表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗北した元勇者の放蕩の旅  作者: 頂 有栖
第2章 マリーシア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/35

冒険の書 X18

2日目のオーシャの朝。

昨日の疲れもあってかまだ熟睡している3人を残して部屋を出る。一応心配させるといけないので外にいますとメモ書きを残しておこう。


宿の女将さんに話して庭を借りる。

まずは軽いストレッチ。何をするにも軽く身体を動かしてからの方が良い。

そして早速魔力を集中して水の基礎魔法で水を出し、同時に火の基礎魔法を使って蒸発させる。次に土を地の基礎魔法で形を変えては戻してを繰り返す。さらに手元で風の基礎魔法を使い風を維持する。

自分で考えた簡単な基礎魔法による訓練だが、それを1つから2つ、2つから3つと同時にやる数を増やして行くとどんどん維持が難しくなっていく。

昨日のレースで色々魔法を使ったが、まだまだ練度が足りない事を実感した。もっと使いこなせなければ。


『キョースケ、疲れてないのー?』


魔法を維持しながら振り返ると、そこに居たのはまだ眠気眼のアイ。他の2人の姿が見えないのは俺が起きる時にアイだけ起こしてしまったのかもしれない。


「すまん、部屋を出る時に起こしちゃったか。」


『キョースケが起きて部屋をでるのが見えたから気になって追いかけてきたんだよー。ふぁー…。』


あくびを抑えながらぽてぽてとこちらに歩いてきて地面に腰掛ける。


「ああ、まあ多少つかれてはいるけど昨日情けない所を見せた分もっと頑張らないとなって。」


『キョースケ頑張ってるとおもうけどなー、駄目って言われてる事しちゃダメだけどさー。所でそれどうやってやってるのー?アイ同時に2つ魔法を使うなんて出来ないよー。』



「返す言葉もございません。

うーん、練習あるのみかな。手とか足とかに意識を集中すると同時に発動しやすいかも?

ただ今は左腕が無いから少しやりにくいけどな。」


掌を起点に意識を集中するやり方が1番魔法を発動させやすい気がする。集中しやすい分発動も速い気がするしな。


『うっ……、キョースケ。実は言わなきいけない事があるんだけどー…。』


気まずそうに目を逸らすアイ。言いにくそうにしているが俺に関する事でなにかあったのだろうか。隠れて食材食べちゃったとかかな?

それか寝てる時にたまに寝ぼけた振りして身体舐めて来る事かも。


『実は…キョースケの腕食べちゃったの…アイなのー。…えっと、ごめんなさい!!

キョースケを助けるのに必要だったから、消化して使っちゃったのー…。本当はずっと言わなきゃって思ってたんだけど…。』


「あ、そうだったのか。でもあれ魔王にぶった切られた奴だし全然構わないぞ。もうくっつかなかっただろうし。

むしろ改めてあの時は助けてくれてありがとうだ。」


正直切られた腕の行方とか全く気にしてなかった。

それに魔王に倒した勇者の腕を飾る趣味があって俺の腕が魔王城に飾られてるとか言われた方が何億倍も怖い。


回復魔法も傷を癒しはするけど欠損した部位を治す力はないし、腕を接合する様な医療技術もあるか分からない上、あったとしてもくっつける技術がある所に着く頃には腕が腐ってただろう。


『キョースケ、…怒らないのー?アイ、キョースケの事食べちゃったんだよー?今までも不便そうにしてたし…。』


「気にするな…っていっても無理があるか、気になるよな。でもな、アイがあの時助けてくれなかったら俺は今ここに居ないと思うんだ。だから、ありがとうだ。

でもそうだな。どうしても気になるなら…。」


『…気になるならー?』


「俺が困ってる時手を貸してくれたら嬉しいかな。ほら、ステーキとかのナイフとフォークで食べる料理は片方しか使えないからさ。昨日のモノ子みたいに切り分けてくれると凄く助かるんだ。」


『う…うん。分かったー。

あと…えっと…実は食べちゃったの腕だけじゃないんだー。キョースケの…要らない記憶も食べちゃったのー…。』


要らない記憶…?なんだろ。心当たりが全くない。

まあ、食べられたなら心当たりがなくて当然なのか。しょうもない失敗の記憶とかかな。


「んー、でも俺の要らない記憶なんだろ?ならそれも何も問題ないよ。でもなんの記憶だろ。どうでもいい記憶か…。分かんないな。というかアイって記憶とかも食べれるのか!凄いな!」


