第17話 トゥナーリ砦視察
トゥナーリ砦は、魔族領との国境に築かれた石造りの要塞だった。
高い城壁。重厚な鉄門。そして城壁の上に立ち並ぶ弓兵たち。
そこには辺境の最前線らしい、緊張感のある空気が漂っていた。
俺たちが到着すると、砦の正門前に騎士と兵士たちが整列して出迎えた。
「けっ、どいつもこいつも騎士や兵士どころか山賊みてぇなツラしてやがる」
そう父上が吐き捨てる。
確かに、優雅な騎士――とはとても言えない雰囲気の騎士、兵士ばかりであった。
特に兵士たちはモヒカンだったりナイフ舐めてる奴もいる。世紀末すぎない? 流石辺境である。
「バッドワルド辺境伯閣下、ようこそおいでくださいました!」
先頭に立った騎士が礼をする。
さながらオーガに騎士鎧を着せて礼節を叩き込んだ、といった感じの騎士だった。顔とのギャップがすごい。
「生きてたか雑兵ども。俺が視てないからといってなまけてたんじゃねぇだろうな」
「ご安心ください。見てようが見てまいがこの辺境では怠けてる奴から先に死にます!」
笑顔ですごいことを言ってきた。やはり流石は辺境である。
「いいか貴様等、今回は酔狂なことにお姫様が視察に来てる!
見せてやれ、お姫様に辺境の洗礼ってヤツをよお!」
「オオオオオ!」
騎士と兵士たちが雄たけびを上げた。
うーん怖い。
見てください先生なんかちょっとビビって震えてますよ。
「ふ、震えてないし。これは武者震いだし」
「わかってますよ先生。ナカにいれてるマジックアイテムが震えてるからですよねぶるぶるって」
「違わい」
先生は結構ギリギリ平常運転だった。
「ふ、ふんなかなか逞しいじゃない、でも頼りになるなんて思って無いんだからね!」
トゥーンは平常運転だった。
父上を見慣れているからな。
それはそうと、王女は――
「頼れそうな方々ですね」
動じていなかった。まあ俺や父上の言動に動じないから当然か。
「しかし姫様か……大将のガキどもはどうでもいいが流石にお姫様は丁重に扱わねぇとな」
騎士が言う。よし顔は覚えたぞこいつ。
「おい、メイキーシ騎士見習い!」
「はっ」
騎士の言葉に、一人の少女が前に出る。
年齢は十二歳ほどか。
濃紺色のポニーテール、引き締まった身体に鎧を纏っている。
目つきが鋭く、口元は一文字に結ばれていた。
……見覚えがある。ゲーム本編で見た顔だ。
ローズクッコ・メイキーシ。
王女リンセの護衛を務めることになる女騎士。ゲーム本編ではキットのヒロインの一人だった。
……なるほど、この時点ではまだ騎士見習い。そしてこうやって王女と出会ったのか。
「貴様は姫の護衛につけ。大将、よろしいですね」
「ああ、かまわん。もっとも姫には今、うちの愚息が護衛についてるがな」
「大将のガキが護衛……? 大丈夫なんすかい、そいつ」
「さあな。おい愚息、挨拶しろ」
父上の言葉に、俺は前に出る。
「初めまして。紹介に預かりましたビンビンな愚息、愚息もビンビンエドワルド・エルニズムです。
しかし……」
俺はローズクッコを見て言う。
「気が強そうな子です。さぞやアナルの弱い女騎士になるでしょう」
なんでそうなる。
確かにネットミームで気の強い女はアナルが弱いってのは聞いたことあるけど。
そしてそれを聞いた彼女は――
「くっ……殺す」
あれ、この子も言語機能バグってない?
そこは辱められたくっ殺せだろう。
「落ち着いてください、ローズ」
隣の騎士見習いの少女が慌てて諫める。
なるほど、愛称はローズらしい。
「これが落ち着いていられるか! 辺境伯のボンボンが権力をかさに着て、姫様の前で私を侮辱したのだぞ! くっ殺す!」
仰る通りです。返す言葉もございません。
今のは完全に俺が、というか俺の口が悪いよ。
「あな……る?」
「穴を掘るの略です。つまり掘削作業が苦手ということですね、あとドリル攻撃にも弱い」
王女に対して先生がフォローを入れてくれた。
それに対してドリルとは? とまた質問を繰り返しているがまあそれはどうでもいい。
「いいか辺境伯の息子、この辺境の地トゥナーリ砦は実力と実戦がものを言う力が掟の地だ!
この私を姫様の護衛として分不相応だと侮辱するのなら……」
そんな事、一言も言っていないが。
「ここで貴様の実力を見せてもらおう!
エドワルド・エルニズム、貴様に決闘を申し込む!」」
そしてローズクッコは自分の手袋を脱ぎ、そして俺に投げつけて来た。
避けた。
「避けるな! 殺すぞ!」
「殺すっていちいち喘いでる人の相手できますか。鳴くのはベッドの上だけでお願いしますよ」
「……!」
ローズクッコの顔が紅潮する。まるで真っ赤な薔薇のようだ。
そこに、
「決闘ですか。私はまだ見た事無いです、見てみたいです」
リンセ王女がぶちこんで来た。何言っているんだ。
「ナニをイってるんですか」
「いいじゃないか愚息よ。そこの小娘の言葉は正論だ。それとも怖いのか」
「相手は女の子ですよ。饅頭怖い的な意味でならとても怖いですね」
父上の言葉に俺は言う。しかし周囲を見回すと、決闘しろ実力見せろという雰囲気に染まっていた。
……ここで拒否を貫けば、やっぱり破滅ルートに突き進みそうだな。
「……ふう」
……仕方ない。
「わかりました」
俺は落ちた手袋を拾い上げ、
「その決闘、たっぷりとねっとりとお受けしますよ」
そしてぺろりと舐めた。
「ひっ……殺す」
ローズクッコは引きつつも俺を睨んで来た。
……。
俺のスキルってあくまで言葉や、言葉からなる魔法だけのエロ改変だよな?
今俺、めっちゃセクハラな行動してしまったが……大丈夫か俺。いやまだ俺は大丈夫なはずだ。肉体関係も先生としかしてないし。
ともあれ。
俺はローズクッコ・メイキーシと決闘することになった。




