! 今の利潤であれば十年あれば返せるかと!」

 

「そ、そうか、十年か」

 

 長いのか短いのかわからないアイジスだった。

 

「エノール、今日は貴女のために食事会を用意したからね。目一杯楽しんでちょうだい」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「……はぁ、うちの子はなんでこんなに可愛いのかしら」

 

 ミラルダはエノールを抱いて振り回す。

 

「此処は人目がある。まずは中に入ろう」

 

「そうね」

 

 そこはエノールが入学前に両親と訪れた王都のレストランだ。荘厳な雰囲気は貴族御用達というのがありありと伝わってくる。

 

「エノール、友達はできた?」

 

「……はい! 男の子といっぱい話してます!」

 

「そ、そう、男の子ね」

 

 ミラルダは困惑した。

 

 バルターの報告でエノールに友達らしい友達がいないことは知っている。休日は執務室に篭ったり、女性としての研鑽に身を投じたり、アルベレット教師に直々に指南を頼むことだってある。

 

 特に、領地について悩むことが多い。診療所の拡大は進んでいる。次々と開設準備が進み、エノール不在の中新規開店を成功させなければならない。

 

 商会に頼んで診療所の建設予定地である地元の住人から取り立て屋に相応しい人材をスカウトしてもらい、診療所で医者の働き手を求めていることを宣伝する。医者はヤブ医者か慈善事業家の二種類が多いため、多くの人を助けられること、給料は定額で毎月支払われることを謳い文句にして人を集め、商人から複製した手引書を渡してもらう。

 

 医者として知っていて欲しいマナーや衛生観念に関する手引書であり、それを商会で複製してもらって医者として働きたいという人に無償で渡している。紙もタダではないが診療所が成功して儲かるのは商人達だ。それを強調してお願いしたら案外すんなり指示に従った。

 

 そして、試験を受けさせる。エノールが作った試験だ。会場は商会に用意してもらって、合格した人が働ける。そして、定期的に商人が監査の人間として働きぶりを見に来るのだ。そして、経営が順調か、地元の住民にも話を聞いて評価する。診療所側の虚偽を見抜くためだ。

 

 こういった管理手法もエノールが全商会に手紙で送った。エノールが原本を書き、バルターが複製するのである。

 

 商会に現地で経営を任せ、資金もある程度出してもらう。この政策事業には商会が当事者意識を持って関わっているのだ。当然儲けさせてやらなければならない。しかし、診療所の建設が終わって彼らが一番儲けるときはパンデミックが起こった時なのだ。

 

 その時まで商会には働いてもらう。診療所が軌道に乗れば借金は返済できるだろうが、彼らには働き続けてもらわないといけないのだ。パンデミックが起こった時は大儲けさせて、エノール率いる伯爵家が領地の支配を確立したら余剰財源で商業に注力する。その時意見を聞いてやれば苦労が報われたと思うだろう。

 

 こう言ったことを休日の時にまとめて考える。授業の合間や放課後は余計なことを考えている暇はないので、授業のない休日に終わらなせなければならないのだ。それも、問題は診療所だけではない。

 

 避妊器具の流通は済み、売春の問題は風紀の問題だけとなった。しかし、現状目立った不利益は見当たらない。問題が起きればその都度締め付ければいいだけの話である。

 

 残る領内の問題は領地全体の治安、つまりは跋扈する各地の強盗団・盗賊団の壊滅と『ベティクート』の対策、農業・商業をいかに発展させるかとそれに伴った土壌研究と領地の経済的な研究だ。

 

 経営学と経済学は似て非なるものだ。経営学は一会社を立ち上げてそれをどのように運用していくかだが、経済学は経済全体で好景気を生み出すにはどうするかというのを至上命題とする。畑が違うのだ。土壌についても適当な知識しかない。

 

 学園の図書室を利用しているのはそういった経済学の専門知識とアルガルド領に似たような土地でどのように畑を開墾したかのを記録を求めてのことだった。同時に自分の知っている経営学とこの国の経営学にどれほどの違いを知るのかも好奇心の対象の一つだ。

 

 商人達には土壌研究と経済研究に困っている話をして、良い本があれば欲しいということを話している。これまでもいくつか商人達が良書ではないかとする経済学の本を無償で送ってくれた。彼らにしても次期当主が経済学に精通していた方がいいのである。

 

 つまり、やることがたくさんあるのだ。普段の授業の予習復習、カリキュラムの先取りに領主としての勉強、それから執務に自己研鑽。やることが多すぎるのだ。溜め込みがちなエノールは夜更かしをすることが多くなり、ホルモンバランスが乱れて股の方に手をやることが多くなってしまった。

 

 自分は大丈夫だろうかと不安になることもある。こんなことをしていて果たして本当にいいのだろうか……佐藤健の記憶ではネットで女性も半分ほどはやっていると知っているし、おかしなことでもないとしていた。しかし、此処は別の世界なのである佐藤健の常識が通じるとは限らない。

 

 ストレスから自慰に逃避して、自分の常識への疑念からそんな不安にまで発展するほど多忙なのである。時間がない中で友達を作る余裕などあるはずがなかった。

 

 それをミラルダも知っていて、だけれどバルターの知らないところで友人がいるんじゃないかと確認の意味も込めて聞いてみたが、どうやら男子だけなようである。

 

 ミラルダはきっと男子生徒達とも混ざるようになったからそのことを言っているのだと感じ取ったが、父親であるアイジスは気が気でなかった。

 

「お、男か……?」

 

