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敗北した元勇者の放蕩の旅  作者: 頂 有栖
第1章 ヘルヘイム編

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冒険の書 X5

「京介、説明を求める。この女誰?京介の相棒は私、カオスヘイローだけと認識している。これは立派な浮気。」


『んー…あ、やっと起きたんだねー。こんにちわー、アイはアイだよー。』


「………私はカオスヘイロー。よろしくはしなくていい。」


状況が状況だけにアイを起こして3人での話し合いを開始する。ずいぶん険悪な雰囲気だが大丈夫だろうか。


「浮気て…。アイはホーリーヘイロー…今はカオスヘイローなんだっけか。の中にこの子が居るの気づいてたのか?」


『なんとなくかな。ボロボロだったし、キョースケの黒いモヤが多くて分かりにくかったからそうなのかなってくらいだけど。』


アイはそういうのも分かるのか。感覚派なのかはたまた天才タイプなのか。

ジトーっとした顔のカオスヘイローにとりあえず今までの事を説明する。

魔王に負けた事、魔王城の下でアイに助けられた事、共に旅をしている事を。

カオスヘイローの事も知りたかったが、まずはこっちの事を説明するのが先だ。


「ってわけだ。それで今居るのは魔王城のある大陸ヘルヘイムのガデアって街だな。」


「…理解。アイ、まずはお礼を。私が損傷している間、京介を助けてくれた事に心から感謝を。不本意ではある、けど京介の命の恩人を無下にするつもりは無い。やっぱりよろしくしてくれると嬉しい。」


