冒険の書 X19
結局魔導に関してはよく分からなかった。
というのもアイによる説明が
『えっとねー、2つの力と魔導力をぎゅーっとしてドカーン!ってするの!!』という感じだったのだ。
魔導と魔導力については後日しらべよう。ここのギルドになんか書物とかあるかな。
「あっ、キョウスケさん!探しましたよー。」
アイと2人で次はどこに行こうか話しているとギルドで受付してくれた方が走ってきた。
昨日の件だろうか。無事船が出せてるといいんだが。
「あ、ギルドの受付さん、どうも。」
「船長が先日の件の改めてお礼と、話す事があるので来て欲しいと言っているのですが…。
ふふ、後日の方が良さそうですね。」
受付嬢さんは手を繋いでいる俺達をみていたずらっぽい笑みを浮かべた。すこし照れくさいな。
「急ぎじゃないんですか?」
「はい、キョウスケさん達のお陰で問題自体は解決しておりますので!それに私もユニコーンに蹴られたくありませんからね。明日にでもギルドに来てください。それでは!」
『ばいばーい。』
ユニコーンに蹴られる…馬に蹴られるみたいなもんか。ユニコーンに変わっただけで途端になんとも言えなくなるな…。
しかし問題解決って事は船も無事に出せたのか、それなら良かった。これでガデアの人達にも無事物資が届くだろう。
その後はよくよく考えたらアイにはずっとタルイヌさんから貰った男物の服を着せていたのに気づき、慌てて服屋に行った。
似合っていたので今まで特に問題はなかったのだが、着替える時に何食わぬ顔で俺の脱いだ服を着ようとしたりするので今後はちゃんと分けよう。
という事で3.4着可愛くて動きやすそうなのを買った。
『うーん、複雑ー。』
「何が?よく似合ってて可愛いぞ。」
『えへへ〜!!
…でもだってー、可愛い服買って貰えたのは嬉しいけどー!こっそりキョースケの匂いのする服着れなくなっちゃうー!』
こっちが複雑な気分になるわ。そうしてダボっとしていた服装から、セーラー服っぽいデザインの服に着替えて来た。よく似合っている。
港町だからだろうか?でも別に海兵的なのじゃないんだよな。
店主の趣味とかだろうか。
「あのなぁ…でも本当によく似合ってる。アイにピッタリって感じだ。」
『やったー!!じゃあこっち着るねー!』
コロッとご機嫌になり一回転するアイ、うん。可愛い。
そうこうしていると異空間が開き中からピー!というホイッスルの音が聞こえモノ子が顔を出す。そのホイッスルどこで買ってきたんだよ。
「交代時間。アイ、楽しめた?」
『うん!楽しかったー!キョースケ、またデートしようねー!』
「ああ、俺も楽しかった。またしような。」
アイと入れ替わりでモノ子が出てくる。
…客観的に見ると女の子を取っかえ引っ変えしてデートしてるクソ野郎だな…。
悪い噂が立たないようにしよう。まだしばらくはオーシャにいるつもりだしな。
「じゃあ今からは私の時間。待ちわびた。」
そう言って出てきたモノ子は、可愛らしい白いワンピースを着ていた。
普段の白と黒のドレスのような服もとても可愛いが、ワンピースもよく似合っている。
「モノ子、可愛いな。よく似合ってる。」
「あ…ありがと…。えと…この服ガデアでお姉さんに貰ったの。勝負服の1つくらい持っときなさいって。」
照れてるのか顔を逸らす、見た目歳相応って感じで可愛い。
しかしお姉さん?…あ!食堂の給仕のお姉さんか。仲良くなってるとは思ったが色々お世話になってたんだな。
「またガデアに行った時にお礼しなきゃな。」
「うん。あ、そろそろ時間。京介、こっち来て。」
モノ子に手を引かれて行く。どうやら予定を建ててきた様だ。あまり表情には出さない子だけど、今日はなんというか凄く楽しそうだ。
「あった。ここだよ。」
「おお…劇場か。はじめてくるな。」
モノ子に手を引かれて着いたのは大きな劇場。
元の世界でも舞台とかには縁がなかったが、興味自体はあったし面白そうだ。どんな演劇をやってるんだろう。
「良いな演劇、観るものは決まってるか?」
「うん、貴族の女性と召使いの男の身分違いの恋の演劇。今1番ホット。」
「そっかー。………ん?なんかどっかで聞いたような」
聞く間もなく腕を引っ張られてチケットを購入して劇場の中に入る。
席に座ると周囲は女性ばかり、女性人気の高い演目なのか。
待っているとすぐに周囲が暗くなり、演劇が始まった。
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「面白かった…!」
「いや、うん。確かにめちゃくちゃ面白かったけどさ。演者さんの迫力凄かったし。」
まさか間男アンドレアルの正体が召使いの元恋人の町娘で、男装してまで奪われた召使いを取り戻すために行動していたとは……。
終盤の貴族の女性とアンドレアルのグーでの殴り合いは凄まじい迫力で鬼気迫る物があった。
あれ強い冒険者の女性でもつかってるのかな。
「2人ともLv90を越えた騎士と戦士。酷い時は回復魔法でも顔の腫れがなかなか治らないから1日一回しか劇出来ないって書いてあった。」
「強すぎるし身体はりすぎだろ。」
