第10話 王家襲来
「……おおぅ。出来た」
エルニクス辺境伯家の屋敷の裏にある魔法修練場。
そこで我が師匠、メイジーメイ・ブラックは自分の魔法に感嘆の声を上げた。
彼女が行った魔法はファイヤーボルトだ。しかし……
「無エロ魔術、ですか」
「無詠唱だっつーに」
俺のセクハラに先生がどや顔で突っ込む。
そう、先生が行ったのは無詠唱魔術。詠唱を行わずに魔術を行使する高等技術だ。
「これ使えるのは少ないんだよね。ふふふ、日々の訓練の成果だね」
「夜の訓練の成果ですね」
「それに関してはマジでそうだね」
先生が頷く。
俺達は魔力強化の実験として日々【おねショタ】している。
なお、先生以外の相手と致せばどうなるか……その実験はまだ行っていない。
本来、そのために奴隷を買いに行ったのだが、そこで購入した少女リル・フェーンはゲーム本編のヒロインだったので手を出すわけにはいけなかった。
もっとも、ヒロインでありサスゴシュ人でなくとも、流石にあの年齢の少女にエロいことは出来ないが。
「最近は魔力の増加も少なくなってきたけど……それでも魔力値はついに90台の大台だよ。90以上の魔力値なんて宮廷魔術師クラスなんだぜぃ。
ふふふ、エロガキのこの力は絶対に世に出せないね、マジで」
ゲーム本編では雑魚扱いされていた先生だったが、随分と強くなったようだ。無詠唱魔術も使えるようになった彼女は、もはや終盤ボスキャラ級の強さはあるのではないだろうか。
「まあ、夜は弱点だらけですけどね」
「うるさいドスケベ小僧」
「僕をこうしたのはロリ先生ですよ。前までは僕はただの口だけのチェリーだったのに」
それはともかく。
「ロリ先生。無詠唱魔法ってどういう仕組みなんですか。普通の魔法は、精霊や自分などにエロく囁く事で発動でしたけど……」
「そうだね。でもね、精霊や世界っていうのは、言葉じゃなくて心……思念でも伝わるんだよ。ただし、それには強い魔力と、強いイメージが必要だけどね」
「エロいイメージ……ですか」
「イメージは大切なんだよ、魔術の根幹だね。
むしろ言葉は、イメージを伝える補助にすぎないんだよ。
秘訣はそうだね、簡単に言うと……水泳や乗馬と同じかな。ああいうのってさ、一度覚えるまではいちいち行程を必死に考えて確かめながら行うよね」
「なるほど。慣れないうちはいちいちどうやって脱がすかボタンの外し方はどうかブラのホックはどう外すのかはパンツはどう降ろすのかと考えながら脱がすけど、慣れてしまえば何も考えずに脱がせる……という感じですね」
「そういう感じだね。イメージだけで、いちいち考えず確認せずに全ての行程を構築し、精霊、己、世界、神に伝える。
それが為された時、無詠唱魔術は成功する。
だからこれはエロガキ君の力だけじゃないよ。私の日々の訓練の賜物なんだぜ」
「ええ、わかってますよ。先生が日々エロ妄想にふけって努力していたことは」
魔力が高ければ無詠唱が使えるというわけではない。まさに本人が言うように努力のたまものだ。
「……無詠唱だと僕の魔法はどうエロくなるのでしょうか」
というか、もしかしてエロくなくなるのではないか。
僕の口が放つセクハラで魔法が変質してしまうのならば。
イメージだけで放つ無詠唱魔法なら……あるいは!
「試してみたらいいよ。魔術の世界は理論も大事だけど何よりも実戦だからね。無詠唱は難しいにしても、陰唱とか」
そして俺は目を閉じる。
陰唱。
それは、呪文を口に出さずに唱えるものだという。
魔術の発動にかかる時間は変わらないが、詠唱が相手に聞こえないので戦闘時は便利だと言う。
そう、口に出さずに使えるなら……あるいは!