『どういたしましてー!!こちらこそよろしくねー!!』


どことなく、というか普通に不満そうだが、ちゃんとお礼は言うあたり悪い子ではなさそうだ。めっちゃ不満そうだけど。


「そして京介……ごめんなさい。私のせいで…京介が負けてしまった…。腕まで失って…。」


こちらに向き直り深々と頭を下げるカオスヘイロー。少しするとポタポタと涙が落ち始めた。


「ちょっとまて、なんで君のせいなんだ。魔王に勝てなかったのは俺の実力不足だ。

…それに謝るのは俺の方だ。俺が弱いばかりにホーリーヘイローを…君をあんなにボロボロにしてしまって…本当にすまなかった。」


俺の言葉にしかし首を振るカオスヘイロー。

歯を食いしばり、必死に涙を止めようとしているが、話す度にポタポタと涙が溢れ流れていく。


「違う…違うの。私の力は勇者の制約と反発するのに…。それでも京介の傍に居たかったから、取り繕ってたから、だから負けちゃったの…。

きっと私以外の武器なら京介は勝てたの…。

ごめんなさい…ごめんなさい…。」


彼女はただただ、涙を流しながら謝り続けた。




「……元々私は、聖剣 ホーリーヘイローの精霊。

京介と出会ったあのダンジョンの神殿で、ずっと私の所有者になってくれる人を待ってた。

本当は何時でもこの精霊の姿になれた。でも勇者の制約のせいでこの姿になったら傍に居られなかったからなれなかった。」


少し落ち着いてから話を再開する。

アイは黙ってカオスヘイローの頭を撫でていた。

彼女の話が本当になら勇者の制約は俺以外も苦しめていたのか…。


「そうか、俺が仲間を作れなかったから…精霊の姿になったら仲間判定されてしまう可能性が…。

だがそれは俺の責任だ。君は悪くないだろう。」


泣きながら首を振る。


「…ホーリーヘイローの本当の力は修復能力じゃない。使い手と剣の精霊の絆が深まれば深まるほど斬れ味を増していく。そういう力。

でも今まで戦う時は私の光の魔力で剣を被って無理矢理繕ってた。

京介に会う事すら出来なかった私は、本当はナマクラ以下の棒切れ…。多分パンもろくに切れない。」


話を聞いて愕然とする。今まで色んな敵に勝ってこれたのは間違いなくホーリーヘイローのおかげだ。

強力な魔物を断ち切る程の光の魔力で剣を覆うなんて生半可な事じゃ無かったはずだ。きっと相当無理をさせてただろう。

全然、知らなかった。俺は相棒に、この子にそんな辛い思いをさせてしまっていたのか。


「カオスヘイロー。気づかなくて本当にごめんな…。ずっと、俺の事守ってくれてたのに、無理させてごめんな…。」


抱きついてきて俺の胸で声を殺すように泣くカオスヘイロー。俺は彼女が落ち着くまで頭を撫で続けた。


───────────────────


「多分いくら話し合ってもお互い自分が悪いって言うので、この話はお互いが出会えて良かったという事にします。異論のある人は?」


「ん、異議なし。」


『いぎなーし!!』


しばらくしてまた落ち着いたので、落とし所を付けることに。

嬉しそうにニコッと笑ってくれるカオスヘイロー。良かった、俺の相棒はとっても素直でいい子だ。



「あらためて…京介の旅、もちろん私も同行する。京介と心を通い合わせた今の私なら斬れない物はない。今なら魔王だって16等分に出来る。

2人はそれでも構わない?」


『アイは大丈夫だよー!!よろしくねー!!』


嬉しそうにハイタッチを要求するアイと、仕方ないという風に応じるカオスヘイロー。なんやかんや仲良く出来そうで安心だ。


「俺ももちろんだ。もう魔王の所にはいかないけどな。所で1ついいか…?」


「何?」


「カオスヘイローは名前っぽくないなとおもってな…。剣としての名前だし。精霊としての名前とかないのか?」


正直ちょっと長くて呼ぶ時に言いにくいのもある。

こだわりとかあったら仕方ないが、多分カオスヘイローって名前も見た目が変わった時に自分でつけたのだろう。


「確かに一理ある。…なら名前付けて欲しい、主に京介が。主に、京介が。」


『はいはーい!!ホワイト&ダークネスちゃん!!「却下。」えー。』


アイのネーミングセンスが独特で思わず吹きそうになったが、速攻で却下されてた。

俺も考え、やはり髪や服装が白黒なのがイメージとして強いと思った。白黒…、モノクロ…。


「モノ子とか…。「採用、即決。I am モノ子。」え?いいの?早くない?」


なんだよI am モノ子って。即却下にされたアイはとなりで不貞腐れてるし。


「モノ子…。気に入った。今日から私の名前はモノ子。混沌剣 カオスヘイローの精霊 モノ子。

ふへへっ…京介が私の名前を付けてくれた…。」


こうして改めてカオスヘイロー、モノ子が仲間になった。

旅が賑やかになりそうだ。


「ところで京介、浮気。私以外の刃物を使うなんて許さない。」


今日買ってきた解体用ナイフを指さしプンプンと怒るモノ子。

いくらなんでも無理がある。これじゃ飯の時にナイフをつかっても嫉妬しそうだ。


「魔物解体に使うナイフに嫉妬しないでくれ…。大体ナイフは今までも使ってただろ…。」


「うん、ずっと嫉妬してた。イライラでナイフを叩き切ろうかと思ってた。」


幸先が不安になってきた。下手したらこれから先解体から何からカオスヘイローでやることになるぞ。


──────────────────


「そういえばモノ子、いくつか聞きたい事がある。

さっきは流したが勇者の制約について知ってるんだな。アイもなんかちょっと知ってそうだったし結構有名なのか?」


『んー?アイはぼんやりとなら知ってるよー。』


ぼんやりと、か。アイはどこで情報仕入れてきたんだろ。魔王に負けた人の日誌とかよんだのかな?


「私が知ってるのは京介と繋がった事で得た情報だけ。特に本質に触れかけた仲間に関する制約はある程度理解している。」


仲間を作れないっていう制約か。実はあまりこれに関しては旅の中では困ってなかったんだよな。話も出来ないから勧誘なんて出来ないし。

色々あって仲間になりたいって言ってくれた人も居たけど、駄目だと思って断ったんだよな。

そのせいでモノ子が苦しんでたのは本当に申し訳ないけど…。


「この制約、実は仲間を作れないわけじゃない。仲間になった場合、どんどん互いを認識出来なくなる。そういうものみたい。

本当は京介が私を手に取った時に精霊として出てくる予定だったのに、名前を言った瞬間嫌な予感がして引っ込んだ。」


ほんっっっとうにクソすぎる。何が勇者の制約だ。作った奴性格悪すぎるだろ。〇ね!!

これ会話に関してもなんか+の条件あっただろ。ゼスチャーでも伝わりにくいとか不審者扱いされるとかさ!!まじで許せねぇよ。


「はぁ……。なるほど、それであの時名前だけ聞こえた気がしたのか…。」


「ん、あとはなんでホーリーヘイローがカオスヘイローになったか?」


「ああ、その黒い部分、俺由来だってきいた。

俺のせいでモノ子に何か悪い物でも付いたんじゃないよな。」


そう、それが1番重要だ。アイの話ではあの黒ずんでたのは俺由来だと言っていた。ならばモノ子が白と黒の混沌の剣になったのも俺が原因の可能性は多いにある。

俺が頷くとモノ子はポッと顔を赤く染めた。


「…これは私が京介色に染まった証。私の半分は京介で出来てる。ふふ…ふふふ…。」


『ねぇキョースケ、モノ子ちょっとやばいよ。大丈夫かな?』


怪しい目つきとヨダレが垂れそうな口をするモノ子。女の子がしていい顔じゃ無さすぎる。

アイもドン引きしている。確かにちょっとヤバい感じだけど、でも俺の大切な相棒なので許してやってくれ…。


「やばい奴呼ばわりは不服。

正直に言うと、私の黒い部分は京介の負の心。京介が私を手にした時からそういう感覚が減らなかった?」


言われて気づく。そういえば2年前にホーリーヘイローを手にするまではもっとずっと荒んでいた。

この世界も何もかも憎くて、目の前に現れた魔物に当たり散らしたり、それこそ明らかに攻略するにはLvも準備も不足していたダンジョンに生き返るからという理由でゾンビアタックを仕掛けるくらいにはイカれていた。


「私が聖剣の中に京介の黒い感情を吸い取ってた。でも魔王との戦いで破損した時に漏れ出て、混ざりあったみたい。」


この子は…どれだけ俺の為に……。


「…モノ子、君はさっき私以外の武器ならって言ってたよな。」


「え…う…うん。でもその話は…。」


モノ子の顔が引き攣る。もしかしたら嫌な事を言われると思ったのかも知れない。本当に申し訳ない。

でもこれだけは済んだ話にしちゃいけない。なにがあっても伝えなきゃ行けない。

俺はモノ子の手をとって、モノ子の瞳を見つめながら告げた。


「俺はモノ子が相棒で本当に良かった…。君が居てくれなかったら、きっと心が完全に壊れてしまっていたと思う。

俺と出会ってくれてありがとう。俺の相棒になってくれて、ありがとう。」


いっぱい無理させてごめんな。

そう言い終わる前にモノ子の泣き声にかき消された。


『よーしよし。もーキョースケ。

あんまり女の子泣かしちゃダメなんだよー。悪い男だー。』


再びモノ子の頭を撫でて宥めるアイ。その通りだな、俺最低だ。こんないい子に辛い思いばかりさせてたんだから。

これからの旅は恩人である2人に報いる旅にしなくちゃ行けないな。



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