死への恐怖
広場では、今だパニックが収まりきっていなかった。当然だ、私だってまだこの世界に馴染めていないのだから。だけど私は、彼に言われた通り皆のパニックを収めないといけない。それが私の役目、私の得意分野なのだから。
「皆静かに!一旦落ち着いて!」
広場全体に響くように大声で叫ぶ。普段出したことのないような大きな声だった。その声は広場にいた全員に届いたらしく、皆一斉に私の方を向いた。
「皆落ち着いて!パニックになったところで何も変わらない、それよりも落ち着いて解決策を考える方がいいはずよ!」
そう、パニックになっても何も解決しない。焦る気持ちだけが大きくなっていくだけだ。特に今回のような何もわからないときは事態が悪化することの方が多い。
皆少し落ち着いたのか、さっきまでの焦った空気は徐々に無くなっていった。よかった…ほっと一息つく。この世界に来てから、私も始めて落ち着けたようだ。さて、そろそろ本題に入っていこう。
「それでは、皆落ち着いたようなので、ここで現状と、現在わかっている情報を提供し……」
私が広場の皆と現状を確認しようとしたその時、私の言葉を遮って聞こえてきたのは、機械のような女の人の声だった。
『ようこそ、バインドゲイムへ。皆さんには、これからプレイヤーとしてこの町を攻略していってもらいます。この町は……』
「えっ?」
思わず声を出してしまった。何だろう、今凄く大変な事を聞いたような気が……。
瞬間、数秒前の事が頭によぎる。それだけで、私は自分が認識したくなかった現実に、目を向けさせられることになった。
数秒前、突如流れ出したアナウンスに、私達は困惑しながら耳を傾けた。だけどその内容はとんでもないものだった。
私達は『プレイヤー』、『プレイヤー』が『死ね』ば、『現実世界』の自分も『死ぬ』。こんなこと、物語の中ぐらいでしか起こらない出来事だろう。いや、起こるはずが無い。聞いたこともない。そう頭の中で考えても、現実は変わる訳もなかった。もう信じるしかない。私達は、このデスゲームに巻き込まれたんだと。
状況がだんだん頭に入ってくる。冷静を装っても装いきれない。私達は次第に現実を見せつけられてきた。泣き出す人、怒り出す人、パニックで訳がわからなくなっている人……、広場が再び混乱の渦に巻き込まれはじめた。
「ははは、こんなの簡単じゃねえか。こいつら全部ぶっ殺せばいいんだろ?やってやるよ!」
体つきのしっかりした少年が、笑いながら敵モンスターのいる場所に突っ込んで行こうとする。だめ、気が動転してる。こんなときに無茶な突撃なんかしたら……
「だめ!早く戻って!」
私の悲痛の叫びがこだまする。だけどその少年には届いていなかった。雄叫びをあげながら刀を手に敵モンスターの群れに突っ込んで行く。モンスターに切りかかり、切り伏せていくが、何しろ数が多すぎる。あっという間に囲まれ、唯一の武器である刀は折れてしまった。
私は、弓で脱出口を作ろうとしたが間に合わなかった。少年は悲鳴をあげ、次の瞬間、紅いポリゴンとなって散っていった。
沈黙、少年が消えた辺りには、まだ紅いポリゴンが残っている。だが少年の姿は無い。使っていた折れた刀だけが、その場に残されていた。
「き、きゃあ~~~~~~!」「うわぁ~~~~~!」
あちこちで悲鳴があがる。当たり前だ、今私達の目の前で、一人の少年が死んだのだから。血も何も出ていないのに、真っ赤なポリゴンが、私にはとても恐ろしいものに見えた。
頭の中を、普段なら気にしたことも無い死への恐怖が駆け巡る。本物だ、テレビのドッキリ企画なんかじゃなく、夢でもなく、これは……『現実』なんだ。
何となくグダグダになってしまいました……すみません。
この作品を読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。




