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悪役イケメン王子に転生しちゃったおじさん  作者: 天城


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第14話 おじさまの生存戦略①





「殿下の仰る通り、例の組織は存在していましたが……」

「ゼファル様! 本当にあのようなならず者たちを引き入れるおつもりですか!?」


(未来の君たちの仲間なんだけどなぁ)


 穏やかに笑った宗一郎は、ライラにもう二人分の昼食を頼んだ。


「いずれね、手を借りることもあると思うよ。お疲れ様、とりあえず昼食にしようか」


 宗一郎は今日、ルードとラフィセルに仕事を頼んでいた。

 原典でも活躍していたレジスタンス組織と接触をさせたのだ。彼らは数年後には『反乱軍』となりラフィセルが王都に戻ってくるときの協力者となる。


 現国王の崩御前なので、まだ組織の規模も小さいはず。()()()ではなく()()()の組織として抱き込むなら今である。

 原典では、ゼファル率いる貴族たちの自分勝手な執政により市民の鬱憤が溜まっていき、組織の勢力が拡大していくのだ。

 

(今は権力者に不満を持つ者たちの集まり……くらいなんだろうね)


 それにしても、と宗一郎は戻ってきたばかりの二人の姿を改めて眺めた。

 平民の旅人に偽装したその姿は原典の挿絵や表紙にも使われたことがある、彼らの公式の隠密スタイルだ。


 ラフィセルはもう少し大人になってからこの装束を身につけることになるが……ルードはそのまま挿絵から飛び出してきたかのようだった。


(似合ってるね、なんて言ったら失礼か。相手は近衛騎士なんだから……でも)


 宗一郎は原典ファンである。

 つい視線がルードを追いかけて、メリアがパンを差し出しているのに気づくのが遅れた。


「ぱん!」

「あ、ごめんねメリア。ありがとう」

「……殿下? どうかなさいましたか」


 さすがに凝視しすぎたか、ルードが問いかけてくる。

 不思議そうなラフィセルやギルバートからも視線を浴びてしまい、何もないとは言えなくなった。


「ああ、いや……格好良いね、ルード」


 ガターンッ! と椅子が倒れた。

 ルードはその場で赤面したまま固まってしまい、動揺して椅子を倒したのはラフィセルだ。

 わなわなと震えながらラフィセルは宗一郎に飛びついた。


「ルードだけ!? ルードだけですか!? 僕は!?」

「あ、ああ……今日も可愛いねラフィセル」

「嬉しい! けど違うんですゼファル様ぁ~!!」


 わんわん、と泣き出したラフィセルが膝に縋っているので、メリアが迷惑そうな顔をしている。

 どうしたものかと困って顔を上げた宗一郎は、ルードが石化しているのに気がついた。

 さすがに子供っぽい感想だっただろうか。


「ルード、他意はないので」

「は、……はい、あの」

「体格が良くてそういう格好も見栄えがするなぁと」

「……」

「強そう、ていうのは本職には失礼かな。頼もしい?」

「……」

「少しみとれてしまっただけだよ」

「……~~殿下ッ、もう、どうかそれくらいに……ッ!」


 ルードが今にも死にそうな声を上げて、部屋からドタバタと出て行ってしまった。

 廊下ではライラが食事の皿を持ったまま唖然としている。


(おや、なにがいけなかったんだろう)


 首を傾げた宗一郎は、メリアに袖を引かれて視線を落とした。


「おじちゃん、だめよ、ルードはずかしがり、なの」

「そうだったのか。後で謝っておくね」

「……そういう問題じゃないと思いますけどねぇ」


 糸目をもっと細めたギルバートが、呆れたようにため息をついて首をすくめた。


「慣れてるつもりでもダメなんですね。相変わらず人たらしで罪作りな殿下……」


 ラフィセルは宗一郎の膝に縋りながら、ぶつぶつと『筋肉……身長伸ばす……筋肉、筋肉はすべてを解決する……』などと呟いていた。


      ‡


 

 レジスタンス組織の実質トップである『レナード』という男と、直接面会をすると言い出したのは宗一郎だった。


 なにせ前世では、元人事部。

 総務部長となった後も数多の新入社員、中途採用の面接をしてきた。


(さて、原典で人となりは把握しているものの――実物と多少違いはあるだろうね)


 ギルバートやラフィセル、ルードなどの登場人物は、宗一郎の知っている『原典の彼ら』とはだいぶ印象が違う。

 しかし、根底の部分に変わりはないと思うのだ。

 弱点と言うと聞こえが悪い。……ただ彼の譲れないもの、唯一無二を宗一郎はよく知っていた。

 準備は万端だ。


 トントン、とノックの音がしてライラが「お客様がおみえです」と声をかけてきた。


「ありがとう。――入ってもらって」


 巨体を屈めて扉をくぐり部屋に入ってきたのは、片目に眼帯をした厳つい男だった。

 身長は余裕で二メートル以上あるだろう。岩のようにごつごつした腕の筋肉が服の上からも見てとれる。


 男は宗一郎の方をギロリと()めつけるように見て――


 一瞬にして相好を崩した。


「白猫ちゃあぁぁん!!」

『ゲッ、きもっ……なんだアレ気持ち悪い!』


 ルルは宗一郎の膝の上で毛を逆立てている。


 ……反乱軍のトップ『レナード』は、無類の猫好きだった。

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