俺は心の中で呪文を構築する。
炎の精霊よ、我エドワルド・エルニズムが命じる。その怒りを解き放ち我が敵を獄炎で焼き尽くせ!
そして――
藁の目標は――
「あひぃいいいいいいいいいいいん!」
……。
変わらなかった。
普段通りくねくねと嬌声を上げた。
「さ、さすがですご主人様!」
見ていたリルが感動の声を上げてくれるが、目標はこうじゃなかったんだよなあ。
「……ふむ、陰唱でこれかぁ。無詠唱でも変わらないかもね。
おそらく君の祝福は、きっと因果そのものを書き換える強力なものなんだよ」
「淫果……ですか」
「うん。物事には原因と、そこから導かれる結果がある。それが因果律。
それをズバって書き換えてる」
「……つまり、どんな原因でも結果としてエロくなる、ですか。天国ですね」
地獄じゃねえか。
「だけど、その祝福も無詠唱に簡単に至れるってわけではないね」
それはそうだ。
あくまでも結果を書き換えるものであり、結果を早めるものではないからな。
「だけどまあ、エロガキもすぐに無詠唱に至れるとは思うよ。君も頑張ってるし、それにリルっちもいるしね」
「リルが……ですか?」
「うん。サスゴシュ人の応援スキルって知ってる?」
「いえ……」
「サスゴシュ人が重宝される理由のひとつにね、サスゴシュ人が応援するともものすごい増幅効果があるんだよ。
さすがご主人様、ご主人様頑張れって応援される事でね。
魔族の間に伝わっているこんな話もある。
かつてとある魔界貴族がいた。そいつはね、ものすごいデブちゃんだったんだよ。体重300キロは超えていて、歩くのも大変だったくらいに。
そしてその貴族は、一人のサスゴシュ人を奴隷にした。
そしたらその奴隷が言ったんだよ。
ご主人様は今でもその巨体が頼もしくたくましくて素敵です、でも鍛えて絞ればもっと素敵になりますよ、さすがご主人様です……って。
そしてその貴族はダイエットを成功された。
その贅肉全てを筋肉に替えて引き締まり、めちゃくちゃ強くなり、そして魔王となった――」
「それはまた、夜も励んだんでしょうね」
「うん。そしてそのサスゴシュ人の応援によって主を鍛える祝福の名を――
【サースーゴッシュ法】と呼ぶ」
ハーバーボッシュ法じゃねえんだぞ。
だけど確かに、ゲーム本編でもリルを仲間にしていると経験値上昇率が上がるんだっけか。
「彼女がいれば訓練の効果が劇的にあがる。だから君もすぐに無詠唱に至れると思うよ。
……うーん、私と【おねショタ】してる時にリルっちにがんばれがんばれさすがですご主人様ってサースーゴッシュ法で応援されたら魔力強化にバフつくのかな」
「さすがに五歳児の前で見せつけ露出プレイは僕でも引きますよよロリビッチ先生」
それは色々とやばい。
「君って変なところで常識的だよね」
「僕の性癖はいたって普通ですよ」
そんな時だった。
「た、大変ですわお兄様!」
妹、トゥーンが血相を変えて走ってきた。
「どうしたトゥーン、生理でも始まったのか」
「違うわよっ! そうじゃなくて、大変なのですわ、すぐにお戻りくださいませ! あれを――」
トゥーンが空を指さす。
そしてほぼ同時に、巨大な影が日差しを隠した。
雲――? いや違う、あれは――!
「飛空艇……!」
浮石と呼ばれる精霊石を使用した、プロペラで飛ぶ巨大な船――
そして船体には、18の数字にスラッシュ(/)をかぶせ、両手のひらを描いた意匠に似た紋章……ウェンロッゲ王国の紋章が刻まれている。
前世の日本ではエロゲやエロマンガに使われていた18禁マーク、それによく似ているがれっきとした国章だ。
それを船体に大きく記す事を許された船。
まさか……!
「騎士団……!?」
ウェンロッゲ王国王宮騎士団。
それが意味するのは――
王家の襲来であった。