『うう…うわぁぁぁああああん!!!』


突然大粒の涙を流して大泣きするアイ。

しまった、気を遣わせないつもりだったのに。


「アイ!?どうした!?あ、記憶とか食べれるの凄いって言われるの嫌だったのか!?デリカシーなくてごめんな!!」


『ぐすん…違う…違うの。話したら絶対嫌われるってー…、化物だって思われちゃうって思ってたから言えなかったのー…。キョースケごめんねー!!』


そうか…。アイは俺の為にやってくれた事で1人でずっと悩んでくれてたのか。モノ子やマリィが仲間になってからも色々あったし、ずっと溜め込んでいたのかもしれない。


「俺はアイの事大好きだ、嫌いになんかなるもんかよ。命の恩人ってのもあるけど、もうそれだけじゃない。俺にとってアイは……うーん。あれ、なんて言ったらいいんだろ。」


なんというか何となくイメージ出来るのに言葉に出来ない感じ。なんだこれ。


『家族…とか?』


「家族かー、俺ずっと一人暮らしだったからよく分かんないんだよな。でもそっか。俺にとってアイは家族なのかもな。もちろんモノ子やマリィも。」


『えへへ…4人家族だねー。アイも、ひとりぼっちだったからすっごくうれしー!!』


家族、なんかむず痒い感じだが、嬉しいな。

その後はアイに協力してもらいながら魔法の訓練をした。風の魔法でアイをずっと浮かせる訓練とか思ったよりずっと大変でまたぶっ倒れそうになった。


「所でアイ。夜寝ぼけたフリして俺の身体たまに舐めてるのバレてるからな。女の子なんだから恥じらいは持ちなさい。」

『……えー?アイ本当に寝てるからわかんなーい。』


ごめんなさいするまでほっぺたをムニムニした。

だが結局やめるとは絶対に言わなかった。

俺の腕食って癖になってるのかな。これ以上食われると流石に困るんだけど。


──────────────────


「京介、約束のデート。」


皆で朝食を食べ終えて宿の部屋に戻るとモノ子が食い気味に来た。

今日の朝食はパンと野菜、揚げ焼きした白身魚など色々乗った海外とかでよく見るワンプレートのご飯だった。馴染みの無い豆料理とか乗っててああいうの結構好きだ。


「ああ、約束だからな。1日ずつデートするのか?」


俺の問に対して悩むモノ子。凄く葛藤しているのが伝わってくる。


「…魅力的だけどそうすると2日も京介と一緒に居られないから駄目。今日を3分割する。」


「我は最後でよいのじゃー。」『アイは朝にキョースケといっぱい遊んだから短めでもいいよー。』


「ならアイ、次に私、最後にマリィの順番。」


早速アイの番という事で、飛び跳ねながら寄ってきたあとピッタリくっついてくるアイ。抱えてた物が無くなったからか前よりさらに甘えん坊になった気がする。

妹とか出来たらこんな感じなんだろうか。

昔クラスメイトがウザイだけって言ってたけど、こんな可愛い妹なら大歓迎だろ。


「アイ、どこか行きたい所あるか?」

『うーん、あ!アイ食べ歩きしたーい!昨日ギルドから帰る時に船長さんが教えてくれたんだけど屋台が並んでる所があるんだってー!』


屋台の食べ歩きか。日本ではお祭り以外では馴染みはないが、海外ではファストフード的な感じでいっぱい並んでるのをテレビや動画でよく見ていた気がする。

今後のご飯作りにも活かせるし、食べるの大好きなアイにもピッタリだろう。


「それじゃあ食べ歩きにするか。2人はその間どうするんだ?」


「次元の家で待機しておく。」

「美味しい物あったら我らにも送って欲しいのじゃ。」


そう言うと2人は異空間を開いて入っていく。

2人残った俺達は手を繋いで宿を出た。



「おお…思ってたよりずっとすごいな…。」


アイに手を引かれてたどり着いたのは商業区画の屋台街。そこら中からいい匂いがしてくる。


『おー!!キョースケ!イカ焼きだって!おいしそーだよー!』


アイが指さす方に目を向けると、デカイ串に刺さったこれまたデカイイカの頭や足。

そういや海外ってあんまりイカとかタコ食べないんじゃなかったっけ?いやイカは昨日の夕飯にも出たか。

早速イカ焼きを買ってきたアイ。すぐに俺の口元に差し出してきた。


『キョースケ!はい、あーん。』

「いいのか?なら遠慮なく。」


早速かぶりつくと、同時にアイもかぶりつく。顔が真ん前にきて驚くと同時に少し照れてしまうが、アイは気にした様子もなく美味しそうに頬張っている。


『んー!美味しいねー!!』

「あ…ああ。美味いな。」


独特な味のタレだが確かに美味い、が驚いて味わっている余裕があまり無かった。

周囲からなんか温かい視線を向けられている様な気がするがアイは気にしてない様子だし気にしないでおこう。


『……えへへー。』



その後も色々な物を食べた。驚くべき事は焼きそばとか焼き鳥みたいな馴染みのある屋台も多数あった事だ。幾らなんでも元の世界そのまま過ぎる物が沢山ある。

やっぱり俺以外にもこの世界に、しかも勇者以外で来ている人間は結構いるのだろうか。そいつらが色々な物を伝えてると考えてた方が自然だ。

今の所シャワーとかの便利な物を除けば大半が食い物関係の気がするが…。


「うーんと、焼きそばとー、たい焼きとー、あ!リンガ飴!これも美味しかったから入れちゃえー!」


俺が考えてる間にアイは美味しかった物を再度購入して異空間の中に放り込んでいる。

途中、中からマリィの声で「こんなに食えんのじゃー!!」って聞こえてきてたがアイは『残ったら後でアイが食べるー!!』と言って構わず放り込んでた。


「そういやアイ。聞いてもいいか?」

『なになにー?』


実は朝の話で気になってた事がある。

俺の腕と記憶を消化した、と言っていた事だ。アイは物を魔力に変換できるのだろうか。


「アイって食べた物を消化して魔力とかに変えれるのかなって。それなら魔力が回復するの待たなくていいし便利だよな。」


『うん、魔力にも変えられるよー。ほとんどアイがおっきくなるための栄養にしちゃうんだけど。

あ、でもキョースケのは違うのに変えたんだー。』


「違うの…?魔力に変えて光の回復魔法で治したんじゃないのか?」


いや待て、良くよく考えたらそれだけではアイの眷属にはならないな。


『うん、アイね、モノ子みたいに再生能力持ってるからそれをキョースケにも少しだけ分けて、その後魔導で治したんだよー。

でもそのせいでキョースケがアイの眷属になっちゃったみたいだけどー、えへへ。』


まどう…?魔導?初めて聞くワードだ。

魔法の上位みたいなものか?

眷属になったのは本当に感謝してる。勇者なんてやってられるかってんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