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バインド・ゲイム  作者: 霧隠タツヤ
第二記録 スキル指南と暗殺者
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暗殺者と暗殺対象

「……ひっ!」

目の前に剣の刃がある。その光景は、相当な恐怖だろう。罪悪感が心を締め付けるが、俺も同じぐらいの死の恐怖を味わったんだ。これぐらいで済んでまだマシだっただろう。そう自分に言い聞かせながら、月光を跳ね返して輝く剣を鞘にしまう。

俺の命を狙ってきた少女忍者。麻痺から回復し、撃退しようとしていた俺の目の前に、あの無表情の少女はいなかった。床に倒れ込み、体を小さく丸め、顔を庇うように腕でおおいながら、恐怖に怯えて泣く、儚い少女がそこにいた。

だから俺は、少女を狙っていたスキルをわざとすれすれで外し、死の恐怖を与えるだけで、暗殺者の少女を殺すことはしなかった。元々他のプレイヤーと戦いたくもなかったし、少女が戦意喪失してくれて助かった。しばらくして落ち着いたら話を聞くことにしよう。



しばらく嗚咽を漏らしたあと、少しずつ落ち着いてきたのか、こちらを警戒するような目つきでちらちら見てくるようになった。それから口を開くのに、そんなに時間はかからなかった。

「あなたは……あなたはどうして私を殺さなかったのですか?奇襲をかけた私が言うのも変ですが、あの時に私を殺すことも簡単に出来たはずです。それなのに何故ですか?」

当然の疑問だろう。普通暗殺者が暗殺に失敗して、生きて帰れる保障はない。相手を殺しに来ているのだから、相手もこちらを殺しにくるのが普通だろう。だけど俺はそれはしなかった。したくなかった。これはゲームじゃなくて現実なんだ。人は死んでも生き返れない。そんな中で、他の人を殺したくなんかなかった。そう話すと、少女は信じられないというような目をしてこちらを見つめてきた。

「あなたはどれだけお人よしなんですか。理解できません」

「それでもいいさ。ただ、これからもこの気持ちは変えるつもりないけどね」

この場面を誰が見ても、まさか話している二人が、暗殺者アサシンとその標的ターゲットだとは思いもしないだろう。少女も、もう自分が完全に勝てないと確信したようで、普通に話している。そろそろ本題に入ってもいいだろう。

「じゃあ、そろそろ質問してもいいかな?」

そう切り出した俺に、少女は軽く睨むような目つきで答えた。

「どうせ、答えなくてもどうにかして聞き出す気なのでしょう。私は殺されててもおかしくありませんでした、だからあなたがどんな卑劣なことをしようとしても、拒否権は私にはありません。もう何でも聞いてください」

卑劣なことを拒否出来ないと聞いて、思わず変態みたいな想像をしてしまった。慌ててその考えを振り払う。そんな俺の行動を見て、少女は軽蔑の眼差しを向けてきた。正直すごく心にダメージを受けるのでやめてほしい。中三男子ならそういうこと考えても仕方ないだろと自分に言い訳をしながら、改めて少女に問い掛ける。

「さっき言ってた、裏クエストって何?」

少女は、「どうせそのことだろうと思いました」と文句を言いながらも、丁寧に説明してくれた。

「裏クエストは、私達『暗殺者』や『忍者』、『盗賊』みたいな職業の人が受けるようなクエストのことです。あなた方が普通にクエストを受けるように、私達もまた、普通に裏クエストを受けています」

初めて聞く話だった。俺がやっていた『バインドゲイム』に、そのようなクエストは存在しなかった。名前が同じこの世界には、そんな裏の依頼もあるようだ。

「その裏クエストの受けられる場所って何処なんだ?」

「ここのすぐ近く、『ダークカレッジ』で受けられます。まあオススメはしませんが」

オススメされても受けないよ……。そう心の中で思いながら、ふとあることが頭をよぎった。

「そんなこと、俺みたいな普通の奴に言っていいの?裏クエストなんて言うぐらいなんだから、他の職業のプレイヤーにばれちゃいけないんじゃないの?」

そう聞くと、少女は呆れたような表情でこちらを見ながら、皮肉のように言ってきた。

「答えなかったら何されるかわかりませんからね」「何もしないよ!」

そうは言ったものの、正直聞けるまで問いただしていただろうな、と苦笑していると、少女がとんでもないことを口にした。

「まあ、これからお世話になるので、それぐらいはいいかと」

「……はい?」

頭の処理が追いつかない。この少女は一体何を言っているんだ?

「世話になるって……?」

微妙に察してしまったが、まさかと思い、もう一度きちんと聞き直す。だが……

「?、私をパーティーに入れるんじゃないんですか?」「いやいや、なんでそうなった!?」

予想通りの回答だった。殺しに来た奴とパーティー組むってどんな状況だよ!

「私、今までは忍者の先生のところにいたんですが、今回の暗殺失敗で、多分追い出されます。あなたのせいで行くところがないのです」

「いやいや、まず俺のせいじゃないし!それに、だからって暗殺対象ターゲットとパーティー組むっておかしくない!?さっき君が言った通り、俺が何しても君が俺を殺しに来たことには変わりないんだから抵抗出来ないんだよ?」

まあ何もする気ないけど、そんな勇気もないしね。

「大丈夫ですよ、そんなこと気にしてないんで。別に寝込みを襲ってきてもいいんですよ?そんな勇気があるなら、ですけどね」

人を若干馬鹿にしたようなにやけ顔でこちらを見てくる少女に多少の苛立ちを覚えながら、でも反論出来ない自分が悔しい……

「とまあそんな感じで、これからよろしくお願いしますね、もと暗殺対象ターゲットさん」

「はぁ……わかったよ、よろしく、忍者さん」

こうして、俺達は奇妙なパーティーを組むことになった。新しいパートナーは、俺を殺しに来た忍者さんだ。

「それよりお腹すきました、さっきのパスタ食べさせてください」「君いきなりパーティー組めって言ったり飯食わせろって言ったりどんだけ自己中なの!」「早く作ってください!」「ああもうわかったから騒ぐな!」

一人静かなソロから、いきなり騒がしくなってしまった。パーティーに入れてくれって押し切られなきゃよかったかなぁ……

「おお……このパスタおいしいです」「そ、そうか?それはよかった」

……一人よりも楽しいと感じているのは、気のせいだと思う……多分。



そんな俺達を、近くの木の上から眺めている『影』がいた。『影』は少女を見て舌なめずりをし、笑った。そして『影』は、少女より素早い動きで闇夜に消えて行った……。

パーティーメンバーが増えましたね!今後どのように翔を振り回してくれるのか楽しみです(笑)

いつも読んでくださっている皆さん、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!

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