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バインド・ゲイム  作者: 霧隠タツヤ
第一記録 リーフベイ 翔編
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絆、そして断ち切る音

「おい……、ここさっきも通らなかったか?」

げんなりした口調で問い掛けながら、隣を歩く優真の方を見る。さっきから「こっちだ」「あっちだ」と適当に進路を決めて行った優真だが、見覚えのある分岐点まで戻ってきてようやく一度止まった。そして俺に向かって、腹の立つような笑顔で言ってくる。

「ああ、さっきも通ったな。もしかしたら迷っちまったのかもな」

気楽そうにへらへらしながら言ってくる優真に再び苛立ちと殺意が沸いて来るのを感じながら、今度は俺が地図を受け取り目的地を目指す。

「お前さっきから見事なまでに逆方向進んでいやがったんだな……。ある意味すごい才能だ……」

「いや~、それほどでも~」「褒めてねえよ!」

そう、優真は分岐点を全て反対に行っていたのだ。逆にこんな奇跡は普通起きないだろう。あきれながらも進んで行く。今度からこいつには絶対に道案内を頼まない、そう固く決心した。

そんなこんなで予定していた時間よりも相当遅く、ようやくクエストエリアのマップに到着した。夕日が赤々と森全体を照らして、綺麗な景色が目の前いっぱいに広がっていたが、一つ目のクエストと優真の方向音痴のせいで精神力を使い果たした俺には、そんな景色を楽しむ余裕もなかった。(俺にここまで苦労させた犯人は、その景色を見て感激しながら騒ぎまくっている……)

「ほらっ、とっとと目的のアイテム探しに行くぞ!」

いまだに騒いでいる優真の首根っこを掴んで引きずり戻すと、俺はそう言って歩き出した。優真も、景色を名残惜しそうに見つめていたが、すぐに走って追いついてきた。

最初、この世界に巻き込まれた時、手を引いてくれたのは優真だった。あれから三日、今ではどっちが手を引いているのかわからなくなった。それほどに、俺もこの世界に慣れてきたのかもしれない。そこまで考えてから、いや…、とこれまでの考えを否定する。どっちが引いているのではない、共に引き合っているのだ。お互いを補い合える相棒、きっとそういう関係になりつつあるのだろう。きっといつか、『相棒』と呼べるような存在に互いがなれるといいな。そう思いながら、優真に目を向ける。優真はきょとんとしていたが、何かを感じたのか、手を握ったまま挙げた。すぐに優真の意図がわかり、俺も同じような体勢をとる。前に二人で見たアニメ、その中に出てきた、二人の友情の証。

俺達は、互いに笑いあって、腕と腕を当てる。俺達の『友情の証』、この時俺はこの世界に来て、本当によかったと思った。



「おい、これじゃないのか?」

優真の声に、俺は草むらを探っていた手を止め、駆け寄った。あれから一時間、俺達は『むしすず』と呼ばれるアイテムを一心不乱に探していた。目的地には思ったより早く着いたが、肝心のアイテムがなかなか見当たらない。もしかしたら先にこのクエストをやっていたプレイヤーが持っていってしまい、再出現するまでに時間がかかるのでは?とも思ったが、何もせずぼーっと待っているのも暇なので、こうして探していたというわけだ。優真の方へ駆け寄る間に、やっぱり待ってた方が疲れなかったかな…と思ったのは言うまでもない。

「きっとこれだろ。ほら、琥珀を削ったような綺麗な色をしている。ちゃんと虫入りでな」

優真が持っていたのは、手の平サイズの大きめの鈴で、綺麗に澄んだ琥珀色だった。中には虫とも虫型モンスターとも言えそうな物体が入っていて、見ていると不思議と引き込まれるような、幻想的な鈴だった。

