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エロゲーの悪役貴族に転生した俺は、口を開けばエロワードしか喋れないセクハラ貴族だった  作者: 十凪高志


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第6話 音速の奴隷商

 奴隷市場というものに来るのは初めてだった。

 石畳の広場に木製の檻がいくつも並び、その中に様々な種族の人間が座っている。活気のある市場の喧騒とは少し違う、独特の重たい空気があった。


 俺の隣を歩くメイジーメイ先生が言う。


「目的を忘れないでよね、エロガキ。実験動物の確保だからね」

「わかってますよロリ先生。性奴隷確保です」


 何を言っているのだろう俺たちは。

 14歳くらいの少女と10歳くらいの少年が奴隷市場に来ているというだけでも異物感すごいのにこの会話である。

 周囲はひそひそとこちらを遠巻きに見ている。

 奴隷市場に子供ふたり。普通は入場すら禁止されると思う。

 しかし先生が耳を見せて「魔族だけど」と言うと、門番は通してくれた。エルニズム辺境伯家の紋章の効果もあったのだろう。


「さて……」


 俺は周囲を見渡す。

 檻には様々な人種年齢の奴隷たちがいた。


 改めて確認すると、目的は俺のスキルの効果を試すための奴隷を探す事だ。

 特に、性交することによっての魔力増強が先生以外でも、魔族以外でも効果があるのかどうかの確認。

 妹や母上との近親相姦背徳祭りを回避するために必要なのである。


「お父さんと試すと言う手もあるのよ?」


 という母上の、父上の暴言スキルを軽く凌駕する言葉は聞かなかったことにした。

 この世界がいくらエロゲーだとしてもBLはジャンル違いである。


「どんなエロ奴隷を買うか……」


 発言が間違っていないのがちょっと悔しい。そうだよな、要するに性奴隷を買いに来たのは事実なのだ。

 ……俺はスキルに支配されてないよね、うん。まだ俺は人間だ。


「護衛に使えて、頭が回って、長く仕えてくれる子がいいね。種族は問わないけど、できれば魔法適性があると理想的だね」

「ロリ先生の言う通りです。強くエロく従順な子を」


 少し高望みすぎかもしれないが。


 改めて歩く。

 様々な種族がいた。獣人、亜人、中には魔族に近い血を引く者もいる。

 人間に近いものもいれば、二足の獣としか見えないものもいた。

 しかしどの檻を見ても、ピンとくるものがない。


「……」


 そして。

 俺は足を止めた。


 ……いた。


 その少女には、見覚えがあった。

 銀髪。犬耳。犬の尻尾。

 俺の記憶よりも随分と小さいが……それもそうだ。

 彼女を見たのは、ゲーム本編が始まってから。今から五年ほど後に、俺……いや、「主人公」が彼女と出会う。


 そう、彼女はリル・フェーン。

「ウェンロッゲ王国戦記」におけるヒロインの一人だった。


 俺と目が合った。


 彼女は怯えなかった。ただ静かに、こちらを見ていた。

 金色の瞳で。値踏みするでもなく、縋るでもなく。ただ、静かに。


「……うわ、小さいね。まだ五歳くらいかな」


 先生が言う。確かにゲーム本編でもロリキャラ枠だった彼女は、現時点ではそのくらいだろう。


「しかしサスゴシュ人か。珍しいね」


 先生の言葉俺は頷く。


 サスゴシュ人。

 他のゲームでは見られない、この世界独自の人種、亜人種族である。

 外見はいわゆる獣人で、様々なタイプの獣の耳と尻尾を持っている。場合によっては角も。

 だがサシュゴス人の特性は獣人であることではない。


「――奉仕種族」


 ロリ先生の言葉が静かに響く。

 そう、サスゴシュ人は奉仕種族だ。

 他種族、他者に従い仕え奉仕するのが本能として刻み込まれている種族。それゆえ、奴隷を禁止している国ですら、サスゴシュ人は「種族の文化を尊重するため」と奴隷制度を特別に許可しているほどである。


 大昔、とある国が完全奴隷制撤廃を掲げ実行し、サスゴシュ人を奴隷から解放した。

 そしたら、サスゴシュ人たちはひと月も立たず次々と衰弱死していったという記録が残っている。

 誰かに奉仕しないと生きていけない。そういった種族なのだ。


「しかし、この子だと……私たちの目的には難しいかもね、うん」


 先生が唸る。

 幼すぎて流石に性的交渉は出来ない。こんな子と【児ポ】なんて出来ないだろう。

 だが、それだけではない。


「サスゴシュ人は、誰にでも尻尾を振るが誰にも股を開かない」


 という諺がある。

 奉仕種族の奴隷、誰にでも従順に従う彼らは、しかし特定の相手としか性的交渉を行わない。

 とあるサスゴシュ人の奴隷主人が自分の奴隷であるサスゴシュ人に性的奉仕をさせようとした瞬間、今まで従順で好意的だった彼女はその場で窓をぶち破って風のごとき速さで逃げ出したという記録がある。

