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悪役イケメン王子に転生しちゃったおじさん  作者: 天城


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第11話 おじさま、ようやく現状把握②






「母上、本日はお時間をとって頂きありがとうございます」

「まあゼファル、親子なのだからそんな風に言わないで」


 翌朝、宗一郎はゼファルの母・王妃エリーザベトの住む緑泉宮へ来ていた。

 

(なんとも儚げで、まさにお姫様だ)


 ピンクブロンドに朱色の瞳、少女漫画から抜け出してきたかのような甘い顔立ちの美少女……いや、美女だ。

 ゼファルの母なのだから年齢は四十近いはずだが、到底見えない。


 そんな王妃を前に、宗一郎は困っていた。

 計画が上手くいくかどうかは、敵を断罪するときに彼女の助力が得られるかどうかにかかっている。


「……母上、今日はお願いがあって参りました」


 同じ色の瞳が合う。

 

「話してごらんなさい、私の愛しい子」


 鈴を揺らすような声で、エリーザベトは囁いた。


      ‡

 

 宗一郎は半日ほど部屋に籠もり、原典を開いて一度物語の中の問題点を洗い出した。

 まず王の死が不審だ。人間五十年どころか四十路でそんなに簡単に死ぬだろうか。


(医者にもかかれる環境で生活だって裕福なのに……)


 ここで王が病に倒れて、助かるのはゼファル陣営だ。

 そして窮地に陥るのはラフィセル。

 ならこの事態そのものを引き起こしたのも、もしやゼファル陣営の誰かが手を回したからでは?


 そう考えたので、宗一郎はルードに頼み込みメリアを連れてさっさと王の寝所へ忍び込んだ。『いたいたい、とんでけ』をしてもらうためだった。

 ちなみに黒瘴症などでない限り、神聖力で病は治らない。

 聖女の力で治るのは外傷と毒などで害された内臓だけだった。


『ちょっとなおったよー』


 さすがはメリア。回復の兆しが見えて原因がわかった。

 これは毒だ、と。

 今度問題になるのは毒殺を計画した者のあぶり出しである。


『父上、暫くは体調が変わらないフリをしてください。また治しに参ります』

『わ、わかった。……すまないな、ゼファル』


 最初は不信感の滲んだ目をしていたが、実際神聖力を注がれて身体が楽になると、信じる以外にないのだろう。


 その謝罪は、今日きたときの不審そうな態度に対してか。

 それとも今までの仕打ちにか。


『謝罪は、母上へお願いします』

『えっ……あ』


 それだけ言うと、宗一郎はその場を後にした。

 用事が立て込んでいる。


『……』


 ルードが微妙な表情をしていたが、メリアはジト目でにんまりしていた。









「――そう。陛下のお身体はよくなったのね」


 宗一郎が話している間、ずっと静かに聞いていたエリーザベトは安堵のため息をついた。

 政略結婚であっても、彼女なりに夫への愛はあるのだろう。


「ごめんなさい。貴方の後ろ盾がなくなるのが怖くて、私はお父様のいいなりで」

「いいえ、お気持ちはよくわかります」

 

 今のラフィセルの現実を見ればわかる。

 王宮で後ろ盾もなく過ごすことがどれだけ危険か。


 宗一郎はそれに関して誰かを責めようという気はなかった。

 しかし――


「ゼファル、貴方の好きなようになさい。……(わたくし)も手伝いましょう」

「ありがとうございます」


 ソファに向かい合って座り、穏やかに微笑むゼファルを見てエリーザベトはぱちぱちと目を瞬かせた。


「……しかし母上、たとえ政略結婚でも父上には貴女を守る義務があったと私は思います」

「はい?」

「夫としても王としても、目が行き届かず母上を危険に晒したこと。きっちりと灸を据えてあげなければと思うんです」

「はぁ……」

「それに最適な人物をお連れしました。……どうぞ、入ってください」


 宗一郎がドアの方へ声をかけると、ラフィセルとルード、そして背の高い女騎士が入ってきた。

 姿勢の良い、キリリとした目元の美しい騎士だ。

 彼女は短いマントを翻し、礼をした。


「セフィラ・モーガン、(まか)()しましてございます。王妃殿下」

「まあ……!」


 一言発した後は何も言えなくなっているエリーザベトに、宗一郎は改めて紹介した。


「ラフィセルの母君です」

「存じていますわ。凜々しいモーガン卿のお姿は、貴族の令嬢たちの憧れですもの」


 はしゃいだ声が上がった。


(おや、反応が予想したのと違うな)


 まさか貴族の淑女が喧嘩など始めたりはしないだろう。

 そう思っていたが、エリーザベトがセフィラを見る目はとんでもなく好意的だ。 


 寵愛を競う正妃と側室の間柄だとは思えない。


「恐れ多くも御前(ごぜん)にまみえ恐悦至極(きょうえつしごく)にございます」

「もっと砕けた話し方でいいのよ、私も陛下を真似てセフィと呼んでいいかしら」

「もちろんでございます王妃様」


 セフィラの態度は王族の護衛騎士そのものだった。


「よかったら、私もエリーゼと呼んで頂戴」

「よろしいのでしょうか。――エリーゼ様」

「ええ、ええ! もちろん、嬉しいわセフィ。ずっとお話ししたかったの」


(なんかまるで宝塚だな……)


 宗一郎はふと、羨ましそうな目で二人を見つめる護衛騎士と側仕えに気がついた。

 ラフィセルなどすっかり涙ぐんでいる。

 きっと母親と王妃が打ち解けて嬉しいのだろうと宗一郎は解釈した。

 

(喧嘩しないでよかったよね……)


 なんだか上手くいきそうだと、宗一郎は緑泉宮で出された美味しいお茶を楽しんだ。




「僕も早く騎士の誓いがしたいなあ……」

「ラフィセル様、王族は王族に誓いは立てられませんよ」

「え゛っ……」


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