冒険の書 X20
その後は穏やかな雰囲気で買い物を楽しみ、ラストのマリィの番になった。
と言ってももう夕方なのでみんなで夕食をたべ、部屋に戻ってからとなったが。
「っと言うわけで真打登場じゃ!!」
「もう結構遅いけど大丈夫か?」
「ごめん、ゆっくりしすぎた……。京介とのデート楽しみすぎた。」
少し反省と言った様子のモノ子。だがマリィは気にしてない様子だ。
「構わんのじゃ、確かに我も主の事は好いておるがあくまで主としてじゃからな。
竜の姿に興奮しておるのは正直ちょっとドン引きじゃ。」
えー、マリィの竜の姿めちゃくちゃ可愛いから仕方ないと思うんだがなぁ。まあ言ったら嫌な顔されるしあまり言わないようにしてるが。
「それで、マリィには何をしたらいいんだ?お酒でも飲みに行くか?」
お酒、そろそろ1回くらい挑戦したい所だ。樽酒をゴクゴク呑むのも憧れるが、カクテルを静かに飲むのもクールでかっこいい。
でも見た目的にどうなんだろ。3人とも未成年にしか見えないからな。いやそもそもこの世界酒に関する法律とかあるのか?
「酒!?…正直めちゃくちゃきになるんじゃが、今日は違うのじゃ!酒は後日じゃ!」
そう言って取り出したのはマリィが普段使っている木の器。
「お主らのはまーくが入っておるが、我のは入ってないんじゃ!!ずるい!ずるいんじゃ!!
我もまーくが欲しいんじゃー!!」
「あー、そういう事か。なるほどな。」
この器、ガデアでみんなが良さそうな絵柄の器を買った時の奴だ。
マリィはその時まだ居なかったから、ずっと予備で買っていたのを使ってもらってたんだ。
確かに自分のだけ描いてないと気になるかもしれない。
「というわけでお主ら3人には器に描く絵を考えて欲しいのじゃ!!塗料も用意したのじゃ。
部屋を汚しては駄目じゃから異空間の中でやるのじゃ。」
早速異空間の中に放り込まれる。なかには3人分の筆と絵の具の様な物と紙がおいてあった。
いつの間に用意したんだ。用意周到すぎる。
『おー、お絵描きたのしそー。』
「落書きするでないぞ!という訳でお題は【我の器に描くならどんなでざいんか】じゃ!!ではすたーとじゃ!!気張って描くんじゃぞ!」
パンっというマリィの手を叩く音を合図に早速筆を手に取り描き始める。
しばらくするとアイが手を上げた。
「む、アイは速いの。どんな感じじゃ?」
『お肉!!』
「お主と一緒じゃ!!却下ー!!」
えー、といいながら書き直すアイ。アイらしいな。お揃いでも俺は別にいいと思うが。
そうこうしていると続いてモノ子が手を上げた。
「モノ子も速いの、モノ子はなんやかんや真面目じゃからな、ここで終わってしまうかも…。」
「じゃん。」
描かれていたのは魚のマークとその上に2位の文字。昨日のレースか…。まあ2位でも凄いとおもうんだが、マリィは負けたのだいぶ気にしてるからな。
「次は勝つから却下なのじゃー!!」
そして少し時間は掛かったが、俺も完成。我ながらなかなかの出来。いつもは鉛筆だったし久しぶりだったから、荒は目立つが良いのではないだろうか。
「はぁ…主も出来たかの…。」
「ああ、力作だ。」
俺が描いたのは竜の姿のマリィ。短い時間だったし、あんまりじっくりも見させてもらえてないからクオリティはまだまだだがどうだ。
「え…こええのじゃ。なんでこんな短時間でそこまでしっかり描けるのじゃ…?」
「そりゃ元の世界で暇な時はディプロカウルスのイラストとか描いてたからな。
供給少ないと自家発電するしかないんだよ。」
残念ながら有名ジャンルではないからな。なかなか供給を得られない分自ら作るしかない。
「なんか怖いので却下じゃ…。」
残念。
その後も3人で描いては却下をくらい続けた。
『もー、マリィわがままだなー。』
「ん、最初の2位で良いと思う。」
