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敗北した元勇者の放蕩の旅  作者: 頂 有栖
第2章 マリーシア編

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サイドストーリー EX2 はじめてのお買い物

オーシャに着きしばらくした後、俺とマリィは買い物に出ていた。アイとモノ子は次元の部屋でお昼寝中だ。


「あ、そうだ。調味料切れそうなんだった。」


「なに…ほんとじゃの。塩がだいぶ少なくなっておるの。」


マリィの次元保管庫に二人で顔を突っ込んであれが無いだのこれが足りないだの言い合う。

1度しっかり調味料が使われた文化的料理を食べてしまうと、どうしても素材の味だけでは物足りなくなってしまう。調味料を切らす訳には行かない。


「そういや、買い物と言えば思い出すな。」


「なにをじゃ?」


「この世界に初めて来た頃。ほら言っただろ、俺ちょっと前まで【はい】と【いいえ】しか言えなかったって。」


「あー、言っておったの。わしからしても考えたくもないのじゃ。人間は『こみゅにけいしょん』の生き物じゃからな。さぞ苦労したじゃろう。」


マリィの言う通り人間は基本的に会話が出来て当たり前で、出来ない相手とは信頼関係を築くの容易ではない。ましてやファンタジー世界だしな。

売り買いもその最たる例の1つだろう。現代日本では多少は何とかなったりするが、

はいといいえしか言わない奴が身振り手振りだけでは普通に不審者だ。むしろはいといいえが言える分更に不審だろう。


─────────────────────

─────────────────────


城を出て城下町に着く。

先程旅の支度として剣と一緒に麻袋にはいった物資を貰ったが、中身を確認すると数枚の草と干し肉や砥石っぽい物、後はお金…?などだった。

草は恐らく薬草…?アイテム欄みたいなのも無いからこれが何かとか分からないのも不便極まりないな。

道行く人に聞こうにもな…。


「冒険者のみなさーん!!今日は下級ポーションが入ってるよー!!旅の備えに買ってってー!!」


少し歩いていると出店街のような場所についた。

呼び込みをしている店をさっそく覗いてみると、先程麻袋に入っていたのと同じ様な草の横に【薬草】と書かれている。薬草で合ってたみたいだ。

麻袋の中にあった小さい袋にお金のような物も入っていたので、追加で数枚買っておこう。


「お、冒険者さんいらっしゃい。なんにしますか?」


さっそく薬草をくださいと言おうとするが、声が出ない。

しまった…【勇者の制約】のせいでしゃべれないからこれを下さいともいえないじゃないか。

なんとかゼスチャーで薬草を買おうとするが、焦っていたせいか不審な動きをしているせいか冷たい目を向けられる。


「…なんだいあんた。冷やかしなら帰ってくれ。」


しっしっ、と手で払われてしまう。


【はい】


仕方なくそう返事して店から離れる事しか出来なかった。この調子だとアイテムは拾って集めるしかないのか…。トホホ…。


─────────────────────


仕方なく宿屋に向かう。

飯を食って寝れば少しは気分も晴れるだろう。


「いらっしゃいませ、宿泊ですか?それともお食事です?」


まずい、飯を食える宿にしたのが裏目に出た。2択にされるとちゃんと答えられないじゃないか!

とりあえず返事を…。


【はい】


「……?お客さん。宿泊かお食事かどちらなのか聞いているのですが…。」


あ、だめだ。不審者を見る目だ。

俺は仕方なく走って宿を出る。会話出来ないのってここまで不便なのかよ…。

仕方なく俺は路地裏の木箱の中に隠れて干し肉を齧りながら夜を明かした。


─────────────────

─────────────────


「んで結局その後も何度も同じ様なことがあってな…。正直今でもちょっとビクつきながら話すときがあるんだよな…。

ひどい時は人間に化けてる魔物扱いされたり、検問すら通れない事もあったからな。しばらくしたら街にもよりつかなくなったよ。」


ぎゅっ、とマリィに抱きしめられる。

上目遣いで目に少し涙も溜めている。心配させちまったか。


「…主よ、今はわしらもおる。たとえどんな事があってもわしらが傍におるからの。」


「…ありがとうマリィ。わがまま言っていいなら竜の姿で抱きしめて欲しいな…。」


バシッと腹を叩かれる。痛い。


「全く…!!もう…しかたないの。」


次元魔法で異空間の中に引っ張りこまれる。

すぐに竜の姿に変身したマリィが半ばのしかかるように抱きしめてくれる。


『これで良いかの?全く……主は変な奴じゃの。普通は可愛らしいおなごの姿で抱きつかれた方がいいじゃろ。』


「最っ高…。…マリィ、本当にありがとう。お陰で元気が出たよ。あと今の姿も女の子の姿もどっちも可愛いよ。」


「…ふん、後で2人に怒られてもわしは知らんからの。」


その後もしばらく竜の姿のマリィを堪能させてもらった。


後日談


「そうじゃ、筆談なら出来たのではないかの。紙や地面に書いてはなすのじゃ。我ながらナイスアイデアじゃろ!!」


「さすがマリィは賢いな。俺は気づくまで大分かったぞ。

結果的に言うと出来なかった。はいといいえ以外の文字書けないんだよ。バカみたいだろ。」


もう色々限界でたまたま街に入れて宿も泊まれそうって事があったのに、宿で名前すら書けなくて泊まれなかったんだ。

本当にあの時はぶちギレて限界だったな。


「いくらなんでも酷すぎるじゃろ…。よく頑張ったの。」


酷すぎるよな。次もし制約かけられたら流石にもう色々諦めるぞ。

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