「どうしました、お父様」

 

「い、いや……なんでもない。そう、いや、エノールがするのなら間違いではないのか……?」

 

「アイジス、落ち着いて。きっと授業で話すようになったと言っているのよ」

 

「そうなのか?」

 

「はい! みんな優しくて、いっぱい話せます!」

 

 というより、男子生徒達は聞いてもないことを喋ったり、はたまたエノールの話を粛々と聞いて全肯定したりと、なんか違うなとエノールも思っていたが、以前よりマシなので納得することにした。

 

 ミラルダも気づく。きっとエノールもまた女生徒の中で浮いてしまっているのだ。

 

「……女の子の友達はいる?」

 

「……教師ですが、アルベレット先生にはとてもお世話になっています。生理が来た時も相談に乗ってもらって──」


 エノールはしまったと思った。母と二人きりならいざ知らず、父の前で王国では忌避されている生理のことを話すなど──


「そうか、私からも感謝していると伝えてくれ」

 

「……はい、すみません」

 

「謝るな、娘の成長は喜ばしいことだ」


「そーよ? 私の娘はこんなに大きくなったんだって、お母さんも得意げなんだから」

 

 ミラルダは場を切り替えるように胸を張って言った。

 

「そういえば、エノールから見て学園でいい人はいた? こう、素敵だなとか、結婚したいなって男の子」

 

「け、結婚の話はいささか早いんじゃないか?」

 

「何言ってるの。エノールはもう次期当主が確定してるのよ。今からでも遅くないわ。それに……うちの家じゃ、社交界にでても難しいし」

 

「……」

 

「……」

 

「学園も一つの出会いの場よ。一緒にいる時間が長い分、恋もしやすいわ。恋愛結婚もあるにはあるんだから、そういうアドバンテージを生かしてみてもいいんじゃない?」

 

「ありがとうございます、お母様。ですが、うちの家は大丈夫です」

 

「……そう?」

 

 ミラルダもまたアルガルド家の醜態を垣間見てきた当事者の一人だ。社交界での扱いも身をもって知っている。自分の娘が婿を探せないくらいなら……学園で少々のいざこざがあってもいい人を捕まえてしまった方が良かった。

 

 しかし、エノールは笑った。

 

「あと三年、あと三年で私はアルガルド家の領地を変えて見せます。商業や農業を盛り上げることは叶わないでしょうが、その下地を……領内の諸問題を解決し、外に見せても恥ずかしくないほどには仕上げて見せます」

 

「……頑張ってね」

 

 ミラルダは月並みな言葉しか送れなかった。あと三年で領内の問題を解決し、周囲から馬鹿にされないようにする。それがどれだけ大変で茨の道なのか、この母は知っているのだ。

 

 それでもエノールの言葉は覚悟に染まりきっていた。今更、『やめてもいいのよ?』なんて残酷なことは言えない。母としてできるのは悪逆人として娘の背中を押して、崖から落とすことだけだ。

 

 分かっていても、彼女の瞳は心配で揺らいでしまう。

 

 母娘の雰囲気を感じ取ってアイジスは別の話題を提供した。

 

「そういえば、この夏には学園総出でどこかに行くそうじゃないか。どこに行くんだ?」

 

「近くの森まで……レジャーですかね? 集団生活を通して心意気を学ぶだそうです」

 

「そうか、頑張ってこい」

 

「はい」

 

「お父さん? エノールはもう頑張ってるわよ?」

 

「…………分かっている。別に、頑張っていないなど言っていない」

 

 アイジスの拗ねたような調子に、ミラルダはくすくすと笑うのだ。

 

「前から、五年前からずっと思っている。エノール、お前はよくやっている。よくやりすぎて、少し心配になるほどだ」

 

「少しですか? 昨夜はあんなに『エノールと何を話せば……』と狼狽していたのに」

 

「ミラルダ!」

 

「ふふっ、お父様。ありがとうございます」

 

 エノールの言葉に両親は微笑んだ。エノールの仕草は一つ一つ可憐なもので、学園での成果を感じさせる。

 

 立派に育った、それと同時に大事だという気持ちが膨れ上がるが──それはもう遅い感情である。7年前、彼女が五歳だった時ならまだ知らず、もうその感情を注ぐべき時期はとうに過ぎた。過ぎてしまった。


 この食事会はエノールの誕生日をその日に祝えなかったこと、幼い頃に屋敷に置き去りにしてしまったことへの遅すぎる二人の贖罪の意味があった。エノールに喜んでもらえたら……その思いは計り知れないが、それでも原義的な動機はそこにある。

 

 二人はその事実に罪悪感をひた隠しにするのだ。

 

 子供はどんどん成長する。エノールは前倒ししすぎていると言っていい。手のかからない、優秀すぎる子供なのだ。故に何もしていない親の不甲斐なさもまた、親の苦労の一つである。

 

 食事会はひっそりと終わった。街に出て、王都に来た時のように出歩いて──それでも、エノールがあの時のようにはしゃぐことはもうなかった。


「我が子は成長してしまったな」

 

「ええ、してしまった」

 

 二人は大罪を背負って王都に帰る。社交会に参加した後は、アイジスがアルガルド領の屋敷に帰るのだった。

 

「……」

 

 二人を見送って自分たちも帰ろうとするバルターとエノールを影から窺うものが一人。

 

 アリスベリアはエノールが家族と食事会をしに学園を出ると聞いて、こっそりついてきたのだ。学園の外なら話せると思って。

 

 結局、話しかけられずにその日は暗くなった。

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