「モノ子表にでるのじゃ!!決闘じゃ決闘!!」
3人でやんややんややってる中黙々と、描く。
そろそろ却下されない奴を真面目に描かないとな。
「…よし、完成。マリィの得意な雷魔法のマークと次元の家をデフォルメして描いてみたぞ。」
「お…おお!!これじゃ!!こう言うのが良かったのじゃ!!主よ!ありがとうなのじゃ!!これで採用じゃ!!」
俺の手を掴み嬉しそうにするマリィ。良かった、実は最初から思いついてたけど、マリィの反応が良くてついつい遊んでしまった。
「…主よ、聞こえておるぞ。」
「しまった。」
早速マリィの器を軽くナイフで彫る。そのまま描くより描く形に彫っておいた方が色が乗りやすいしずっと残る。
そして絵の具を使って描いていく。最後に水を弾く塗膜を塗って完成だ。
「お…おお!!これが我の、我だけの器!!」
完成した器を大事そうに眺めるマリィ。喜んでもらえて何よりだ。
『えー!キョースケに描いてもらえるのいいなー!!キョースケ!アイのも描いてー!』
「うん、ずるい。京介、私にも。」
「だーめ、今回はマリィへのお詫びだからな。また器買ったらその時はまた皆で描こうな。」
「むふふ…。我の、我だけの器じゃ…。うれしいの。」
宿の部屋に戻ってもしばらくマリィは嬉しそうに器を眺めていた。
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「昨日はお嬢ちゃん達とデートしてたんだって?羨ましいね。」
翌日、言われた通りにギルドの船長の元を訪ねる。3人は暇だろうから次元の家の中だ。
なんか含みのある言い方だが気にしないようにしよう。
「それで船は無事出れましたか?」
「ああ、偵察した様子も問題なし、昨日の朝一から早速出港したよ。本当に助かった。」
それは良かった。これでガデアの人達も不自由しないで済むだろう。
「良かったです。ガデアの皆さんには色々お世話になったので。」
「向こうのギルドマスターも感謝してたよ。あんたの名前を出したら礼を言っとくように言われたね。」
ん?まるで会ったかの様な言い方だ。そういえば俺達が来る事も知ってたな。どういう事だろう。
俺が首を捻っている事に気づいた船長は合点がいったように笑った。
「ん?ああ!なるほどね!
ギルドにはね、魔法球って魔法道具があるのさ。短時間だが離れた相手と話が出来るものだね。定期連絡なんかに使うんだが、高価な物だし何より消費魔力が馬鹿みたいに多くてね。
一般には普及してないのさ。」
「はー、なるほど。そんな便利な物が。」
1回短時間で千円の公衆電話みたいなものか。便利なんだかどうなんだか。
まあ公衆電話なんて使った事ないんだがな。公民館に置いてあるの見た事あるくらいだ。
「では伝えたい事はそれくらいですかね?実はちょっと資料室で調べ物させて欲しいんですが。」
「資料室を使うのは構わないよ。
それと…、もし良かったら手を貸して欲しい案件があるんだ。
どうもこの街から少し離れた地域に住む【巨人】族と人間の町でトラブルがあったみたいでね。」
巨人…。時折見かけた人に似た種族、亜人と呼ばれる種族の1つだ。その特徴はなんと言ってもでかいの一言。離れた所でも一目で分かるくらいにはデカかったのを思い出す。
「本来巨人は友好的でその人間の町とも交流があったくらいなのさ。そもそも争い嫌いで温厚な種族だしね。
それが先日なんでか急に集団で襲ってきたとかで今大変みたいでね。様子を見に行ったうちの者達の報告待ちなんだが……。どうも嫌な予感がしてね。」
「嫌な予感…ですか。」
「ああ、あくまで予感。ただもしもも考えられる。その場合今回の件も解決したあんたに力を借りる事になるかもしれない。
その時は力を貸してもらえるかい?」