最後はお互いボロボロになった貴族の女性とアンドレアルが互いを認めあい、拳と拳をぶつけ合って終劇だった。途中貴族の女性が置いてきぼりだなと思ったが男の方がよっぽど置いてきぼりだった。
あと書籍版は3巻まで出ているらしい。
しかし女性人気凄かったけど、あれ下手な男が観たらトラウマになりそうなのもあるかもな。
「家に全巻ある。来月には演劇版の2も公開だって。」
「……公開してすぐだと席の倍率高いかな?」
正直どハマりしてしまったので、モノ子と2も観に行く約束をして次の目的地に向かった。帰ったら全巻読むか。
「あと次は普通の恋愛劇も観たい。」
「今日の絶対恋愛劇じゃないもんな。」
恋はそれぞれだがあれは違う。もっとドロドロしてるのに、急に少年漫画みたいな熱血っぽくなる何かだ。
次にたどり着いたのはレトロモダンと言った雰囲気の喫茶店。
初老のマスターに案内され席につく。
「へぇ…珈琲あるんだ。結構値段するから高級品なのかな。」
珈琲は1種類だが、あるって事はこの世界に珈琲豆があるって事だよな。ちょっと気になるな。
「ここ、有名な喫茶店。
この『ラブラブイチャラブハートカップルパルフェ』1つ下さい。」
「なんて?」
モノ子の注文を受けうやうやしくお辞儀をした後マスターが厨房に戻っていく。
「なあモノ子、今の何?」
「?『ラブラブイチャラブハートカップルパルフェ』だよ。」
何回聞いても頭に入ってこない。一体なんなんだそのパルフェは。
「お待たせ致しました。『ラブラブイチャラブハートカップルパルフェ』でございます。」
すぐにパルフェがきた。大きめでハート型のクッキーが乗っている事以外はごく普通のパルフェだ。
「美味しそうではあるが…。」
「可愛い。」
「「いただきます。」」
早速スプーンで1口分をすくうが、何故か口に運べない。腕が言うことを効かない…??
「こちらのパルフェ、カップル様で互いに食べさせ合うしか食べれない特別な魔法がかかっております。それではごゆっくり。」
どんな魔法だ。
「…仕方ない、京介あーん。」
全く仕方なく無さそうな顔であーんしてくるモノ子。断る気もないが、すこし照れながら一口。
「ん、美味しい。ほら、モノ子もあーん。」
「あーん。…幸せ。」
「そりゃ良かった。ほら、もう一口…ってあれ?」
今度は逆にあーんが出来ない。どうなってるんだ?
「あ、申し忘れておりました。この魔法は1度あーんをすると次は自分で食べて関節キスしなくてはいけないのです。それでは。」
誰だこんなアホみたいな魔法作ったやつは。
「…仕方ない仕方ない。ふふ、ふふふ…。」
その後もなんともいえない気持ちで食べたり食べさせあったりした。モノ子は終始嬉しそうだったので良しとしよう。
「お喜びいただき幸いです。また別の魔法を開発致しますので是非ともまたご来店を。」
「うん、また来るね、ご馳走様。」
この魔法作ったのマスターかよ。いい趣味してるな…。
後で聞いたらカップルに人気の喫茶店らしかった。マスターは名のある魔法使いらしいが、今はは若いカップルがイチャイチャするのを遠くから眺めるのが老後の楽しみらしい。
「今ので京介と私の絆が80%まで上昇した。きっともうなんでも斬れる。」
「そんなに上がったんだ…。」
「うん、ずっと、ずっと京介と色んな事したかったから。ありがとう京介、とっても楽しかった。」
「…なんでそんなに俺の事を想ってくれるんだ。」
足を止め、モノ子に問いかける。
本当は、ずっと思っていた。俺はモノ子を傷つけてばかりだったのに。
なんでこんなに俺の事を想ってくれてるかって。
なんで好意を向けてくれるのかって。
「……最初は初めて私の、ホーリーヘイローの所有者になってくれた人だったから。
それにズタボロで、目に光の無い貴方が私を手に取った時に、私が力にならなきゃって。」
「でも、私の力は使えなくて。ただ光の魔力を持つ剣としてしか居られなくて、最初はもっと強い武器があったら捨てられちゃうんじゃないかって。」
「でも、京介はホーリーヘイローだけで戦うようになって、それからずっと最後まで一緒だった。」
「それは、…修復能力もあったし…。」
モノ子は正面に立って繋いでいた手を絡めるように握る。
「ふふ、うん。でもそれだけじゃないの、知ってる。
京介が私を手に取った時から、京介の心の声は聞こえてたから。
毎日感謝してくれて、勝手に治るのにそれでも少ない物資で手入れしてくれて。
私の事を、心の支えにしてくれてた。嬉しかった。大好きに、なっちゃった。」
握っていた手は解かれ、モノ子の両腕が俺の身体に回される。俺を見上げるモノ子の瞳に、どこか怪しげな雰囲気がする。
「だから、京介。京介がどこに行っても、私は一緒にいるから。」
「あ…ああ、もちろん一緒だ。モノ子も大切な俺の家族だからな。」
俺の言葉を聞いてキョトンとするモノ子。先程までの怪しい雰囲気は霧散していった。
「……家族、家族ってなんだろ。」
「いや、うん。俺も今勉強中。」
そっか、といって身体を離し、再び手を握るモノ子。
「なら、ちゃんと家族になる為にもっと一緒に勉強しなきゃ。」
手を引かれ、また歩き出す。デートはまだしばらく終わらないそうだ。




