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冒険の書 X2

洞窟はアリの巣のような構造だった。

ただ、規則的に掘り進めたというよりあっちに行ったりこっちに行ったりという感じだ。

俺の右腕に両手を絡ませるようにくっついたアイに進む方向を教えて貰いながらのんびり歩いていく。


「なあ、アイ。この洞窟ってもしかしてアイが掘ったのか?」


『そうだよー。ずーっと昔は岩とか壁とか食べながら掘ってたんだー。でもあんまり美味しくないから出口までの道忘れた時以外は食べないのー。

いつもは色んなものいーっぱいたべるよー!!』


やはり凄いな、アイは洞窟も掘れるのか。話的にどちらかと言うと食い進むって感じみたいだが。

だがそうなるとサンドボックスゲームで道わからんときにむちゃくちゃに掘り進めた時みたいな感じでアイが食べながら掘ってできた洞窟なのか、出口がいっぱいありそうだ。


「そうかそうか、アイはなんでも食べるんだな。

俺は好き嫌いが多いからアイを見習わなくてはいけないな。」


この世界に来てから会話も出来ないせいで、ろくに飯屋にも入れず倒した魔物ばかり食っていた。

岩石系や毒系の魔物ばかりの地域の時は本当に最悪だった。大丈夫そうな奴も下手に食べれば腹は下すし、硬いやつは食えないし。虫系も食えるようになるまで大分かかった。今でもクモ系とゴキブリ系は勘弁だけどな…。


『えへへっ、アイ凄いー?うれしー!

でもキョースケもアイの眷属だから色々たべれるよー。』


そういえばそうだった。ステータス画面は未だに文字化けしているが、俺はアイの眷属なんだった。

ならばアイと同じように岩なんかも食べれるかもしれないな。


「ではではひとつ試しに食ってみるか。」


 落ちていた石を拾って齧ってみる。

普通は歯が通らないが今回はバキっと簡単にくだけて、ボリボリと簡単に咀嚼できる。これがアイの眷属としての能力なのか。食うに困らなさそうで助かる。


「うーむ…だがたしかに食えるがアイの言う通りあんまり美味いもんでもないな。」


 近いものでいうとケーキとかに乗ってる砂糖菓子の味がしない版って感じだろうか。進んで食う物でもないと言った意味がよく分かる。

それなりに腹に溜まる感じはするが、俺も好んでたべたいものではないな。

 

『でしょー。アイもあんまりすきじゃないからお腹すいてないとたべないんだー。力もあんまり貯まらないしー。いつもはお外に行って魔物を捕まえてたべるんだよー。』


てっきりこの洞窟を住処に入ってきたり落ちてきた物だけ食べてるのかと思ったが、アイも結構アグレッシブに狩りとか色々しているらしい。


「なら俺と一緒だな。この辺の魔物だとデカイ角の生えた獅子みたいな魔物が美味かったな。アイも食べたか?」


魔王城周辺に来たらちょくちょく見かけた魔物だ。やたらデカイ上に素早くて魔法もポンポン撃ってくるが、塩振って焼いて食ったら美味かったな。


『ベヒーモスかなー?おっきー紫のやつだよねー!アイも好きだよー!』


 あいつベヒーモスなのか。ゲームだと超つよいボス級の魔物の名前じゃないか。この辺だとちょくちょく見かけたからありふれた魔物かとおもってた。

突進攻撃は強力そうだったが、正面からホーリーヘイローの一撃でまっぷたつに叩き切れたし。


「アイの方が色んな事に詳しいな。俺は魔物の名前とかもさっぱりだからこれから色々教えて貰わなきゃな。」


『ふっふっふー、うん!!アイがキョースケにいーっぱい教えてあげるねー!!』


 嬉しそうに跳ね回るアイ。

本当に可愛いな。妹が出来たみたいだ。でもアイも俺と同じで一人ぼっちだったと言ってたから、誰かと話すのが嬉しいのは俺と同じなのかもしれない。これからもアイと色んな話をしていこう。


『あっ!良かった、合ってたー!!

