第8話 エロ魔法炸裂(相手は男)
手続きを終え、最後に首輪を一つ購入した。
隷属の魔道具ではない、ただの装飾用の首輪だ。リルの分の証として、それから今後どこかへ連れて行くときに身分を示すために必要だろう。
リルの首にそれをつけると、彼女は嬉しそうに尻尾を振った。
「ありがとうございますご主人様、ボク、一生大事にします!」
「……」
……なるほど。
サシュゴス人の奴隷を手に入れた人間が勘違いして手を出す理由がよくわかる。こんなに純粋な好意に見える態度で尻尾を振られたらそりゃあ「いける!」と思ってしまう。
だが俺は間違えない。この子はいずれキットに寝取られ……もとい。渡すために手元においておくだけなのだ。
「うん、よく似合ってるよ、めちゃくちゃエロい」
「えへへ」
俺の言葉に、リルがふにゃりと笑った。
……これはあれだな、先生や母上、トゥーンとたくさん触れ合わせてちゃんと育てないといけない。
今の俺の台詞はまっとうな褒め言葉ではなくてセクハラなのだから。
◇
帰り道。俺たちは竜車で屋敷へと帰宅する。ちなみにこの世界に馬車……馬はいなくて、代わりに小型の地竜を移動に使う。
なお、馬タイプのモンスターは実在する。ユニコーンやバイコーン、ヒポグリフなどだ。
竜車が人通りの少ない裏路地に差し掛かったところで、それは起きた。
「待っていたぞ」
路地の先から出て来る、複数の人影。
先程のカーネルの護衛三人と、新たに加わったらしい荒くれた男たちが五人。そしてカーネル自身も後ろに控えていた。
「やれやれ、熱烈なラブコールですね。そんなに僕の身体をしゃぶりつくしたいんですか、僕はデブ専じゃないんですが」
俺は肩をすくめる。
「な、何を言っているんだ気持ち悪い! ボクの目的はそこのサシュゴス人だ!
モッチーノ伯爵家の者が舐められて終わるわけにはいけないんだよ!」
「え、まだ舐めてないですがぺろべろ舐めてしゃぶっていいんですか?」
「いいわけないだろうが!」
まあそれはそうだ。
「へいへい、仲良し猥談はそのくらいにしてよエロガキーズ」
「誰が仲良しだっ!」
「そうですよ、中出しはしてないです、まだ」
「させる気永遠にねえよ!」
……ふむ。
いかんな、俺のスキルに対していちいちツッコミ返して来るこのテンポ、ちょっと面白い。俺の周囲にはいなかったタイプだ。
大抵は無視かスルーか逃げていく、だからな。
彼とは適度によいお付き合いが出来るかもしれない。
「ふ、ふん! ボクは猥談しに来たわけでも負け惜しみを言いに来たわけでもないぞ。
その奴隷、力ずくでもらっていこうと思ってな。家柄も財もあるボクにこそサシュゴス人奴隷は相応しい」
「家柄でも財力でもエドに負けてるけどね」
「うるさい! とにかく、怪我をしたくないなら大人しくしていることだな!」
カーネルが叫んだ。護衛たちが剣を抜く。
「ボクの護衛は腕利きだぞ。それにそこの荒くれ者たちは、闇の腕利きを集めたんだ。お前らみたいなガキ二人にどうにかできると思うなよ!」
なるほど、相応に準備はしてきたらしい。
しかし伯爵家の人間が辺境伯家の人間を襲って傷つけたらどうなるか。怒りと屈辱で頭に血が上って考えられなくなっている状況らしい。
だけどそうなってややこしいのはこちらも同じだ。いくら地位が下とはいう伯爵家の者を傷つけたなら、問題になりかねない。
「ロリ先生。ここは傷つけず、穏便にそして淫乱に場を治めましょう」
「淫乱はいらないけどね、OKしたよ」
先生が動く。
「悪いけど、寝ててもらうよ」
「睡姦ですね、いい趣味です」
先生は俺のセクハラを無視して、杖を掲げる。
「我メイジーメイ・ブラックが命ずる、我が敵よ、汝らは自覚せよ、己の疲れに、己の苦痛に。休みの時来たれり、瞼よ閉じろ。眠りの唄――」
これは確か、スリーピングメロディ。根源魔法のひとつだ。相手を眠りにつかせる魔法である。
「――っ」
「ぐっ……」
魔法に抵抗できず、その場で倒れる護衛達。
うむ、流石先生。ゲーム本編で雑魚と言われようと、実力はしっかりある一人前の中年魔術師だからな。
ならば俺も。魔術師メイジーメイ・ブラックの弟子として恥ずかしくない魔法を行使するのだ。
「我エドワルド・エルニズムが命ずる、我が敵よ、汝らは自分のエロさ自覚せよ。己の淫らさに、己の快楽に。絶頂の時来たれり、ハートの瞳、自慰の唄――」
「んひぃぃぃぃぃっ!」
「ぉほぉおおおおおおっ!」
男たちが悶えて転げまわりながら、自分のズボンに手をいれて悶えている。
うん、まあ、無力化には成功した。
「……師匠として恥ずかしいよ」
俺もである。なんだこれ。
「な、何をした……ば、化け物か!?」
カーネルの護衛たち全員が無力化され、残るはカーネルだけだった。
カーネルが青ざめる。
俺は彼に向き直る。
「さて、僕はあなたを傷つけるつもりはないので安心してください。しかし、このまま返すわけにもいかない――
「ひっ、やめ――」
「我エドワルド・エルニズムが命ずる、我が敵よ、汝らは自分のエロさ自覚せよ。己の淫らさに、己の快楽に。絶頂の時来たれり、ハートの瞳、自慰の唄――」
「んっひぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!! らめぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
路地裏にカーネル・モッチーのの絶叫が響いた。
「……またつまらぬものをイカせてしまった」
「本当だね。何なんだろうねこれ」
倒れ伏してびくんびくん余韻に浸っているカーネルとその護衛達を見下ろして俺たちはいう。
しかしこれなら、伯爵家に告げ口することは無いだろう。だって男の沽券にかかわるからだ。魔法でオ〇ニーさせられて絶頂して気絶しましたとか、俺なら口が裂けても父上に報告できない。
「す、すごいですご主人様!」
馬車の中からリルが声をあげた。
ちなみに御者の人はどん引きしていた。
「あんな魔法……初めて見たです!」
そりゃそうだろうよ。
「お姉様も流石でした! 二人とも、大魔術師なんですね! 実に鮮やか度見事です! ほ、ほれぼれしましたです!」
……。
めちゃくちゃ褒めて来るな。
これがサスゴシュ人というやつか。
「ふふん、もっと褒めて。いいねこの反応、近くに暴言親父とエロガキとツンデレちゃんしかいないから、素直に褒められるの久々だよ」
「ベッドでは身体をちゃんと褒めてるじゃないですか」
「だまれエロガキ。ていうか、この子私に頂戴」
「あげませんよ、この子は僕の性奴隷です」
ともかく、こうして俺は……ゲームヒロインの一人、サスゴシュ人奴隷のリル・フェーンを確保した。
これで破滅回避のためのピースがひとつ、である。