「よく見つけたな、どこにあったんだ?」

俺が問い掛けると優真は近くの木を指差しながら答えた。

「あの木のうろの中だ。あとニ、三個ほどあった」

優真が指差した木のうろを見てみると、同じようなアイテムがいくつかあった。手にとってアイテム名を確かめると、確かに『むしすず』となっていた。

振ってみると、ころんころん、というような木製の鈴のような音で、心が和むような気がした。

「じゃあこのアイテムを依頼主に持っていけばクエストクリアだな!やっと帰れるぜ~!」

ううーん、とおもいっきり伸びをしながら優真に言う。さすがにもうクエストは受けていないだろう。受けていたら今度こそ切り裂く自信がある。

「ああ、さっさと帰ろうぜ!」

そう言ってポケットに鈴を詰め込み、歩き出す優真を追いかけようとしてふと、このアイテムを自分用に欲しくなった。まあこんなに残ってるし一つぐらい多く貰っても大丈夫だろう。優真の分も俺が持っていこう。そう思って、鈴を三つ取って優真の方へ走る。

だけど俺は、この時の選択を、死ぬほど後悔することになる。それは、もう少しで森を抜けるという時だった。



「あのでっかい木を右に真っすぐ行けば出口だ!」

自信満々に優真が言ってくる。大丈夫、今回は俺もちゃんと確認したので、間違っているということはない。

「さぁて、宿に帰ったらすぐ飯食いたいな、今日は疲れたからがっつりしたものが食いたいよな!」

「アホ、先にクエストクリアしてからだっつうの!食うのは後」

などとふざけながら歩いていた。その時は思ってもいなかった。数秒後に俺達に降りかかる死のトラップに。

突然アラームが、森全体に鳴り響く。俺達がプレイしていたバインドゲイムでは聞いたことのないアラームだった。だから俺達は、二人とも顔を見合わせて、何が起こったのかわからず立ち尽くしていた。

何が起こったのかはすぐにわかった。目の前の大きな木を中心に、四方八方から大量の敵モンスター集団が出現したのだ。一体一体は一つ目のクエストで倒しまくっていたモンスターとほぼ同じぐらいの強さだったが、圧倒的に数が多すぎる。あっという間に周りを敵で囲まれてしまった。

警告音発生型罠アラームトラップ』、普通の心理状況なら簡単に倒せる敵も、不意打ちで大量に出てきた場合、どんな人でも予想していない限りとっさに対応出来ない。俺はそんな話をアニメで見たことがあった。その時は全然信じられなかったが、今こうして目の前で起こっているのを見ると、あの主人公たちはこういう気持ちだったのかと実感した。動こうとしているのに体が全く動かない。ただじっと、近づいてくるモンスターを恐怖で見つめていることしか出来なかった。

「翔!動け翔!」

その声ではっとする。優真が、いつのまに取り出したのか、いつものデザートイーグルを片手に、敵の群れに撃ちまくっているところだった。

「呆然としていても殺されるだけだ!一点突破で森を抜けるぞ!」

こんな時にも、優真は冷静な判断で進路を決める。俺はその声で一気に走った。

「行くぞ!そぉぉりゃぁ!」

優真が、森の出口方向に向かって『ブレットリガー』を発動させる。黒く輝く弾丸が、前にいた五体ほどの敵を吹っ飛ばす。俺も同じ場所に『ダブルアート』で切り込む。互いの硬直時間を考えながら、硬直が被らないように完璧なタイミングで突き進む。少しずつだが、確実に森の出口の方向に向かって行く。もともと一体一体はさっきまでと同じモンスター。焦らず確実にスキルを当てていけば問題なく倒せる。俺達はそうしながら、一点に集中攻撃をしながら突破していった。

この調子で行けば脱出出来る、後残りは敵二列、そこまできて、少し気が緩んでしまった。俺が打ったスキルは、敵ギリギリで止まり、その状態で俺はスキル後硬直を受けてしまった。目の前の敵がこれは好機と揃って武器を振り上げる。だめか、ここで俺は死ぬのか…、そんなことを思いながら、スローモーションのようにゆっくりと下りてくる斧を見つめていた。

だが、訪れた光景は、俺の考えとは違うものだった。突然横からおもいっきり押され、間一髪で斧の攻撃範囲リーチから抜ける。そして、さっきまで俺がいたところには……

『俺』を助けるために飛び込んだ、『優真』の姿があった……

今回は早めに更新出来ました。また中途半端なところで終わってしまっているので、早めに更新したいと思います。

今回も読んでくださってありがとうございます!

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