新メンバーと変態さん
また一ヶ月ほど開いてしまい、すみませんでした。
「ふぁ……、もう朝か……」
森の中にある小屋に、優しい朝日が差し込む。天井が大きく開いた小屋で、俺は寝袋を広げた布団の中で眠っていた。
「そういや、あいつどこで寝たのかな?」
あいつとは、昨日の夜、俺を殺しに来た忍者の少女のことだ。そして天井に大穴を開けた犯人でもある。
戦いに勝利した俺に、少女はパーティに入れてくれと言ってきた。少し前まで敵だったのによくもまあ簡単にパーティに入れたものだなと言われそうだが、まあ押し切られてしまったのだから仕方ないだろう。
確か俺が作ったパスタを食べたあと、自分で寝床を作ると言っていたから俺は何もせずに寝たが、一体どこに作ったのだろうか。
そんなことを考えていると、不意に俺の寝ていた布団がもぞもぞと動きはじめた。何事かと布団をめくり上げた俺の目の前に、朝の眠気も一瞬で飛んでしまいそうな光景が広がった。
「くぁ……、おはよう……ございます……」
眠そうに目を擦りながら、俺が探していた少女がそこにはいた。俺の布団に潜り込んでいたのも問題だが、それ以上に、少女の服装の方が問題だった。
「ちょっ、お前!」
「……?」
俺が慌てている理由がわかっていないのか、小首を傾げる少女。このまま気づく前に退散すればよかったのかもしれないが、俺はそこまで頭が回らなかった。
「自分を見て見ろ!」
言われるがまま自分の体を見下ろした少女は、俺の言っていることがわかった途端、顔を赤く染めていく。
「なんでお前、『服着てない』んだよ!」
そう、少女は今、全裸だったのだ。(なぜだか全くわからないが……)
そう俺が言った次の瞬間、無言で振り上げられた少女の手が白いエフェクトを纏う。
「えっちょっ待て待てそれスキル発動してるって!」
格闘スキル『平手打ち』、慌てて止めさせようとするが、今の少女にはどんな言葉も届かないようだ。
「このっ!」
あ、終わった。町じゃないからHP減るよなぁ……ダメージ大きくないといいなぁ……
「ヘンタイっ!!!」
バチィン。ビンタが炸裂し、俺は軽く3メートルぐらい吹き飛ばされた。幸いだったのはクリティカルが出なかったことと、少女の格闘スキルレベルが低かったことだ。おかげでHPはあまり減らなかった。(二割ほどで済んだ)不幸だったのは追加効果の気絶が発動してしまったこと。急に目の前が真っ暗になり、俺はしばらく気を失った。
「いてて、まだ痛みが残ってる気がするなぁ……」
頬をさすりながら、反対側の椅子に座る少女の方へ向く。手には桃の缶詰がある。俺が気絶していたせいで朝食が作れなかったからだ。
「知りません、変態さんが悪いだけです」
朝からずっとこの調子だった。まあそりゃ見ちゃったのは申し訳ないと思うけどさ。……あれ?そういやなんで俺は少女の裸を見ることになったんだっけ……?
「そうだ!お前なんで俺の布団に潜り込んでたんだ?」
俺の疑問に少女は、はっきりわかるほど動揺した。なんでそんなに動揺するんだ?
「う、煩いです。別にどこで寝ようが私の勝手です」
「だからって俺の布団で寝てたら、今日の朝みたいになるだろ?」
「へ、変態さんの言うことなんか信用ならないです!今日だって、わざとじゃないんですか!?」
「そんなわけねぇだろ!昨日は俺の方が先に寝てんだからお前がどこで寝てるかなんてわかるわけねえよ!」
「ご自慢の変態レーダーで……」
「そんなものは無い!」
こんなやり取りが、この後10分ぐらい続いた。
「はぁはぁ……そういや、名前聞いてなかったな」
「はぁはぁ……そういや言ってませんでした」
呼吸が落ち着くまで待ってから、改めて自己紹介をすることにした。
「俺は如月 翔。装備は片手剣で、今はとあるスキルを獲得しようとしている」
俺が淡々と告げると、少女も同じように自己紹介を始めた。
「私は黒咲 忍です。装備は短剣で、あなたの暗殺に失敗してパーティメンバーになりました。裸を見られたことは今でも許してません」「ごめんって」
後半がトゲトゲしていたが、ようやく名前を聞くことができた。
「よろしく、忍さん」
握手しようと手を伸ばす。
「忍でいいですよ。こちらこそ、よろしくお願いします、翔さん」
忍も、俺の手を握ってくれた。よかった……
「俺も翔でいいよ。それより、これから俺はとあるスキル獲得クエストに挑むんだけど、忍はどうする?」
パーティメンバーは基本は同じ戦場で戦うことになるが、スキル獲得クエストの場合、スキル獲得したいプレイヤーのみが特別なフィールドに飛ばされることが多い。その間、パーティメンバーは暇になるのだが、忍はどうするのだろうか。
「それに関してはご心配無く。私も違うクエストを受けているので、そのクエストを終わらせてきます。もちろん、裏クエストじゃありませんよ」
忍もその間にやることがあるようだ。なら大丈夫か。
「じゃあひとまずここでお別れだね。クエストが終わり次第メール送るから」
「わかりました。では」
「あっ、ちょっと待って」
すぐに出発しようとする忍を止め、あるアイテムを渡す。
「ん?なんですか?」
そう言いながら、忍は俺から送られてきたアイテムをオブジェクト化させる。そしてオブジェクト化されたアイテムを見て驚いた。
「これ、『転移石』じゃないですか!どうしてこんなものを……」
忍が驚くのも無理は無い。俺が渡したアイテム、転移石は、使用したプレイヤーを好きな場所まで転移させることができる高価アイテムだ。そんなものをなぜ持っているのか気になるのだろう。
「NPCショップの抽選でたまたま当たったんだ。忍にあげるよ。いざって時に使ってくれ」
忍はまだ驚きが隠せないようだった。
「そんな高価なアイテムを、どうして私なんかにくれるんですか?」
「……もう、パーティメンバーに死んでほしくないから」
脳裏に優真の顔が浮かぶ。俺の現実世界からの親友。俺のせいで死んでしまった親友。
もう、あんな思いは絶対にしたくない。
俺の表情で、深刻さがわかったのか、それ以上、忍は何も聞いてこなかった。重い沈黙が辺りを包んだ。
「悪い、湿っぽくなっちゃったな」
「いえ、こちらこそすみませんでした。石、いただいておきます」
忍はそっと転移石をアイテム欄に格納すると、「それでは行ってきます」と窓から飛び出して行った。
「ふぅ、なんとか平気だったな……」
泣きそうになるのを堪えていた俺だったが、やっぱり少しだけ涙がこぼれた。優真なら気にするなって言ってくれるかもしれないが、俺はまだ、優真を殺してしまったことを悔やみきれず、自分を攻めていた。
まあ悩んでも仕方ない。今は優真が残したスキル獲得クエストを攻略し、優真の形見の拳銃を装備できるようにしよう。
俺は素早く片付けを済ますと、森の奥にある師匠の家を目指すために歩き出した。
今回は頑張って女子キャラとの絡みを入れてみました。下手くそだと思いますが暖かい目で見守ってください(笑)