 また、奴隷の犯行を防ぐ隷属の首輪を装着させたうえでサスゴシュ人と事に及ぼうとしたら、首輪の強制力を破って自害したり、自爆したり、主人を殺したりしたという例もある。


 サスゴシュ人を抱ける、あるいは抱かれるのは選ばれた者のみだという。その条件は個体ごとに違うと言われているが、いずれにしても非常に稀有なケースだということだ。

 サスゴシュ人の奴隷の主人というだけで、非常にステータスだという。


 ゲーム本編では主人公キットは彼女を抱く事が出来た。

 つまり……おそらく俺では無理だろう。


「では、この子はハメられませんね。ヤれない女に意味は無い」


 言い方は我ながらひどいがその通りだ。幼すぎるしどっちにしろ無理である。それに、歴史が進めば彼女はやがてキットが救い出し、彼の所でヒロインとして生きることになる。主人公の専属奴隷となる彼女はどんなルートでも主人公のそばにいてそれなりに幸せになる。

 なので、ここで何もしなくてもよいのだ。むしろ、俺はキットに倒される破滅を防ぎたいが、しかしキットを倒して貶めたいわけではない。世界の主人公である彼にはいずれ復活し侵攻してくる魔王を倒すと言う使命もある。

 そのためにも、彼女リル・フェーンはキットと巡り合うべきだろう。サシュゴス人の戦闘力は高いのだ。


「おお、お目が高いですなあぼっちゃん」


 俺が彼女を見ていると、恰幅のいい奴隷商人が揉み手をしながら近づいてくる。


「幼すぎるとみな無視するので外れ商品のように思われていますが、これは中々のレアな一品でありましてね」


 奴隷商人がそう言う。

 ここの客はロリコンが少ないらしい。いやロリコンだろうと流石に五歳児に興奮し手を出すのはやりすぎであるということなのだろう。

 ゲームでは出せない性癖である。さすがにペドすぎる。


「このくらいの幼いロリなら、店頭に出さずに施設で育てるんじゃないの?」


 ロリ先生がロリについて質問する。目くそ鼻くそとはこのことだろうか。


「……本来ならそうなんですけどね、本人のたっての希望なのですよ。

 彼女はサスゴシュ人、奉仕種族で奴隷希望でしてね。

 もう誰かに従いたい奉仕したいといって自ら店頭に立ってるのですよ」

「……へえ。すごい性癖だね」

「まあ、それがサスゴシュ人の性質ですからね。だからこそこちらとしてもお客さんを見極めないと証人としての沽券にかかわるわけですが」


 それはそうだろう。

 サスゴシュ人の性質を考えれば、変な主人が当たれば容易に殺人事件にすら発達しかねない。

 なにせ隷属の首輪の強制力を無視して脱走したり主人殺害したりするのだ。

 そしてそういう性質が知られているとはいえ、馬鹿は一定数存在する。

 俺なら大丈夫俺だけは大丈夫だぐへへへへいただきまーす、と襲い掛かって手痛いしっぺ返しを食らう主人は多かったという。

 なにせ従順な奉仕種族だからな、ある意味普段の態度に騙されるというわけだ。


「その点お客さんたちは……辺境伯家の御子息に、そこの魔術師さんだ。心配はいらないでしょうしね。お代の方も……」


 奴隷商の揉み手が加速した。

 まあ確かに父上から金はしっかりと渡されている。

 500万ズェニ。日本円換算で五億円相当である。いや持たせ過ぎだろう。先生は「この親バカ」と言っていた。

 息子の性奴隷を用意するため五億円をぽんと出す父親。

 こういえばいかにも悪徳大貴族だな。


 しかし重ねていうが、俺には彼女を買う理由がない。幼すぎるしゲームのヒロインだし。

 ここは、ゲームヒロインが実在するので確実にあのゲームの世界あるいはあのゲームを模倣している(されている?)世界だという確認ができただけで収穫である。


 そう思い、立ち去ろうとすると――


「……?」


 ふと、服の裾が引かれた。

 見ると、彼女――リルがこっちを見ながら、牢から手を伸ばして俺の裾を掴んでいた。


「おお、おお、気に入られたようですなあ!」


 奴隷商の揉み手が音速の領域に突入した。


 落ち着け。彼女は誰にでも尻尾を振るサスゴシュ人だ。だから偶然目が合っただけの俺に買ってくださいと媚びて来ても当たり前の事だ。特別でも何でもない。

 だが……。


「……」


 俺をじっと見ている。

 よし、考えを変えよう。

 この子を買っても俺は性的に手を出せない。

 なら……あえて購入して、大事に育てよう。護衛だけなら育てば使える。そして、いずれ主人公キットに出会えば、彼に譲る……というのはどうだ?

 これでリルとキット両方に恩を売れる。好感度を稼げる。そして破滅を回避できるという寸法だ。

 そう考えると、500万ズェニの出資も安いものだ。もともと父上の金だし。


「……よし」


 購入の意志を決め、俺は奴隷商に向き直る。

 値段交渉に入ろうとした、その瞬間。


「待ちたまえ」


 甲高い声が割り込んできた。


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