【番外編】閑話・ルル
ルルはわがまま3歳児。
今日も日向ぼっこついでにゼファルの膝を占領してやった。
なんか難しい文字がたくさん書かれた紙をめくっていたが気にするもんか。その上にでーん!と乗っかって腹を出していたら「こらこら」って膝に乗せてくれたんだ。
オレは悪くないぞ。ゼファルが乗っけてくれたんだ。
「ルル、ずるい。わたしも」
メリアが椅子の横でぴょんぴょん飛びながらゼファルにお膝をねだっている。
ふふん。オレが先なんだからもうメリアが乗る場所なんてないんだぜ。
「ルル、ちょっとだけごめんね」
そう言ってゼファルはオレを両腕で抱え、持ち上げる。そこにメリアが凄い勢いで挟まってきた。
ぐおっ
気がつくとオレはメリアの膝に乗せられていて、ゼファルはメリアを抱っこしたまま、また紙をぺらぺらするのを始めた。
『オレが先にいたのに~』
「ふん。おじちゃんのお膝を独り占めしようなんて、甘いのよ」
『オレ、今日もたくさん働いたぞ』
ちら、と見遣った先には布袋いっぱいの聖霊樹の実。
今日はなかなかいい木を見つけられて、大きなのがいっぱいとれたんだ。
たぶんあのギルバートとかいう目の細い男も感動するデカさだと思う。
だからゼファルはオレをいっぱい褒めるんだ。
褒めないとダメだ。
「うん、ルルは今日も頑張ってくれたよね」
紙を見ながらでもオレたちの会話は聞いているらしく、ゼファルの手がオレの背にポンと乗った。
そしてスーッと軽い手つきで毛皮を撫でていく。
強すぎず、軽すぎず、このゼファルの絶妙ななで方がくせになるんだ。
オレは尻尾をしびびっと揺らしながら、ゴロンと腹を出した。
「いつもありがとう」
『いやぁそれほどでも~』
「助かってるよ」
『あんなんいくらでもとってくるぜ~』
ゴロゴロゴロゴロ……
喉が勝手に音を立てる。
だってゼファルがお腹撫でるの気持ち良いんだ。
「……おじちゃん、わたしは?」
不意にメリアが顔を上げ、ゼファルをのぞき込んだ。
「メリアもとっても頑張ってくれているよ。ありがとう」
「ぐたいてきに」
「そうだねぇ、治癒魔法を使ってくれるし」
「そうね」
「あと、黒くて悪い気みたいなのが集まってると、払っておいてくれるだろう?」
「……」
メリアの動きがぴたりと止まった。
でもゼファルの様子はいつも通り、にこにこしている。
「いつも、助かってるよ。メリア」
「おじちゃんが無事ならそれでいいのよ」
ぎゅっとメリアがゼファルの服の袖に引っ付いた。
オレは仕方なく腹を出すのを止めて、安定感のある箱形になってメリアの膝で大人しくしておく。
「メリアは優しいねぇ」
「……貴方ほどじゃないわ」
ぽつりと最後に呟いたメリアの声は、いつもより少しだけ低くて、ゼファルには聞こえなかったみたいだ。
メリアはギラッと底光りする目で虚空を見つめて、オレの背に手を当てた。
「ルルも見つけたら、手伝ってくれるよね」
『お、おう』
「おじちゃんのそばは、いつもキレイに。……ね」
ぞぞぞっと背の毛が逆立つような声で言ったメリアは、そのまま目を瞑って、ゼファルに寄りかかり眠ってしまった。
オレも一瞬緊張した身体を緩め、ゼファルが紙をめくる音に耳を澄ませる。
ぱら、ぱら、と乾いた紙の音……聞いているうちに瞼が落ちてきて、オレはいつの間にか熟睡していた。
白猫ちゃんはいつも我儘ですが
メリアには敵わないのをしっています。
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