もうすぐ出口だよー!!ご飯の話してたらアイお腹すいちゃったからさっそく登ってご飯探しに行こー!!』


 それからも色んな話しながら歩いているとアイの言う通り、洞窟の先に光が差し込んで来ている。

アイに手を引かれながら進むと、少し開けた場所に出た。光は天井の穴から差し込んでいるようだ。


「あれが出入口なのか。魔王城周辺を散策している時は洞窟なんて見つからなかったがなるほど。

地上からみたら隠しダンジョンみたいな感じになってたんだな。」


『かくしダンジョン?は分かんないけどー、どこの出入口もだいたいあんな感じだよー。』


道理で見つからないはずだ。だがまあ魔王と戦う前にアイと出会って戦う事になってたら嫌だったし、今思えばこの洞窟をみつけなくて良かった。 


「あの高さなら問題ないな。アイ、俺に捕まるんだ、しっかりな。」


はーい!と元気な声を上げ抱きついてくるアイ。

落としてしまわないように右腕でしっかり抱きしめて、片足に魔力を集中させ地面を思いっきり踏みつける。地面に触れる瞬間に風魔法を発動すれば一気に飛び上がった。


『わっ、すごーい!!飛んでるよー!!』


反対の足に魔力を集中させ、再び風魔法で空を蹴って更に飛び上がる。2、3回も繰り返せば天井の穴に到達し、無事洞窟から脱出する事ができた。


───────────────────────


穴から飛び出すと、荒地に出た。遠くの方に魔王城が見えるから、洞窟の中を結構歩いたらしい。


『キョースケすごーい!!呪文も無しに空を飛ぶ魔法が使えるんだねー!!アイはいつも壁をつたってよじ登ってから、今日はとっても楽だし楽しかったー!!』


抱き抱えていたアイを下ろすとアイは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。


「ふふっ、まあな。と言っても自分で色々やって習得した魔法だからこの世界のちゃんとした魔法とは違うかも知れないけどな。呪文も全然知らないし。」


冒険に出た頃はレベルアップや魔法習得アイテムで使えるようになるのかと思ったが、全然そんな事はなく、時折魔法を使う魔物の魔法を見様見真似で練習していたら使えるようになったのだ。

あとは応用で色々試してみた結果だな。


「さっきの連続ジャンプも風を起こす魔法を足元に集中して発動して飛んでるだけだからな。

多分練習すれば誰でもできるんじゃないか?」


『えー、無理だよー。アイは光の魔法しかつかえないんだー。ピカっとひかる玉をつくる【ライト】とかー、傷を癒す【ヒール】とかだよー。』


そうだったのか、知らなかった。

魔法にも適正のような物が存在するのだろうか?

だとしたら俺は魔法の適正に優れているのかもしれない。


「ふっふっふ、アイ、驚くなよ。俺は火、水、土、風、光、闇の魔法が使えるんだ。」


『キョースケすっごーい!!アイそんなに魔法が使える人みたことないよー!!』


キラキラした瞳を向けてくるアイ。やばいな、褒められるのってこんなに嬉しい事だったのか。

アイと一緒に居ると長らく忘れていた感覚がどんどん蘇ってくる気がする。やっぱ勇者の制約ってクソだ。


「っと、そういえばここまで全然飯食べてなかったな…。アイも腹減ったっていってたしな。」


『うん!おなかすいたー!!』


お腹をポンポン叩きながらおなかすいたアピールをするアイ。

周りに手頃な魔物でも居ないかと周囲を見渡すと、突然上空から風を切る音が聞こえた。


「ギョァァァアアア!!!」


巨大な黒い翼を持つ四足の鳥の様な魔物、恐らくグリフォン系の魔物の上位種だ。別の大陸でも似たようなのを良く見たが、この大陸のこいつらはとにかくでかいし速い。

ホーリーヘイローに手をかけるが、まだ修復中で使えない事を思い出し、仕方なく全身に魔力を巡らせる。奴の進路的に俺に突撃してくるつもりだろう。


「アイ!ちょっと下がっててくれ!」


うなづいたアイは即座に数歩下がる。

今までは一人だったから周囲を気にする必要は無かったが、今は違う。そういう時に即座にこっちの意思を汲んで動いてくれると本当に助かるな。

グリフォンの突撃が俺に届く少し前に、身体を包んでいた魔力を炎に変換する。


「ギョッ!?」


いきなり燃え上がった俺に動揺したのか、ブレーキをかける様に速度を落とすグリフォン。

逆に俺から飛びかかり、炎の火力を更に上げた。


「悪いな!鳥の丸焼きになってもらうぞ!!」


飛び付いてきた燃える俺を振り払おうとしばらく暴れるグリフォンだったが、すぐに全身に炎が燃え広がって墜落した。


───────────────────────


『キョースケ、めちゃくちゃな戦い方だね…。』


落ち着いた方のアイだ。ちょっと引いてる。ホーリーヘイローが使えない中で思いついたいい作戦だとおもったんだがな。まだ水魔法で撃ち落とすとかの方が良かったか。


「あ、しまった。解体用のナイフないんだった。」


いい感じに表面の毛が燃えて、宣言通り鳥の丸焼きになったグリフォン。

しかし解体用に持ち歩いていたナイフは荷物と一緒に魔王城に置いてきてしまっていた。

襲ってきた野党をぶちのめして手に入れたナイフだったが、切れ味もいいし使いやすいから気に入ってたんだがな…。海辺で自作した塩も荷物の中だし意外と大事なもの結構あったな…。

