巻き込まれた者達 杏奈編
気がついたらこの場所にいた。すぐそばで戦闘が行われ、切り付けられたモンスターがポリゴンの欠片となって消えていく。
突然の事で全く頭がついていかない。私は、さっきまでやっていたことを思い出そうとした。
夏の暑い日だった。朝早くから行った図書館で借りた本を、帰ってきてから読んでいたはずだ。ちょうど少年少女達が謎の組織相手に戦いを挑んだところまで読んだということは覚えていた。
でもそれ以降の記憶が無い。寝てしまったのだろうか、そしてこれは夢なのだろうか…、そう思って頬をつねってみるが、普通に痛かった。
これは夢ではない、現実だ。そう思わなければ仕方がなかった。私の腕の中には大きな弓があり、背中には矢が大量に入った矢筒があった。こんなもの、私は持っていただろうか。いや、持っているわけが無い。現代日本で、こんな弓なんか持っているのは、オリンピック選手や弓道部ぐらいだろう。第一私は弓を射たことなどない。一回だけ、学校のオリエンテーションで、生徒代表として体験させてもらっただけだ。ますます訳がわからなくなってくる。
「残念ながら、ここは現実であって現実じゃないようだぜ」
突然背後から声が聞こえた。驚いて振り返ると、クラスメイトの優真君がいた。あまり話したことはなかったが、委員長として話したことぐらいはある。私は思っていた疑問を彼にぶつけてみる事にした。
「ねえ、現実じゃないってどういうこと?、現に私たちはここにいるじゃない」
「そんなもん俺に聞くなっての。ただ一つわかるのは…」
そう言うと優真は、私に銃を突きつけた。微かに笑みを浮かべた表情に、私は足がすくんでしまった。
「何する気?」
ならばとこちらも冷笑で返す。矢を弓につがえ、優真の眉間に狙いを定める。一度しかやったことない弓の動作も、今は流れるように自然と出来た。向かいあって銃と弓を構えてるのは、傍から見ればさぞかし不自然だっただろう。でも私は必死だった。何を考えているかわからない目、その目は確実に私を見据えていた。1ミリも誤差なく見抜くような目つき、完全に私は怯んでしまっていた。
「何故構える、そんな必要ねえって」
「どうでしょうね、優真君の目、まるで獲物を捕らえる狩人よ」
両者一歩も引かない。本気で私を撃つ気なの…?そんな不安が頭を駆け巡る。
「だからお前に撃つ気はねえよ。俺が狙ってるのは…」
刹那、すぐ真横に銃弾が通る。撃たれるとわかっていたのに何も反応出来なかった。次は撃たれる、そう思った瞬間、真後ろでポリゴンが弾ける音がした。何…?
「お前、狙われてたよ。モンスターに」
「…!」
思わずしりもちをつく。全然気がつかなかった。ってことは狙ってたのは私じゃなくて、私を狙ってたモンスター?
「あ、ありがとう。全然気がつかなかった」
「だから構えなくていいって言ったろ」
「うん…ごめん…なさい…」
私はつい泣き出してしまった。今はましになったけれど、昔から私は泣き虫だった。極度の緊張と混乱で、精神的にやられてしまったらしい。
「お、おい泣くなよ…」
優真はうろたえていた。それが可笑しくて、泣いていたはずなのについ笑ってしまった。
「それだけ笑えるならもう大丈夫だな、委員長。それじゃ、本題だ」
優真は一呼吸置くと、本題と言う内容を話しはじめた。
「モンスターとか武器とかが出てきてる時点で、この世界が普通じゃないって事は気づいてるんだろ?」
そんなこと当然わかっている。本で読んだような世界が広がっていたし、本来弓があんなに簡単に撃てるはずがない。
「俺は、これはゲームの世界なんじゃないかって思うんだ。冗談抜きでな」
「…平然と言われても全然信じられない。だけど、嘘でもないと思う。だから信じる」
「そう言ってもらえると助かるよ、委員長」
優真はそう言って笑った。場の緊張が少し緩んだ気がした。
「それで委員長には、パニクってる他の奴らをまとめて、そいつらを指揮ってもらいたいんだ。委員長なら出来るかと思ってな」
そう言った優真の目には、先ほどの殺気ではなく、信頼している人に向けるものだった。
「もちろん、そのつもり。任せて、指揮るのは得意だから」
私がそう言うと、優真はにっこり微笑んで『頼んだぞ』と言って走って行った。その先に誰か見える。翔だ。まだパニックの真っ最中らしくオロオロしている。でも…彼に任せておけば、大丈夫だろう。
私は彼に背を向け、混乱の真っ只中にある皆の元へ走って行った。優真に頼まれた通り、皆の混乱を押さえるために。
だけどその時は考えてもいなかった。この後起こる、更なる混乱を。そして、これが最後だったということ。彼と、優真と話すことが。
四話目、ようやく更新です!
新しいキャラクターも登場、今回が女子キャラ初です笑
それではまた五話でお会いしましょう!頑張るのでよろしくお願いします!