目を瞑り、考える。安請け合いするのは簡単だ。巨人といえどあくまで人間同士の争い、魔物には適用されるか分からないが、少なくとも人間のLv上限である99相手までならそこまで苦戦することもなく制圧出来るだろう。
だが…マグロサンのような怪物が出てくる可能性は捨てきれない…。
少なくともガデアでのダンジョンや沖の件に関しては世話になったから助けたのだ。今回の話はもうその域では無い。
「(俺は、勇者じゃないんだ。)」
心の中で自分に言い聞かせる。俺は無償で人助けをする様なRPGの勇者じゃないんだ。
召喚されて、勇者にされて、そしてその力も失ったただの人間、京介なんだ。それに。
『キョースケ!』「京介。」「主。」
あの子達が居るのに。わざわざ危ない橋を渡る必要はない。また、泣かせてしまうかもしれないなら俺は。
「すいません。あの子達が居るので、危険な事は出来ません。もうこれ以上、泣かせたら愛想尽かされちゃうので。」
俺が苦笑いしながら言うと、船長も納得してくれた。
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魔導…魔導…。ないな。
魔法関連の書物はいくらでもあるが、魔導に関して載っている本は全く無い。
「お、アイ、モノ子よ。これなんか良さそうじゃないかの。」
『おー!アンドレアルが本当に男だったバージョンの本だー!でもなんか薄いね。』
「それに小説じゃないみたい?絵で書いてある。」
サッと3人から没収し、3人の手の届かない所に押し込む。
今回ばかりは間違いなくダメなやつだろ!!なんだこの世界、同人誌まであるのかよ。誰が書いてんだよ!
「ああいうのは見ちゃ行けません。大人になってからみような?」
「私、推定数百歳。」
『同じく数百歳ー。』
「我は…何歳なんじゃろ。ダンジョンが出来た時から考えると1ヶ月くらいかの?」
……うん。聞かなかったことにしよう。というかマリィはそれなら酒のんじゃだめだろ。
流石に保護者として俺が捕まるわ。
「んー、やっぱりないな…アイ。魔導に関する資料ないや。どこで知ったんだ?」
『んー?ステータスに書いてあるよー。』
ステータス……改めて確認するがあれから変化は無い。そもそも書いてある事もろくに説明がないから効果が分からないのばかりだからな。
「ステータスじゃ詳しくはわかんないもんな。
禁書の棚も見たいが、そっちは安全の保証は出来ないから止めとけっていわれてるんだよな。」
やばいのが封印されてたり、読むだけで気が狂う本もあるらしい。そんなの読んでも情報は得られないだろう。
「あ、そうだ。巨人、巨人……。あった。」
亜人に関する資料を開く。巨人族について細かく描かれている。
「大地に根付く巨大な人の亜人。温厚で争いを嫌い木や花々と共に暮らす者達…か。
言ってた通りだな、少なくともわざわざ争う様な種族には見えない。」
「人と争っておると言っておったんじゃな?ならば1.2人の意思では無いじゃろう。
少なくともその地域の巨人の総意と考えた方がいいじゃろうな。」
確かに、それなりに大事になってる様子だった。
手を貸した方が…いやしかし。
「京介、大丈夫。私達はどこまでも京介の味方だから。」
『キョースケ、キョースケのしたいようにして良いからね。』
「そうじゃな。やりたいようにやればいいのじゃ。無理はだめじゃがの。」
3人に、見透かされた様にいわれる。
……正直、目の前に困ってる人が居て、助けられる力があるなら助けたいって思ってしまっている。傲慢で無責任なのは分かってる……でも。
「……ありがとう。皆、もしどうしても助けが必要なら、手を貸したいと思うんだ。その時は力を貸して欲しい。」
笑顔で答えてくれる3人。
その後、俺は……その選択をずっと後悔する事になる。