流石に取りに戻ろうとは思わないが。魔王もびっくりするだろ。


『ねぇーキョースケ!もう食べてもいいー!!?』


「まだまだ。多分中は生だからちょっとまってくれ、血抜きもしてないしな。って言いたいけどアイお腹空いてるもんな…。」


空腹で待たせるのは可哀想だ。美味しく食べてもらいたいが、アイはそのまま食べても大丈夫だろうし…。


「うん、足の1.2本くらいなら食べていいぞ。その間に出来るだけはやく作っちゃうからな。」


『キョースケ料理するのー?…ならアイ我慢するねー!』


すごく良い子だ。これは美味い飯を食わしてやらねば。


「そうだ。そういえば魔王が風の斬撃魔法っぽいの使ってたな。今までは風を起こすくらいにしか使ってなかったが…。」


確かこんな感じで…とイメージしながら手に魔力を集中させ風に変換して振るう。

スパンと真っ二つになったグリフォン。おー、上手くいった上手くいった。

感覚を掴めたのでスパスパと風の刃でグリフォンを細切れにする。


「うん、やっぱり中は全然生だな。逆に良かったけと。」


土魔法で地面の形を変え台座を作り、溢れ出した血を水魔法で作った流水で洗いながす。

なにも知らなかった頃は倒した魔物をそのまま焼いて食ってたが、鉄臭くて食えたもんじゃなかったな。

その辺に生えてる薬草をつんだらちぎって肉に擦り付ける。こうすると臭みも減るしハーブっぽい香りもつく。後毒持ってても多少ダメージが減る。

毒消し草なら完璧なんだがな。毒消し草がどれか分かるまで何回毒で教会送りになったか思い出したくもない。

先程までじっと見ていたアイだったが、見様見真似で同じように薬草をすり込み始めた。


『よいしょっ、よいしょ…。キョースケ、これでいいー?』


「ああ、上手だぞアイ。」


えへへっ、と嬉しそうに笑いながら必死に肉に薬草を擦り付けるアイ。

ここからは仕上げだ。再び土魔法で地面を操作してドーム状の釜のような物をつくる。

肉を並べて最後に火魔法で超高温にしておいた石を放り込んで少し放置すれば…。


「完成!!グリフォンのハーブチキン焼き!!」


『おー!!!美味しそー!!』


熱した石の熱で焼き上げたグリフォンの肉。残念ながら食器もないので、少し冷ましてから水魔法で綺麗にした石の台の上に並べる。

…グリフォンってチキンでいいんだよな?


「それじゃ、いただきます。」


『いただきま…すー?』


俺が手を合わさると、アイも首をかしげながら同じように手を合わせる。可愛い。

早速手に取り食らいつくと、皮がパリッといい音をたて、ふわふわな肉からは肉汁が溢れ出す。

美味いっ。味付けはハーブ代わりの薬草だけだが、少し苦めのこの薬草が肉の味を引き立てる。

多少臭みがあるのは最初に丸焼きにしたせいで固まってしまった血が原因だろうか?今度剣が使えない時は風の斬撃で首を飛ばそう。

個人的にはマヨネーズがあれば最高なんだが、卵や油、塩はなんとか手に入っても酢だけは無い。

悔しいが今はあるものでおいしく食べよう。


『キョースケ!!キョースケ!!キョースケ!!』


「はいはいはい、キョースケです。どうしたアイ?」


『これすっっごく美味しいよー!!アイこんなの食べたことないよー!!』


グリフォンチキンを美味しそうに齧りながら目をキラキラされるアイ。

ぷるぷるした身体の口も手も油でベトベトになっているがそんな事はお構い無しという風に美味しそうに食べてくれている。


「そっか!それは良かった!…作ったかいがあったな。」


一人の食事にはずーっと前から慣れていたつもりだった。でも、自分が作ったものをこんなに美味しそうに食べてもらえるなんて…。


「なぁアイ……ありがとうな。」


『ありがとうはアイの方だよー?キョースケ、美味しいごはん、ありがとー!!』


俺はこの子を絶対に幸せにすると心に誓った。

少なくとも食うに困らせる事だけは絶対にしない。 

アイには美味しい物をたらふく食わせてやろう。




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